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メイドBook  作者: やまは
たった四日間の出来事
16/131

16冊目 旅の続きを

 フィアは瞬く間に部屋から出ていった。

 いつも完璧な格好でショウに尽くしてくれるフィアが今日はそうではなかった。

「あんなフィア初めて見たよ」

「まだまだ甘いやつじゃ」

「入ってもよろしいでしょうか?」

 すぐさま入室許可を求めてくる声が外から聞こえてきた。

 ショウもベッドから出て許しを与えた。

「も、申し訳ありませんでしたご主人様。お見苦しい姿を晒しましたことをお許しください」

 それはいつものフィアに戻っていた。髪は整えられ、メイド服も新たな色の物へと変貌していた。

 白と黄色のメイド服は、背負うリーエと同じもののようにショウには見えた。

「リーエは起きないのか?」

 もう朝だというのに起きないリーエ。

「リーエ様は特殊なお方なのです」

 フィアが説明するには、リーエは日が昇っている間は眠りに落ちて、夜に日が沈んだらようやく起きる超夜型タイプとのこと。魔力量もそれに伴って変動するらしい。

「お、おいちょっと待てっ!?そんなリーエを背負ってるってことはつまり……」

 ショウは確かめるようにフィアに問いただした。

 眠りこけるリーエ。それを背負うフィア。そろそろ行くと言っていたノロ。

「連れて行きます。ダメでしょうか?」

 フィアの提案にショウは断る理由がなかった。新しいフィアの景色を見せてくれるリーエの活躍に期待したいところでもあった。

 リーエがショウたちの仲間に加わった。


 今日も青い空から照りつける光はいつもと変わらずショウたちに降り注いできていた。

 ミネアの入り口までケレス達が見送りに来てくれた。

「もう行くのか……もっとゆっくりしていけばいいのに」

 ケレスは悲しそうな表情でショウを見てきた。

「魔牛が出たっていうし、そのまま真っ直ぐ次に向かおうってノロがな」

 騒がしい音の正体はショウ達のほかにケレスの館に泊まっていた貴族たちのものだった。

 魔牛が出たとの知らせが届いたのは今朝。もうミネアにはほとんど人が残っていない。残っているのはケレス達と、興味のない町の住人くらいか。

「ケレスは行かないのか?」

「俺はいい。慣れって怖いもんだよ、小さい時は毎年見に行ってたんだがな……」

「そういうもん?」

 ショウには分からなかった。同じところにずっといたショウと、今も同じところにいるケレス。似た者同士だとショウは思った。でも違かった。自分は恵まれていたんだとその時ショウは悟った。

「俺はショウがうらやましいよ……」

「一緒に行くか?」

 ショウは誘ったが、ケレスに断られた。この町を守ることがケレスに託された使命であり運命なのだから。

「まあ、でもひとつ。楽しみができたよ――お前とまた会えるって楽しみがな」

「や、やめろよ……辛くなるだろっ」

 ショウの中に込み上げてくるものがあった。ケレスと会って二日。普通の人から見たらたったの二日の出来事なのだろう。だがショウにとってこの日、この時が初めての別れの経験だった。拭っても拭っても溢れ出てくるものは抑えが効かずに流れ出してくる。

 ケレスは戸惑っていたが、そんな泣き散らかすショウの顔を上げた。

「泣くなっ!!男だろっ!この先お前がしっかりしなくてどうする!!」

 ケレスの圧にショウはただ泣くのを堪えてケレスの話を聞くことにした。

「人生の先輩としてアドバイスを一つしてやる。この先こんな別れなんていくらでもある。もっと辛い別れだってあるかもしれない。そんな時こそ前を、前だけを見ろ!別れはきっとお前を強くするっ!!

 こ、こんなこと言うのもなんだが、お前は誰に対しても本気で感情を出せるやつだ。怒って、泣いて、笑って、悲しんで。そんなんお前だから俺は惹かれた。きっとノロもそうなんだろ」

 ケレスの熱い言葉はショウにしっかりと伝わった。

「あ、ありがとーケレス。お、おれ……と、またあってくれる?」

 涙を拭い捨てて、鼻声になりながらも今の気持ちを正直にぶつけた。

「あぁ!!これは貸しだ。1つには1つ。返しに来い」

「待ってるよショウくん」

「面白いからやつは好きだぞ、ショウ」

「アツはいつまででもショウ様をお慕いしております」

「あ、ありがとう。シン、トウ、アツ」

「いけっ!ノロ達が待ってるぞ」

 ケレスに押し出される形でショウは走り出した。手は振るものの、もう振り返ろうとはしなかった。

 息が上がるのをきっかけに不意に振り返ると、町はいつの間にか緑の中に消えていた。そこにフィア達がすぐに駆け寄ってきてくれた。

「ご主人様?大丈夫ですか?」

「はぁはぁ……ああ!ありがとなフィア」

「?なんのことでしょうか?」

 フィアがいつも新鮮な出来事を運んできたからショウは18年間退屈しなかった。

 フィアがいるから今の自分がある。ショウはそう思った。

「……私もそうでございますよ」

「また読みやがったな」

 いつもの日常はすぐに戻ってきた。

「ワシを忘れてはおらんか?」

「忘れてないよ、ほらっこい!」

 ノロを定位置に来させて、これで準備完了ではなかった。

「リーエもお忘れなく」

「起きてていいのか?」

「いえ、まずいので背負ってくれますか?お姉さまに断られてしまったので」

 そう言い残してバタリと草原に倒れたリーエを背負い、これで準備完了。

 ケレス達との思い出を胸に新たな一歩をショウは前を向いてしっかり緑の大地に刻み込んだ。

 目指すは魔牛。その場所へと

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