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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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君にしかない武器


背が高いのが嫌いだった








子供の頃から、周りの子よりも頭一つ分飛び抜けていた背が嫌いだった。

高いだけで何も変わらない。威圧感が増す。何度も何度もからかわれてきた。好きで高くなったわけでは無いのに、善と悪の分からない子供からすれば、身長は一番からかいの対象になった。


そこで嫌だの何だの泣いていればまだ可愛げがあったのだけれど、自分はからかってきた奴らを全員制裁していた。口でも手でも勝って、滅茶苦茶にした。本当は嫌だって泣きたかったけれど、変えられない事は自分が痛いくらいに分かっていたし、口に出すだけ無駄だと思っていたからだ。


本当は、もっと小さな子供になりたかった。




と、五年前くらいの私なら思っていただろう。恋人と隣に並んでも自分の方が大きかったり、越しそうだったりで嫌だったもんな。あの時は。


今の私はもう諦めている。今更変わる事はないし、出来る事なら恋人や結婚相手は自分より高い人がいいけれど、そうじゃなくても良いかなと思い始めてきた。向こうが気にしなければ。だって、身長なんてただの要素の一つだったと気が付いたから。


身長の高い人間が、必ずしも皆王子様みたいな人で溢れ返っているのか?この問いの回答はこうだ。


じゃあ身長の低い人間が、必ずしも皆お姫様みたいな人で溢れ返っているのか?答えはノーだ。


気にする事はそんな下らない理由じゃない。自分がそうであったように、人は皆好きで身長が高くなったわけでも低くなったわけでもないのだ。本当に好きだったら相手がいくら小さかろうが大きかろうが構わないだろう。ようやく気付けるようになったのだ。


身長が高いから、踵の高い靴を履いちゃいけないのか?良いじゃないか履いてやれ。どんな格好をしていても、君自身が変わるわけじゃないのだ。


正直、この歳になって背が高い事に沢山助けられてきた。

子供の頃、からかいの対象であった身長は、いつの間にか憧れの対象に変わっていた。


高い靴を履いて颯爽と歩いたら、まるでモデルのようだと言われ。満員電車では酸素を獲得できる。嫌悪の眼差しはいつの間にか羨望に変わっていた。


どうしてそうなったのか。多分、自分の背に、容姿に、自身が無かったあの頃とさよならをしたから。


今更変えられないのなら。それも自分の武器だ。猫背になって下を向くのではなく、堂々と前を向いて歩くようになった。顔が良いから悪いからとかじゃない。人は自信を持った人を見る時、その人がやけに輝いて見えるようになるからだ。


そこに辿り着くまでには苦労もしたし、今だってスタイルや容姿に関する事は人並みに努力している。


今、コンプレックスを抱いて下を向く事しか出来ない君へ。


それも君の武器だ。君にしかない武器なんだ。嘆く前に努力をしろ。自分をいかに綺麗に見せるか考えて実行しろ。努力をしている人を妬むのは最低の行為だ。

でもね、僕でも出来たんだ。君にも簡単に出来る。ただ、現状を受け入れて前を向くだけだ。

沢山の季節を乗り越えて、いつかようやくそれを武器に出来た時。街中で人とすれ違って羨望の眼差しを向けられた時。


君は世界で一番輝く人になるだろう。

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