第01章02話
第01章02話
——前回のあらすじ——
普通(?)の高校生である賀鷺鳳舞は親友の青城亮、亮の幼馴染みの古宮黎、真屋鈴と共に帰宅しようとしていたのだが、そんな時に黎が口にした聖那と言う名の少女の事を1人っ子である鳳舞の妹だと告げる鈴。
果たして聖那とは...っ!?
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「何とか誤魔化したけど、ホントに聖那って何者なんだ?皆して俺の妹って言うけど…。」
学校を出た一行はそのまま鳳舞の住む家へと向かった。
鳳舞の家族構成は、両親と彼の3人だ。しかし彼の親はかなりの放任主義で、現在は海外にいる。だから必然的に鳳舞が学校に行っている間は家には誰もいないはずなのだが...
「お帰りなさ〜いっ!お兄ちゃん♪」
——俺の家から出てきた、目の前の天使は誰だっ!——
何故か小学生ほどの幼女が玄関の扉を開けて出迎えてきた。
「おわっ!」
そして鳳舞に抱き付くのだった。
「相変わらず聖那ちゃんは賀鷺くんのことが大好きだね?」
鈴は鳳舞に抱き付く聖那に微笑みながら言葉を発する。
「うんっ!聖那はね、将来お兄ちゃんのお嫁さんになるの!」
すると聖那は姿勢を正すと(無い)胸を張りながらそんなことを言った。
「鳳舞め、モテモテじゃねーか。」
「賀鷺、いくらなんでも妹に手を出すのは...。」
そんな幼女を見ながら亮と黎もそれぞれ反応を示す。
「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ皆っ!確かにこんな可愛い子が妹だったら嬉しいけど俺は1人っ子だぞ!」
そんなほのぼのとした空気を壊したのは鳳舞であった。
「え...っ」
すると先程までニコニコと笑顔を浮かべていた聖那の表情が固まった。
「うっ、ぅうぅ、うっ、うぁぁぁぁぁぁぁぁあ〜ん!」
そして泣き出したのだった。
「お、おい鳳舞!!さすがにそれはないだろ!」
「学校にいる時から変でしたが…さては貴方、賀鷺くんの皮をかぶった偽物ですね!」
「見損なったぞ賀鷺っ!」
すると当然のごとく鳳舞は総攻めにあう。
「皆とりあえず落ち着いてくれ!それとそこの幼女は泣いてないでちゃんと説明してくれ!」
とにかくこの場をなんとか収めようと皆を黙らせると、泣いている聖那を咎める。
「グスッ、お兄ちゃんに忘れられた...酷い、あんなことやこんなこともされたのに要らなくなったら捨てるんだねお兄ちゃん...グスッ。」
「いや、ホントにそういうのいいから。全く身に覚えのないことを言わないでくれ。そもそもアンタ人間じゃないだろ?」
聖那が涙声で話すと、友人の目線が痛くなる前に即否定する。
そして幼女の人格を比定しだした。
「なっ!?」
「こんだけあからさまに神術使ってたら気付くっての。」
すると先程まで泣いていた聖那は驚愕の表情を浮かべた。
ちなみに話についていけてない約3名は静観に徹している。
「とにかくちゃんと説明してくれ。」
「あぁ、予定外じゃ!せっかくただでさえ神術使って疲れとるのに...。立ち話もなんじゃから家に入るといい。」
鳳舞が説明を求めると、今までの妹然とした態度はどこへやら...急に態度が大きくなった幼女。
「「「............。」」」
亮・黎・鈴は言われるがまま家の中へ入っていく。
「いや、ここ俺ん家だから!」
すかさず突っ込みを入れる鳳舞は流石と言えるだろう(?)
〜☆-☆-☆-☆-☆〜
「先ずはお主らに謝らんといかんことがある。童は鳳舞の妹ではない。ならば何故お主らがそう思い込んでいたのかというと童が術をかけたからじゃ。簡単に言えば催眠・洗脳じゃな。」
5人はリビングのソファーに座って、聖那が説明を始める。
「ってことはなんだ?俺らは聖那ちゃんに長年騙されてたのか?」
聖那に対して亮が口を開けて問う。
「えっと、騙してたのは否定せんが術をかけたのは今日の早朝じゃよ。」
「ですが私達の中では賀鷺くんに年の離れた妹がいるという認識なのですが?」
「要するに、皆の過去の記憶を変えて俺に妹がいるって設定を今朝作ったんだよ。」
鈴が疑問符を付けたところに、鳳舞が補足をすることによりやっと理解する3人。
「そもそもの話、聖那ちゃんって何者なの?」
次の質問は黎からだ。
「そうじゃな、分かりやすく言えば『神』じゃ。」
「なるほど神か。」
「神様ですか〜。」
「そうらしいな。」
亮・鈴・そして鳳舞はその答えに対して頷く。
「まってよ、何で皆そんな簡単に納得出来るの!?」
「そ、そうじゃ!普通、自分で神とか言ったら怪しいヤツでしか無いじゃろ!」
その反応に驚いたのは黎と聖那だった。
聖那に関しては自分で言っといて取り乱している。
「記憶の操作なんて神様くらいにしか出来ないでしょうし。」
「俺はもう考えるのがめんどくさくなっただけだな!」
鈴は根拠を持って、亮は思考を放棄していた。
「鳳舞は?さっきからの感じだと聖那ちゃんが神様だって知ってるみたいな話し方だったけど...。」
「それに、そもそもなぜお主には術が効かんかったのじゃ?」
「俺か?そりゃ俺の親父が神だし。記憶改竄の神術なら簡単に無効化出来るぞ。」
鳳舞は事も無げにたんたんと語る。
「そうなのね。」
