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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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欲しがっている

それでもここまでやってきた













不幸自慢をするわけではない。事実を客観的に述べるだけだ。僕は幼い頃からあまり身体が強くない。

幼稚園の時には月に一回は風邪を引いて休んでいたし、運動を始めてから少しはましになったものの、それでもやっぱり、あまり強いとは言えないだろう。現に、また風邪をひいたし。


免疫力を高めるためにそれなりにやる事はやったけれど、これは最早元の頑丈さの問題だと思う。人間には限界がある。それに気づいていても、認めたくはないだけで。


だからこそ、強くなろうとしたのだろう。自分は劣等感の塊で、いつだって比べられて生きてきたから。言動を、振る舞いを、弱さとは程遠いものにしたかった。でも、それが今の自分の首を絞めているなんて、誰も知らないお話だ。


強いって言われ続けた。メンタルが強いだとか、身体が強いだとか、力が、言動が、その全てが。

ヘラヘラ笑っていれば、弱くは見えないから。能天気で明るい、強い子だと思わせられるから。でも、そうじゃなかった。


結局、心の中は変わらない。王子は来ないし、姫もいない。僕はただの人間だ。誰かに同情される事が嫌で、必死に殻を作り上げた、臆病でちっぽけな人間だ。


殻を作り上げたはずなのに、完璧を見せたはずなのに、僕はまだ、どこかで期待している。

いつか、この本心を見破ってくれる人がいないかなんて、そんな事。


なんて自分勝手だろう。自ら弱さを隠して作り上げたはずなのに、僕はその弱さをたった一人の誰かに見つけて欲しいなんて。今まで誰も、見つけてはくれなかったなんて。


でも、多分人間皆こう思っている。外の顔と内の顔は違う。いつか、それに気づいて、頑張ってきたんだねと、頭を優しく撫でてくれる人に出逢いたいと。

今までの人生を肯定してくれる、そんな人に出逢いたいと。


でもそれは難しい話だ。70億もの人間がいる中で、一生涯会える人間は限られている。

もしかしたら永遠に会えないかもしれない。もしかしたら、死んだ後に生まれてくるかもしれない。

自分以外の、他の誰かの愛が欲しいと願った。それはまだ、手に入らない。


僕達は怖がりで臆病者だから、変わらないものを欲しがる。

変わらない物なんて無いのに。愛だって変わるのに。背が伸びて皺が増えるのと同じように、いつしか腐りゆくものだ。だからこそ、確固たる絆が欲しいのかもしれない。


誰かを裏切るとか、悲しませるとか、傷つけるとか。この世界は悲しい事で溢れかえっているからこそ、たった一つの揺るぎないものを手に入れた時、人は何よりも輝く、美しい存在になれるのだろう。




僕にはまだ遠い。

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