第01章01話
第01章01話
「なんだ、今日はみんな早いな。」
放課後となり、人の少なくなった教室の扉を開け入ってきたのは高身長の少年だった。
「賀鷺、少しはまともに授業を受けに来なさいよ!なんのために学校通ってんの?」
その少年に声をかけたのは長い茶髪をポニーテールにした少女だった。
身長は女子にしてはやや高く165〜170cmくらいあるだろう。
また顔は小顔で整っており、モデルの様なスレンダーな体格も相まって男女共に人気の高い人物である。
「えっと.........友達作り?」
賀鷺と呼ばれた少年は少しの間考えると真顔で答えた。
「プッ、鳳舞っその返しはないってwww」
すると少女の近くにいる男子に笑われながら指摘されるのであった。ちなみにその男子はイケメンだ。それはもう、とてつもなく。
「俺は亮よりかはよっぽど正しい時間の使い方をしてると思うけどな。それに友達作りってのもあながち間違っちゃいないぞ。」
「そうですよ、青城くん。授業中に寝てばかりの貴方と違って賀鷺くんは図書館で勉強をしてるんですから!」
鳳舞と呼ばれた身長の高い少年がイケメンに反論すると、それに合わせて教室にいたもう1人の女子も追随するように声を出す。
声を出した女子の身長は155cm程度で、長い黒髪をした浴衣の似合いそうな大和撫子である。
「はいはい、すみませんでした〜っと。」
青城亮は全く反省した様子もなく返事をした。
「まぁ、俺としても古宮が言う通り教室で授業が受けたいんだが先生達がな......。」
次に鳳舞はポニーテールの少女に対して言葉を発した。
「うぅ、分かってるんだけど...。」
すると少女は決まりが悪そうに顔をしかめる。
「教師論破事件か...。あれは面白かったな〜。」
亮は遠い目をしながら昔を思い出すようにして笑う。
「あれは可愛そうでしたね、先生が。」
黒髪の女子も同じ様な目をしていた。
「おいおい、真屋まで酷な。」
「ふふ、すみません賀鷺くん。でもどうしてこの学校を選んだんですか?確かにこの学校はこの辺で一番偏差値の高い学校ですけど、行こうと思えばどこにでも行けたのでは?」
そう、黒髪の彼女が言うように鳳舞の頭は同世代の学生よりもずば抜けていいのだ。具体的にどのくらいかといえば模試で毎回全国トップを取るくらいだ。
教師達は当初そんな生徒が学校に入ってきたことに狂喜乱舞したが、授業で立て続けにとある事件が起こり、現在は鳳舞だけ特別に図書館で自習という形をとっている状態だ。
「それは家から一番近いってのもあったけど、亮と同じ学校が良かったからだな。」
「そんな理由で!?」
鳳舞が言った言葉に驚いたのはポニテの少女だった。
「鳳舞こう見えて友達少ないんだよ〜。本人が意図せずに敵を作るタイプだから仕方ないっちゃそうなんだが。」
待ってましたと言わんばかりに声を発する亮。
「亮の言う通りではあるが認めたくない...っ!」
鳳舞は悔しそうにそう言った。
「へぇ、意外ね。鈴は知ってた?」
「黎ちゃんが知らないんですから私も知りませんよ。でも確かに言われてみれば青城くんとばかり居ますね。」
ポニテ少女こと古宮黎が尋ねると、黒髪女子こと真屋鈴は丁寧な言葉で答える。
黎と鈴と亮は幼馴染みであり小中高と学校は全て同じ、そして中学時代から亮と仲のいい鳳舞もまた必然的に女子二人となにかと接点が多いのだ。
「あぁ、もうこの話はやめだ!帰ろうぜ!...って、何で今日はみんな揃ってんだ?部活はどうしたんだよ?」
自分に不利な話の流れになってきたので話題を切り替えた鳳舞。
普段は部活動に無所属である彼が、生徒会執行部の黎、剣道部の亮、文芸部の鈴を
教室で待つのが常だ。
「お前、それ本気で言ってる?キレていいよね?俺キレてもいいよね?」
亮は鳳舞の質問が不服だったのか青筋を浮かべている。
「はぁ、賀鷺だから仕方ないわよ。興味があることといえば遺伝子の塩基配列だの素数だの訳の分からない数式くらいよ。」
「そうですよね〜。今日が自分の誕生日だとか、誕生日に皆でお祝いするねって話を昨日していたことすら興味がないから覚えてないんですもんね〜。」
黎は呆れ、鈴はゆっくりとただ事実を述べるのだった。
「ワカッテタヨー、えっと、その、あれだ!ごめんなさいでした!」
言い訳をしようと頭の中で咄嗟に考えたが、この状況を悪化させない一手を見いだせず結局は素直に謝る鳳舞。もはやヤケクソである。
「とりあえず鳳舞の家に行こうぜ!」
「聖那ちゃんも待ってるでしょうからね。」
亮が急かし、黎も便乗する。
だがその黎の言葉に鳳舞は疑問を持った。
「え...聖那って、誰?」
「何を言ってるんですか?聖那ちゃんは貴方の妹でしょ?」
鈴から返ってきた答えに鳳舞はますます混乱する。
何故なら...
「俺、1人っ子なんだけど...。」
〜☆-☆-☆-☆-☆〜
この時から彼らの激動の運命が唸りをあげ始めるのだが、それは神のみぞ知る...。