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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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100


100かいめ





書き続けた独り言はいつの間にか100を越していた。誰かのためなんて綺麗事をほざいて、自分の為に書き続けた。一年が過ぎ、100が過ぎ。書きたいネタが無くなったかと言われればそんな事ないんだけど、如何せん僕の余裕がどこかに消えてしまったせいで走り出せない気がする。余裕がなくなったって言うか、現実を見るようになっただけなんだけど。


なんにせよ、100かいめだよ。ありがとう。僕は今君に会いたい。君に会ってありがとうを言いたい。御礼参りをしたい。始めは一人だった。けれど今は僕の周りに、後ろに、これからに。君達の影が見える。僕を一人にしないでくれてありがとう。何にもなれなかった僕を見つけてくれてありがとう。どうか、君の人生の中に少しでも存在できますように。


何にでもなれて何にでもなれない。僕は大人になってようやくそれを学んだ。僕がしたかった世界で生き残れる人は一握りで、僕がなりたかったものに、僕は一生かけてもなれないって気付いてしまったんだ。


ヒーローになりたかったなあなんて思う。物心ついた時から空想の世界にいるのが至福だった。僕は僅か3歳弱で自分は主人公になれないのだと悟っていたのだろう。僕の物語はさぞ滑稽でつまらなくて、ずっと誰かに卑下されて、愛を得られないような人生なのだと。だからこそ、空想の世界は僕に優しかった。僕が考えれば誰もが僕を愛してくれる。誰もが僕に優しくて幸せな世界だ。何度も何度もその世界に逃げた。日常を当たり前のように過ごしている振りをして、本当はずっと心がこっちにいなかったんだ。


心配しないでほしいんだけど、だからって病んでる訳じゃないからね?大丈夫だよ?全然平気なんだけど、僕はこの世界に、現代日本にずっと馴染めなかった。今もそう。ずっと、自分の居る場所はここではないと思っていた。人と違うって後ろ指を指されるくせして、才能のある人のように突出出来たわけでもない。思っている事を口に出来ない世の中って何だろう。人と違うから迫害されるのは?目立ちたくないのに目をつけられるのは?守るためにつけた笑顔という術のせいで、逆に酷くなったのは何でだろう。


僕は多分君達よりずっと生き方が下手くそなんだよね。自分を売り出すのも。けれど敵は作りやすいんだ。もう慣れたものだけど、それでもここじゃないとはずっと思っていた。


けれど今年の三月、僕の心が一瞬軽くなった。海外に行ってきたんだ。日本人もほとんどいないような空間で。


僕は泣いてしまいそうだった。

だってずっと探していたんだ。僕がいる場所を。それがようやく見つかった気がして。

心が軽くなった。苦しかった。辛かった。灰色に染まりたくなかった。僕がいる場所は広い海の外だったって気付いてからは、余計にここにいるのが辛くなった。苦しい。苦しい。堪らなく悲しい。虚しい。何も出来ない自分を再確認させられる。辛い。けれどここで生きないと、もう一度外の世界にはいけない。


僕はこの日本が箱庭のようだと感じているんだ。君が分かってくれるかは分からないけれど。自由を振りかざしているのは一握りでずっと囚われたままの僕達は、この箱庭に少しだけ不満はあるけれど外に出ない限り安全だからここに居続ける。そして歪んでいく。悲しいね。



昔好きだった漫画に出てくる登場人物になりたかった。その世界で生きてみたかった。平行世界がいくつもあるのなら、僕は渡り歩きたいと思う。ここには戻って来なくていい。


そんな僕の幸せな時間は寝ている間だった。今も昔も。夢を見るのが好きだった。僕の夢の中ではありえない事ばかり起きる。現実世界なんてどこへやら。見た事もない、行った事もない場所に行ける。現実が大嫌いな僕は秋に入ってから夢の中で三回は死んでいる。生まれ変わりたい願望が強すぎるのかは分からないけれど、さすがに三回は過去類を見ない結果だ。


でも。それだけじゃ駄目だって事にもう気付いているんだ。


夢の中では生きて行けないし世界は変わらない。僕はヒーローになれないし誰かを救えない。この苦しい世界で灰色に染まらないよう歩き続けなければならない。ここに書き続けているだけじゃ、何も変わらないんだって事を。小説で生きて行きたいなんて甘い幻想も考え直さなければならないのも。一つを手に取るのなら一つを捨てなければならない。三秒後を変えたいなら僕が進まなければ。



いつもネガティブ発言ばかりでごめんね。現実の僕はもっと愉快なんだけど結局人間の本質なんてこんなもんだ許してくれ。


今、君は何を見てる?何をしてる?絶望はしていないか?生きる意味を問い詰めてはいないか?どうか、君に幸福を。明日も頑張ろうって思える理由が出来ますように。僕にも出来ますように。




君は君が思っている以上に駄目な人間じゃないよ。

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