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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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星の記憶


星の瞬きよりも短い一生のお話













悲しい事があると思い出す事がある。それをいつ憶えたのかは分からない。けれど、当時の自分には大きな問題だったと思う。


星が好きだ。夜空に光るその星座を、全て記憶しているなんて事じゃないけれど。が分かる範囲はオリオン座と北斗七星と夏冬の三角形ぐらいなものだ。それでも星が好きだ。見ていると何だか安心するから。

子供の頃、憶えている事がある。まだ小さな私と兄の手を引いて、冬の夜空の下父と三人でよくコンビニに行った。当時は今よりも建物が少なくて、空気も今よりずっと綺麗だったのかもしれない。だからなのか。それとも思い出が美化しているのか。星がとても綺麗だったことを憶えている。


『オリオン座!』


それは兄が言った言葉だったと思う。私は星の名前なんて分からなくて、ついでに言うとそれを発音すら出来ないレベルだった。


『オニオン座!』


『それちゃう、玉ねぎや』


父にツッコミを言われたのを憶えている。そう、リが言えなかったのだ。英雄は玉ねぎに成り下がった。

冬の夜空を見る度に、懐かしいその思い出が蘇る。


星の瞬きは人の一生にも満たないと誰かが言った。今見ている光は何千年前の光だと。だから君が見ているのは過去の残影だと。それを聞いた時、物凄くロマンティックだなと思ったんだ。


だって今からずっと昔、古代の人々も同じ光を見ていた。同じように空を見上げて四季を感じていた。同じように思い出があって、それが今も生き続けているなんて、とんだロマンじゃないか。僕等から一番近くて遠い所にある御伽噺だ。自分と同じように、あの星座を見て思い出す事があるとか、あの星の光をずっと眺めていたとか、指で空をなぞった記憶とか、何千年も続いているラブレターみたいだ。


星の瞬きは人の一生にも満たないから、今考えてる事なんてちっぽけなものだと言った人がいる。それを聞いた時、納得したと同時に仕方がないんじゃないと思った事も。

だって地球規模で小さな生命体が考える小さな悩みだ。星の瞬きと一緒にする事の方が間違っている。彼らのサイズはいくつだと思っているんだ。僕らが越せるものではないだろう。

だから僕らの悩みはちっぽけで、それでいてとても大きい。百年も生きられない生命体の、一か月の悩みって凄い大きい。だから比べる事なんて無いと思う。生きていた時間軸が違うんだから。


それでも星が爆発するまで、僕らは何度でも記憶を繋げるだろう。そう考えると、人の記憶は星の一生よりも長いのかもしれない。

今日は晴れているから、夜空は星が輝くだろう。それで思い出してほしいんだ。

散っていった、誰かの事を。

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