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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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何かが足りない

足りないものに気が付けないのも人生かもしれない


何かが足りないけれど、その何かは分からないままだ。




ただ、茫然と。何かが足りないと思う時がある。

好きな音楽を聴いている時、テレビを見ている時、街中を一人で歩いている時。

やらなくてはいけない事に溢れていて、時間なんてないくせに、何かが足りないと思う時がある。


けれど、その何かは分からないままだ。


幸せが欲しいのか?恋人が欲しいのか?話し相手が欲しいのか?きっとどれも正解で不正解。

多分、何かに夢中になりたいだけ。

何でもある世界だからこそ、物で溢れているからこそ、僕らは本当にやりたい事を見つける事が出来ない。


これがやりたいとか、この人を応援し続けたいとか、朝も夜もずっと誰かを想い続けているとか、そんな感情が消えてしまった時、何かが足りないと思う時がある。けれどそれが何かは分からなくて、ただ、虚空を見つめ続ける事しか出来なかった。


これは多分、虚しさという感情だと思う。


沢山の人が行き交う世界で、何かに熱中して生きている人は少ない人種のほうだと思う。

けれど多いように見えるのは、彼らが皆、一人一人輝いているから。


自分にはない熱中する何かを見つけた人達は輝いている。

生活が苦しくても、芽が出なくとも、輝いている。


それを人は馬鹿にするだろう。恥ずかしい。いい歳して。そう言う。

けれどそれは嫉妬なのだ。自分にはない何かを見つけた人に対する嫉妬。羨望。果ては憧れ。


他人の意見は分からないが、私は何かに熱中している人達の事を尊敬している。凄いと思う。その対象が何であれ、自分にはそこまでの熱がないから。

自分の世界を変えるほどの何かに会える事なんてないから。それに会えた人は輝いているから。

自分も何かを見つけたいと思う。そしたら、この足りない感情がどこかに行ってくれるかもしれないから。


疲れたわけじゃない。もしかしたら身体は疲れていなくて、心が疲れているのかもしれない。もしくはその反対かもしれない。

自分はまだやれる。どこかに行ける。ここで止まる様な人間じゃない。そう、心のどこかで思っているから足りないと思うんだろう。その足りない何かを、探そうともしないくせに。


足りない。何かが足りない。けれど探しには行かない。つまらない。面白い事ないかなあ。けれど、動きはしない。


僕等はないものねだりで傲慢だから、幸せも面白い事も何もかも、勝手に自分の所へやってくると思っている。そんな訳ないのに。けれど動かない自分もいる。


何かが足りないと虚無感に感じた時、私はスマートフォンを見る事を止める。音楽を聴く事を止める。何の予定もないのに外に出てみる。いつもと違う時間に馴染み深い場所を通ってみる。

そしたら意外と、虚無感はどこかに行ってしまう。心は単純だ。求めていたのは休息、愛、新鮮味。


何かが足りない。そう思ったら自分が悪いわけじゃない。けれど熱中している人を馬鹿にするのはお門違いだ。

熱中する何かに出会える人生は素敵だけれど、出会えない確率の方がずっと高いから、別に気に病む事はないと思う。ただ、虚無感を感じてしまったら、その時は誰かと話してみるといいかもしれない。普段から話している人ではなくて、初めましての人とか、遠くなってしまったあの人とか、年代の違う人とか。

きっと話終わった時、その虚しさはどこかに消えているはずだから。

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