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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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ありがとうのその先が欲しい

ありがとうを読んでいる、読んでいた人達へ


ありがとうのその先が欲しい






子供の頃から見ていた作品が、流れる時代に取り残されていく。完結するもの、途中で終わってしまうもの、全てが全て、過去の産物となる。それが少し寂しいけれど、仕方がない事だとも思っている。


好きだったキャラクターの年齢を越していく。身長も伸びていく。昔お兄さんだと思っていた人達は、いつの間にか肩を並べている。それが少し寂しいけれど、仕方がない事だとも思っている。


だって人は歳をとってしまう。公園で駆けていた少年少女はもういない。全力疾走を最後にしたのはいつだ。次にするのはいつだ。予定なんてありはしない。

生き続ける事は出来ない。永遠に成長しない身体を手に入れる事は出来ない。大事なのは過ぎていく時間を、老いていく自分を認める事だ。過去に縋りついても、未来には何も待ってはいないのだから。


時間はいつの間にか経っている。一日一日はとても長く感じるのに、一年はあっという間に終わる。毎日が同じ事の繰り返しだから、24時間が長く感じるのかもしれない。それだけなのかもしれない。


そう、時間はいつの間にか経っていた。自分専用のパソコンを手に入れた、新生活を始める前の三月。興味本位で始めた小説。始まりと終わりだけが決まっていた、展開も何も決まっていないその日に考えてその日に書いた小説。始めた頃は、続ける気も無かった小説。


気が付けばいつの間にか、二年近くの時間が経っていた。連続される時間と定期的な更新に、正直溜息を何度も吐いた。何も浮かばない。どれが正解かも分からない。そもそも、誰が読んでくれているのかも分からない。この行為に何の意味があるのかも分からない。何もかもが分からない。

沢山手を抜いた。今日は良いだろと向き合う事を止めて逃げ出した。止める人間なんて誰もいないから。待つ人間も、誰もいないから。


そう、思っていた。


この行為に意味なんて無いのだ。私は小説を書く事を、ただの自己満足だと思っている。

正解なんてどこにもないのだ。だって自分が始めた事だから。

ただの面倒くさがり屋が始めた自己満足は、気が付けば沢山の人に読まれていた。

ただの自己満足だった行為は、待っている人の為にする行為に変わっていった。

僕等は欲望の塊だから、より多くを求めたがる。誰かと比べては優越を繰り返していた。


沢山の作品が世の中に溢れている。その中で自分の作品は、最底辺だろう。沢山の人と言った言葉は、誰かから見たらその程度だと笑われるだろう。

それでも、私にとっては大きな理由だった。


誰かが、この作品を見ている。好きだと言ってくれる。頑張れと声をかけてくれる。楽しみに待ってくれている。理由なんて、それだけで充分じゃないか。


この二年弱は奇跡の連続で。辛い事も沢山あったけれど、残してくれた言葉の数々が、傷つく度に私を救ってきた。


ありがとうのその先って何だろう。感謝の最上級って何だろう。私は読んでくれた人たちがくれた温かさを、まだ何一つ返せていない。

月並みな言葉だ。今まで読んでくれてありがとう。感謝している。だなんて。実際に自分がその状況に立った時、先人達と同じ言葉しか返す事が出来ないのだ。


読んでくれた人達に一人一人会ってありがとうと言いたい。こんな自己満足を愛してくれてありがとう。楽しみにしていてくれてありがとう。感想を残してくれてありがとう。何度も読み返してくれてありがとう。ありがとう。ありがとう。


きっと何度だって思い出す。時間がそれを劣化してしまっても、この感動と胸の高鳴りは必ず憶えている。


365日間の愛の物語を、366日間の嘘の物語を愛してくれてありがとう。貴方のおかげで、ここまで来る事が出来ました。


新しい作品でも、二人が出てくる事はもうないけれど。

それが少し寂しいけれど。私自身、お別れする事が名残惜しいけれど。


始まりがあるから終わりがある。終わりがあったから新たな始まりがある。それに気付かせてくれた人達へ。

顔も姿も知らない人達へ。



最大級の感謝の言葉を。


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