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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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実は共感覚


僕の世界と現実世界









この世に生を受けて早数十年。また、自分の中の常識が覆ったお話があった。


君は、人の名前や姿、音や言葉に情景や色を思い浮かべた事はあるか?

僕は普段から常にそうなんだけど、色々な言葉や英単語、人の姿や名前に色を思い浮かべる。勝手に色が溢れ出て動き始める。音に色はつくもんだと思っていたし、不思議な情景が浮かぶのも、全部全部当たり前だと思っていた。が、しかし、それは違うみたいだ。


少しだけ過去に戻るんだけど、僕の作品には色の名前が大量に入っていると言われた。それは確かに意図してやっていた部分もあるんだけど、なぜ色を付けたのかって言うのは、脳内で勝手に色がついていたから、それを誰かに伝えたくて思い浮かべる色を必死に言葉にして探して書いたんだ。他人の作品も自分の作品も、皆が皆色がついていると思っている。


僕の作品が色鮮やかだと言ってくれる人、とても嬉しいんだけど、多分そこから来ているんだなと思う。


またまた過去に戻るんだけど、小学校二年生の時、担任の先生が家庭訪問で来た時の話を、母は未だに憶えているらしい。僕は全然憶えてもいないんだけど、当時の担任はこう言ったらしい。


『優衣羽さんには優衣羽さんの世界観がある』


そこから母はこの僕の世界を、優衣羽ワンダーランドと言い出した。母は僕のように色が見える事も無いけれど、僕の中に他の人とは違う世界がある事には気付いていたらしい。


しかし、僕は今の今まで気付かなかったんだ。この世界は色で溢れていると思っていたし、音は色を弾ませながら情景を形作るし、言葉は花吹雪のように色付いて宙に消えるようなものだと思っていた。聞いている音楽と外のサイレンの音階がそっくりで、何度もイヤホンを外して周りを見渡した。皆が皆、その世界を見ていて、分からない人がいるわけがないと思っていた。これが世界の理だと思っていた。


花の匂いでも雨の匂いでもない、空気の匂いだって四季折々あるし、涙だって色があるし、君の声も色がついている。君の笑い声も色がついている。君の表情も、時折聞こえる優しい声も、全部全部、色付いて見える。


この現象を共感覚と言うらしい。僕は今までずっと、ただの常人だと思っていたから、僕が見ていた世界と君が見ていた世界が違うのが衝撃的だった。そりゃあ伝わらないわけだ。あの人はあんな色で、あの花に似ているから、なんて分かるわけない。


この現象の名前を知らないまま、大人になって良かったと思うんだ。だって気付いて口に出してしまっていたなら、僕の世界の色は褪せていたのかもしれない。



まあ、これを持っていたからってどうって事無いんだけど。僕の作品が色で溢れていると言ってくれた人達に、ようやくそれらしい答えを返す事が出来るようになったって言うのは、大きな利点かな。

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