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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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人生はテーマパーク


誰かに救われたんじゃない。君が変わっただけ。








誰かに救われたという人がいる。かく言う自分もその一人。流行りの小説、エッセイ集、街中で流れる曲、見目麗しいアーティスト、俳優が放った言葉、果ては全く知らない人が言った言葉。

誰かが遺した言葉は時に、誰かの人生を変える一言になる。

何も考えず放った言葉は、誰かを永遠に縛る呪いになる。


言葉は美しいと思う。たった一言で、呪いにも愛にも変わるから。

けれど、こうも思う。


誰かに救われたという人がいる。かく言う自分もその一人で。歴史に名を残した人の言葉が、流行りの歌が、誰かの言葉が、今の自分を作っていると思う。でも気が付いた。それはただのきっかけだった。


変わったのは自分の力だ。自分のおかげで今があるだけだ。それはただのきっかけに過ぎない。


君が、君自身がその言葉に感化されて必死に頑張ってきたおかげだ。誰かのおかげじゃない。君が頑張ったから。君の君自身のおかげなのだ。

だから自分を卑下しないであげてくれ。君が変われたのは、君が歩んできた道のおかげだ。君自身のおかげなのだ。


きっかけって大事だと思う。どのくらい重要かと言えば、テーマパークに入るために買う入場券レベルで。

入場券を買わなければ、テーマパークには入れない。ジェットコースターも観覧車も、メリーゴーランドやお化け屋敷、パレードやキャラクターにも会えない。

入場券を買わなければ、僕らは煌びやかに輝くその世界を、遠くの電車から眺めて指をくわえているだけだ。


人生ってテーマパークだと思う。僕らの中には沢山のテーマパークがあって、その中を年間パス行き来している。でも、新しい世界への挑戦権は課金制。


だってそうだろう。新しい世界へ行くには、いつだって小さな一歩と大きな不安、そしてそれを上回る大きな勇気が必要だ。入場券を買うのすら、大きな恐怖が襲い掛かる。ようやく買えて入場できても、それで終わる事がない。


ジェットコースターで激しく揺られ、世界の理不尽さを知る。

お化け屋敷で自分自身の不甲斐なさに追われ、逃げて逃げて今からも逃げ出そうとする。

メリーゴーランドで変わる事のない景色にはまり、未来へ踏み出せなくなる。

観覧車で世界を見つめ、他を見下し戻れなくなる。

パレードで自分は大きな機械の上に立つ人間にはなれないのだと実感する。

数多のキャラクターの個性にやられ、凡人に戻る。

最後の花火と夜景で、何故だか悲しみが訪れる。


でも、良い事だってあると思う。


ジェットコースターで激しく揺られ、新たな世界に飛び込む。

お化け屋敷で自身の不甲斐なさに追われても、逃げて逃げて立ち切って、最後には出口に立ち切りバイバイする。

メリーゴーランドではようやく慣れてきた世界を見つめ、やっと心の安寧を手に入れる。

観覧車では世界を見つめ、ここまで来たのだと感慨深くなるだろう。

パレードで踊る人々を見て、いつか自分もあの上にと思う。

数多のキャラクターに出会い、自分自身の成長を実感する。

最後の花火と夜景で、今まで頑張ってきたのだと嬉しくなり涙を流すだろう。



僕等は広い世界の中の、狭いテーマパークで生きている。

いつか誰かと会って、新しいテーマパークに入るだろう。

誰かにとっての自分は、個性的なキャラクターかもしれない。

誰かにとっての君は、パレードで踊る人々なのかもしれない。


僕等が持っているのは人生という名の入場券だけ。そこから新しい切符を手に入れるのは、きっかけと小さな一歩と大きな不安とそれを上回る大きな勇気だけ。

けれどその新しい切符を手に入れて、新しいテーマパークに入り謳歌出来たのは。


誰のおかげでもない。あの日の君が、全てをかけて踏み出した小さな一歩のおかげなのだ。

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