それに対して先程まで反発していた黎までもが納得してしまう。
唯一納得出来ないのは、
「どういうことじゃ!?なぜ今ので納得出来るの!詳しい説明を求めるのじゃ!」
幼女ただ1人だ。
「詳しくってもな...暇になって天界から天下りしてきたうちの親父が母さんに惚れて結婚して、んで俺がその子供。」
そんな突拍子も無いことをまたも言い出す鳳舞だったが、
「まぁ鳳舞だしな。それくらいじゃ驚かないわ。」
「むしろ説得力ありますよね〜。」
「あぁ、何をやらせても卆なくこなすし、この子にしてあの親ありって、逆に今までの謎が解けた気分ね。」
3人は彼に対して絶対的な信頼(?)をおいていた。
「なんかもう疲れたのじゃ。」
そんな彼らに追求することを諦めた聖那だった。
「んで、わざわざ俺の妹になってまで何がしたかったんだ?」
逸れた話を軌道修正するべく、鳳舞は神様に問いかける。
「そうじゃ忘れておった。驚かんで聞いてくれ、お主らには.........」
そので一度言葉を区切り、
「異世界に行ってもらう!!」
そんなことを言い出した。
それを聞いた鳳舞達の反応は次の通りだ。
「「「「ふ〜ん。」」」」
以上。
「少しは驚かんかぁぁぁあ!」
聖那の叫びがこだました。
「いや、だって驚くなって言ったじゃないか。」
「うっ、確かに言ったが...異世界じゃぞ?普通なら驚くところじゃろ!?」
もう必死になっている神様。
「そんなの今更だろ?なんたって俺たちは半神と愉快な仲間達なんだからさ!」
そんな彼女に対しておちゃらけた様子でそう言う亮。
「愉快なのはアンタの頭だけよ!」
「愉快な仲間達」というのが気に食わなかったのか黎が物申す。
「まぁまぁ黎ちゃん。実際、賀鷺くんが普通じゃなかったから、普通なら信じないことも簡単に信じれるようになったわけですし。概ね青城くんの解釈で間違ってはいませんよ?」
「そうなんだけど...。」
鈴の言葉に渋々頷く黎。
「そうか、お主らにに普通を求めた童がバカじゃったわい。」
そんな中、1人で納得していた聖那がいた。
「とにかくじゃ!無事に異世界に渡れるように童がお主らを観察するためにわざわざ妹設定を作ったんじゃ。まぁ誰かにめちゃくちゃにされたがの。」
話を戻し再び本題に入る神様。
「え、異世界行くのは決定なの?」
どうやら行くか行かないかを決めさせるために来たと思っていたらしい鳳舞が言う。
「童が召喚するならこの世界に残るという選択肢もあったのじゃが、召喚するのは向こうの世界の住人じゃ。じゃからこうして教えてやるので精一杯じゃな。」
どうやら地球には居られないらしい。
「別にいいんじゃない?特にこの世界に未練がある訳でもないし。」
「そうですね、正直毎日学校に通うのは飽きていましたし。」
黎と鈴はもう心の準備をしているようだ。
「お、お主ら童が言うのもなんじゃが家族のことは心配じゃないのか?」
そんな2人に驚くのはやはり聖那だった。
「私達、物心ついた頃から孤児だったから家族なんていないわ。」
「青城くんが賀鷺くんと仲良くなってなかったら私達今頃高校なんて行ってないで普通に働いてるはずですよ。」
黎・鈴・亮は小学校のあいだは1年ごとに教会やお寺で転々と面倒を見られてきた。
中学でも同じと思っていた3人だったが亮がたまたま鳳舞と友達になり、彼の父(本当は神)が超が付くほどのお金持ちで、鳳舞が父に事情を話した(単に初めてにして唯一の友達と別れたくなかったから)ところ、なんと3人にそれぞれ一軒の家を用意し、口座まで作り1億ほど預金してくれたのだった。
「そ、そうじゃったのか...。」
申し訳なさそうな顔になる聖那。
「別に気にしなくてもいいぞ。寺や教会での暮らしも別に窮屈だった訳じゃないし、今は人間界を満喫してる誰かの父親のおかげで楽しく過ごせてるしな。」
しかし亮の影のない笑顔と言葉に曇った顔の神様も明るさを取り戻す。
「だから俺も未練はない!てか男たるもの冒険の一つや二つやらないでどうするってんだ!」
亮も異世界に行くことに乗り気にようだ。
「まてまて、なぁ神様、異世界って行ったら戻ってこれんの?」
鳳舞は疑問に思ったことを問いただす。
「も、戻ってこれん。」
その問に対し、またも顔を曇らせる神様。
「やっぱりか...皆それでもいいの?」
次に鳳舞は3人に尋ねる。
「いいぜ!」
「いいわ!」
「大丈夫です!」
が、答えは変わらなかった。
「なら俺もいいや。あ、まだ時間ある?」
余りにもあっさりとした4人の態度に驚いていたのも束の間、またも質問をする鳳舞。
「あと2、3分くらいじゃ。」
「なら間に合うか。親父に手紙書いとく。」
唯一親のいる鳳舞だが元々放任主義な為、それだけしていれば特に問題にはならなさそうである。
「親父だったら神術使って学校とかその他諸々のことも問題になんないから安心だろ。」
というか問題を押し付けた。
「............よし、書けた!」
ササッと紙に何かしら文字を書くと、その神を冷蔵庫に磁石でくっつける。
そして鳳舞がリビングに戻った瞬間、
「うわっ!」
彼らのいた床が光出した。
「では童はこれで。良い異世界ライフを!」
幼女はそう言うと消えてしまった。
そして眩い光に包まれた4人の若者は地球から姿を消したのであった。