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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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好きな理由


好きになった理由なんて。













好きになった理由は何ですか?

笑顔が可愛かった。格好良かった。優しかった。なんて。

言おうと思えば沢山出るかもしれない。でも、それは結ばれたばかりだから言える言葉だと思う。


好きになった理由は何ですか?

笑顔が可愛かったからと言われた事がある。その時喜べなかったのは心の性根が腐っているからなのかもしれない。けれど、「あ、そうですか」、と思ったのは間違いない。他に言う事無かったんかいと思ったのも。


笑顔が素敵だった。大事だと思う。でも、それを言われた瞬間、この人は結局私の外しか見ていないのだなと思ってしまった。ええ、大事ですよ。笑顔は大事。でも私にとっての笑顔は日常茶飯事だ。常日頃から愉快に笑っている身としては、それが平常運転なのだ。その平常運転を褒められた所でさほど嬉しくないというのを、彼もまだ若かったから気が付かなかったのかもしれない。


恋はするものじゃない、落ちるものだとどこかの誰かが言っていた。まさしくその通りだと思う。この時の私は、恋を’していた’。落ちていなかったのだ。意図的に作ろうと考えて、意図的に恋をした。多分、この経験は皆一度でもした事があると思う。


新生活が始まった時、誕生日前、夏前、クリスマス前、恋人が欲しくなる現象を、誰もが体験した事のあるものだろう。そしてこういう時に作る恋人とは大抵長続きしない。だって落ちていないから。しにいってるから。相手が自分の事を好きだったら、まあいいかと思って付き合うから。だから長続きしないのだ。そこに気持ちはないから。



好きな理由は何ですか?と言われた時、理由なんて出てこない、どうして好きになったのかも分からない。だけど、何故か好きだと思った。そんな恋をした事がある。多分、これが正解だったのだと思う。好きっていう言葉と、好きっていう気持ちの、本当の正解。


こんな風に思える人と一緒にいられるのは中々ない事で、それこそ奇跡のようなものだ。理由なんて後からでも出てくる。確かに、顔は良い方だったかもしれないとか、運動は得意だったかもしれないとか。

けれど、身長はそこまで高くなかったとか、頭もさほど良くなかったし優しかったかと聞かれればそんな訳がないと答えたとか。でも、どうしてか一緒にいるのが心地よかったって。


ほとんどの確率で、そんな人と会えるのは滅多にない。その恋が叶うのも、形になるのも滅多にない。その機会を逃した。けれど、頭の中では何よりも鮮明に思い出せる。この記憶が、本当に好きだったという証なのかもしれない。


この先、同じように好きになった理由を答えられない人が現れるだろう。それが数日後か、はたまた数年後かは分からない。けれど、その時ようやく、鮮明に思い出す事が出来た記憶が塗り替えられるのかもしれない。


本当の恋は、好きになった理由すら出てこない。

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