夏がどこかに消えた
噎せ返るような夏がどこかに行った
夏ってあんまり好きじゃない。突然の批判から始まるけど、例年軒並みに熱くなっているだろう？正直人間の稼働できる気温を越してるし、そんな日に外に出て仕事しろとか馬鹿げていると思ってしまう。まあ、生きて行くために必要なんだけどいい気ではないよね。
空気はよどんで熱気は汚くて、猛暑の空気は排気ガスと同じようなもんだ。僕が好きなのは初夏と晩夏の夜だけだからその間は無視する。毎年死者が出ているんだからちょっと考えた方が良いよね。僕の高校時代は夏に救急車が良く来てた。屋外運動部がどんどん死んでいくんだよ、いくら気をつけていてもどうしようもないよね。
そんな夏がいつの間にか終わっていた。僕の中の夏に大きな思い出はない。暑いのが苦手だから、小学生から続く夏休みはほとんど外に出ない。年齢が上がっていく毎に酷くなって、一か月外に出なくても平気になる。元々外に出なきゃもったいないとか思わない性質の人間だから夏場は加速するニートになる。やる事はやってるけどね。
九月に入ったから秋だけど、僕は九月はまだ夏だと思っている。晩夏。夜が涼しくて、心地よくて、鈴虫がちらほら泣き始めた頃。今だったら風鈴の音も風流だと思うし、コンビニ帰りに誰かと食べるアイスも溶けなくて済む。
夏は唯一、僕の中で何もない季節だから思い入れがない。祭りも花火大会も旅行も海水浴も今までで行ってきたけれど、懐かしむような浸りたくなるような思い出はどこにもないのだ。だから、夏をモチーフにした曲は好きだけど共感は出来ないのかもしれない。
夏休み明けの学校はウキウキする子供だったかと言われれば、僕は否と答えるだろう。ああでも、始まってしまえば楽しかったかもしれない。子供の頃って一人で出来る事が少ないから、やっぱり友人と一緒にいた方が楽しい思い出があった。今はもう、一人でいくらでも暇つぶしが出来てしまうから、無理に誰かと一緒にいなくて済む。こうやって僕の人間不信が加速していくのだけど、そこら辺は無視しよう。
夏に産まれた人達は毎回文句を言っていた気がする。学校に行っていれば友人に祝われたのにとか、もっと楽しかったのにとか。僕は秋生まれだけど、学校に行ってても盛大に祝われた事はないしその日が休日だったから一緒に出掛けるとかも特にないから、あんまり変わらないよ。本当にその人の事が大事だったら、きっと当日に祝ってくれるだろうから。まあ、僕は、そんな当日にとか、なかったけどね。ああ。でも一回だけあったっけ。曖昧だという事はさして楽しくもなく付き合いだったんだろうなあと思う。
話を戻そう。
君の夏はどうだった？思い出が出来た？色々あった？素敵な夏だった？
僕が思うに、夏の思い出ってイベント事がほとんどだから、日常の思い出があまりないんだと思う。結局、憶えているのは大きなイベントよりも日常のくだらない会話だったりするから僕の中の夏はいつ特別になるんだろうか。なんて、誰も分からない事を考えてしまう。
夏は非日常が常だったから、夏が終わると悲しくなるのかもしれないね。けれど、君はこの先何度でも夏を越すんだから、悲しくならなくても大丈夫だ。明日どこかで上がる花火も来年の君には素敵な思い出になるかもしれない。
