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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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未完成だから良いんです


終わるから美しいのに、僕らはもしもを繰り返している。








長く続けてきた作品が終わった瞬間、読者はどう思うだろうか。

終わってしまった。楽しみが無くなった。お疲れ様。まだ読んでいたかったな。

長く続けてきた作品が終わった瞬間、作者はどう思うだろうか。

終わった。やっと終わった。良かった。安心した。皆ありがとう。


私はそう思えたことがない。

最後の一文字を書いた時、終わってしまったと思うけれど、それ以上に満足できない気持ちがある。違う。違う。まだ違う。こんなものじゃない。もっと出来たはずだ。読んでくれている人が納得しても、私自身が出来ない。まだ、まだやれた。まだ上に行けた。もっと改善できた。手を抜いた。これが最高の終わりな訳がない。


そんな事言ったって、終わってしまったものが再び動き出す事はない。終わりは終わりで動かないから美しいのを、私はよく知っている。終わったから始まる事がある事も。始まったから何かが終わってしまう事も。


結論。私はきっと一生自分自身に満足出来ないのだ。

この先何度だって新しい作品を作り出すだろう。新しいものに手を出すだろう。何かを形にするだろう。それでも満足する事は出来ないのだ。

ストイックなんかじゃない。向上心が強いわけじゃない。ただ、私が私自身を否定し続けているだけ。

自分が自分を否定し続ける事で、いつかは認めてあげたいと思うようになる。承認欲求が高まる。自分が認めるような作品を作り出したいと思う。そして、新たな作品が生まれる。

私は私自身の首を絞め、極限まで追いつめて新しいものを作るから。マゾヒストなわけでもない。ただの自己満足に、周りが求めていないクオリティを自分が一番求め続けている。ここで終わってはいけない。止まってはいけない。まだ、まだ、まだ。


勘違いはしないでほしいのだけれど、私自身、普段はとても怠惰な人間だ。部活をサボった事だって何度もあるし、勉強に対しての向上心は一ミリもない。宿題を出さなかった時代だってあるし、大学では休める日を計算して計画的に休み単位を取る。遅刻も多々。オフの日は十二時過ぎまで寝続ける。面倒な事は出来る限りやらないし、面倒な人間も出来る限り近づかない。

気付いたら背中に木の破片や小石が刺さっていた事もある。ちなみに、木の破片に関しては一昨日の出来事。

歩いていれば必ず一回足を捻るし、横断歩道やバス、電車の駆け込みはほとんどしない。「あ、これ間に合わない奴だわ。走るの面倒だから良いわ」、とまぁものの見事に適当人間である。


そんな人間が、一体どうしてこうなるのか。それはきっと単純で、私自身の性格に問題があるのだと思う。

ついこの前、性格診断で「負けず嫌い、頑固、完璧主義、独創的」と言われた。まさにその通り。頭が上がりません。

人に完璧さを求めるのは間違っていると思う。その人はその人の生き方があって、自分とは別の人間なのだから。しかし、自分の事になると話は別だ。今まで適当人間代表だった奴は、突然完璧を求めたがる。


生物の中で人間にだけ唯一あるもの。それは知識欲だ。多分、私はその知識欲が酷いのだと思う。自分が好きな分野でだけ。

足りないと言いながらパソコンの前でL座りをして文献を読み漁ったり、本を読んで気に入った所や気になった所に付箋をつけ捲ったり。正直、気持ち悪いと思う。自分で言うのもなんだけれど。


しかし、そんな人間は普段、その気持ち悪さを一度も発揮しない。小説を書いている事だって周りにはほとんど教えないし、泥臭く紆余曲折して、叫び、嘆き、頭を掻き毟ってアイデアを絞り出す姿は自分だけが知っているままでいい。見せたくない。



そもそも完璧とは何なのだろう。数学の答えが必ず一つであるように、小説だって一つの答えがあるのだろうか。いや、無いに決まってるだろう。

多分、私は永遠に自分の作品に満足出来る事が無いだろう。これはほぼ決定事項。見直しても見直しても、絶対満足は出来るわけがない。けれど、未完成だからこそ、物語は美しく輝くのだと思う。



だから書き直さない。まとめて綺麗にする事はあっても、物語の主軸自体を変える事はないだろう。


そんな事を考えた、九月の末のお話。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ありがとうございます。あなたの不満足のおかげで、俺はこれからも先生の作品に触れられるんですね。これからも作品が創られ続けるなら、きっとまだまだ俺は満足を得られ続ける。本当にありがとうござい…
2021/08/09 14:33 サットゥー
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