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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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飛べる

飛べないはずがない












人は必ず飛べると思っている。翼を生やす事は出来ないけれど、物理的にも精神的にも飛べると思う。


人間が想像する事はいつか必ず実現できると、その昔誰かが口にした。まさにその通りだと思う。人間は実現してきた。鉄塊が空を飛ぶなんて、誰が実現できると思っただろう。火以外の灯が出来るなんて思った事は?宇宙に行く事が出来るなんて、電気で走る車が現れたなんて、VRなんてものが出来るなんて。

不可能だって、誰かはきっと言ったはずだ。こんな事は無理だと。出来るはずもないと。それでも、人は人の想像を実現してきた。今でもそう。


この薄っぺらい画面から、文字を書く事が出来る。文をしたためる事が出来る。紙を買ってインクを付けて、万年筆で想いを綴る時代はどこかに消えてしまった。けれども、その古きを愛している自分もいる。


新しい事を始めた時、新しい歌を聞いた時、新しい可能性を見つけた時、空を飛んでいるような気になるのはなぜだろう。非現実的だからとか、そういうわけじゃない。新しい風を感じて吹かれる自分に気が付くからだ。その瞬間が、たまらなく好きだったりする。


そんなこんなで、新しい音楽にまた会えたのだけれど、才能って本当にすごいと思う。才能っていう言葉でしか片付けられない自分がいる事も。


好きなアーティストはいますか?って聞かれた時、必ず一番最初に答えるのが米津玄師という名前。

中学生の頃からずっと知っていて、彼の出すアルバムだけはお金を出して買った。お金をかけるだけの価値があると思ったから。

どこが好きかって聞かれたら、一つの楽曲ごとにお話があるからって答える。色が、イメージが見えるからって。


彼の作り出す楽曲には、一つ一つ、別の誰かのお話のような気がする。楽曲ごとに登場人物がいて、全く違う背景で、各々の人生を送っている。脳内でイメージできる。ストーリ化するアーティストも好きだけれど、新しい曲が作られる度に新しい世界を見せてくれる彼を尊敬している。それを才能だと言ってしまえばそれまでかもしれない。でも、その言葉だけで片付けてはいけないものだと思う。

沢山の葛藤があって、苦労があって、創り出されたものだと思う。


もの書きの端くれになって気が付いたけれど、作品はその人の本性を写す鏡だ。苦労も葛藤も、涙も悲しみも喜びも笑顔も、全てを写しだすものだと思っている。実際、会ってみたらイメージが違うと思う人もいる。猟奇的殺人を主題としている人が、大人しくて品のある人だったとか。切ないと呼び声が高い作品を書いていた人が、底抜けに明るくて輪の中心にいるような人だったとか。

でも本心は作品とそっくりなのだ。自分と向かい合って創り出す物が、自分に似ないわけがないのだ。


彼の作品はネガティブなのに明るく導こうとする所が好きだ。ただ、大丈夫だとか、君なら出来るとか、そんな安い心のこもっていない言葉がない。だから好かれるのだと思う。そんな人になりたい。憧れの人だ。


人生の中で、必ず一度は飛べると思っている。でも出来れば、永遠に飛び続けるような、風を運び続けるような人になりたいと思う。



余談だけど、新しいアルバムで一番好きな曲はNighthawks。花に嵐を彷彿させる春雷も好きだけれど、飛燕も好きだけれど、クロスフェードから惹かれたって事は、何か運命的な物があったのだろう。

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