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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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去年と全く違う事


また一つ、変わっていってしまう。



風邪は今も僕の鼻に滞在し喉を攻撃し続けている。誕生日に特別感はもうなくなってしまったけれど、それでもタイミングという物に嫌われているなと実感する。僕が歳をまた重ねるまでの一年は、酷い事の繰り返しで、読んでくれていた人達にも酷く暗い気持ちをさせたのではないかと案じている。まあ、元々そこまで明るくないし現実的だから何とも言えないんだけどね。


そんなこんなで、また歳をとった。三秒前を書き始めて一年が簡単に過ぎてしまった。一年で何があったかと思い出すんだけど、今年は特に酷いし人に語れば不幸自慢になる様な話ばっかりだから止めとこうと思う。まあでも、人間は嫌いだよ。僕にとってこれから364日が、去年よりもずっと幸せになる事を願うばかりだ。


一年。また一年と歳をとって、初めてなろうに投稿したのは三年前の三月だった。それから、沢山の知識をつけ、様々な経験をした。自分でも何となく分かってしまっているのは、去年より一昨年より、ずっと現実に染まってしまった事。新しいものを思いつけなくなってきた事。思いつくのに、消化するまで時間が回らない事。言い訳になってしまうみたいだけど、あれだけ書きたい事が沢山あったのに、伝えたい事が沢山あったのにどんどん書けなくなってしまっている。間隔が空いてしまうくらい忙しくなって、先に先にと回していた自分のせいだとも思っている。けれど、365を好きでいてくれた人達が喜んでくれるような何かを、僕はもう書けないのではないかとも思ってしまっている。こんなになるんだったら、大人にはなりたくなかったし、一生空ばかり見ていたかった。それでも進まなくちゃいけないから進むけど、僕が数ヶ月前から感じていた空虚はこれかもしれない。


一回。離れてみるのも良いかなって思った。書く事から。想像する事から。自分の中で、自分の為だけに作った物語を自分で消化するだけにしようかなって思っていた。引退ではないけれど。


でも僕は自分の事をよく分かっているから、一度離れたら多分二度と戻ってこないと思う。戻ってきたとしても、まるっきり別のものになっているだろう。それでも良いかなと思った。僕は365が大好きだけど、365に囚われすぎた。これを越さなければいけない。初めて形を成したものだから余計にそう思ってしまった。多くの人に愛されたから。僕は本当に楽しんで書いていただろうか。間違いなく、365を更新していた時とは違う。僕は随分毒されてしまっていた。


僕がいなくなってもショックを受け声を上げる人はいないだろうし、別にそれでも構わなかったんだけど、僕自身がそれを許したくなかった。時代の波に消える人になりたくなかった。意地でも続けていたかった。例え目が出なくとも。それでも良いからかじりついていたかった。


僕が365を書き始めた頃。それは君への想いだけで書き続けていた。後悔と燻った気持ちだけで、ただただ言葉を羅列していた。勢いだけで色に溺れた。でも今の僕はどうだろう。世界が酷く灰色に見えるのに、それを綺麗な色に戻す事は出来るんだろうか。僕は報われない人生を長々と続けている程気が長くないんだよなあ。


三秒後を今でも信じている。信じるだけはタダだから。でも強制はしない。こんな気持ちの人が押し付けるのは酷く失礼な話だ。


僕は書く事を続けたい。辛い思いも苦しい思いも。もう何も思いつかない虚無に襲われてしまったとしても。これだけが僕の個性だと意固地になっている。長く続けると欲が出るから駄目だなあ。純粋に書く事を楽しんでいた僕はどこに行ってしまったんだろう。あの頃は何も考えずに済んだんだ。先なんて考えず、ただ想いが一番に動けた。いつの間にか僕の足には大きな枷が付いていて、少しずつ歩みを遅くさせている。どうか、止まる前に軽くしたいものだ。


思えば僕は今に至るまで、色々な夢を諦めてきた。傷つき努力する事を諦め、それでも良いだろうって納得するようにしてきた。本当は今でも叶えたいくせに、もう遅すぎたのを充分に理解しているから、それも僕の枷になっていく。


そんな中で、僕が唯一諦めなくて済んだものが書く事だった。描く事も好きだったんだ。でも沢山の批判と才能のないという言葉にいつの間にか描けなくなってしまっていた。好きだったものが、自分が手を入れる度に嫌いになる酷く滑稽な話だ。僕はキャンバスを汚してしまう。それはきっと綺麗なものになれない。人の心情を表すのが絵なら、僕のは酷く薄汚くなってしまった。


書く事だけが、今の僕に残された全てだ。手放したくはないから、必死にもがいてみようと思う。たとえ誰の目に触れなかったとしても、ここが僕のやりたかった最後の場所だ。ここから離れたら、もう無いのだ。だから、もう少しだけ、意固地にならせてほしい。



いつか、僕が突然消えたら。


きっとどこかで空でも見ていると思って欲しい。

地に植わった花を見ていると思って欲しい。

色が無くなったから、色を付けに旅に出たのだとでも思って欲しい。

この世界からいなくなる事はないから。僕は君の手を取ると約束したから。そんな簡単にいなくなりはしない。


でも、いつか。もしかしたらずっと先の話かもしれない。きっと突然消えるだろう。僕の心が耐えられなくなってしまって、灰色になってしまった世界を色付けに行くために。長い長い旅路に出て、戻って来た時にはこの名前ではないかもしれない。


今の僕はまだそんな事をしないけれど、幸せになるには時間がいる。君を幸せにするためには、僕が幸せにならなくてはいけない。僕の幸せを分けなければいけないのに、僕に幸せがなかったら、分け与えるものも少なくなってしまうはずだ。


だから。今年は。ちょっと頑張ってみようと思う。

ポイントは如何に僕が現実を生きながら、時間を縫って逃避行出来るかだ。

だから君達は気にせず今日も生きていてくれ。また新しいものを届けに行くから。

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