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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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進化による犠牲


追いつけなくなる







先日、四年ほど使っていた携帯を変えたのだけれど。さすが電子機器、四年も経っていれば色々なことが変わっていた。

画質だったり形式だったり容量だったり回線だったり、色々なことが挙げられるのだけれど、ああ、こうやって置いて行かれるのだと思った。


時代に置いて行かれるものと置いて行かれないものがある。電子機器なんて正に前者で、どんどん新しいものが現れるから旧式は時代に置いて行かれる。今、自分も彼らを置いてけぼりにした。より生きやすくするために進化するのは良いことだが、その中で置いて行かれる存在は気にも留めないんだねと思ってしまう。事実、自分もそうだったくせにね。相手が生命じゃない限り簡単に置いていくのだ。


いつか、そうやって自分も置いて行かれるのではないかと思ってしまう。それに恐怖している。きっと置いて行かれるのはもっと先の話だと思うけど。僕が今から死なない限りは、特に健康上に問題がなければ最近の人間は長生きするって言うしね。地球が滅ぼされない限りは程々に生きられるでしょう。


少し考えたのは、皆が皆時代に置いて行かれたのではないかという考えだ。今、名を残したような人々は時代と共に生きるだろう。歴史上の人物だったり、有名画家だったり、芸術家とか発明家とか、世界を変えるほどの偉業を達成した人なら。けれど、皆が皆、そんな人間ではないだろう。砂塵の中からダイヤモンドを見つけるようなものだ。ほとんどの人が電子機器みたいに時代に置いて行かれる。


生きていた形跡はいつか消え去って、誰かの記憶にも生きなくなって、その時初めて人は死ぬのではないだろうか。誰かの心の中に、君の心の中に僕が生きていると言えば詩的だけど、確かにその通りなのかもしれない。


僕等はいつか置いて行かれる。名を残す何かにならない限り。世界を変える偉業を成し遂げない限り。けれど、そんな風に置いて行かれた人間がいたから今があるのも事実だ。名を残す人は素晴らしいことを成し遂げただろう。けれど、一人の力では無かったはずだ。人は一人で出来る事に限界がある。


名もない僕らが進化して作り上げた土台の上で、脚光を浴びたキャストがいただけなんだよ。僕らはキャストにはなれなかったけど、その基盤にはなれる。どんな舞台にも、劇場は必要だろう。


だから気に病まないで行こう。自分と誰かは違うとか、君と僕は違うとか、嫌になる事だってあるよ。劣等感を抱くのが人間だから。きっといつか置いて行かれるけれど、君がいなかったことにはならないし、君は忘れ去られても確かにそこにいたんだ。

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