リンドワース① レモンクッキー
――私はまず黄色いレモンクッキーを食べた。一瞬彼の金髪が浮かんで、気まずくなってしまう。
「どうかした?」
リンドワースはたぶん私の考えていることに気がついている。
「いいえ、なんでもありません」
照れてしまったことを悟られないように顔を反らした。
「君は魔王と僕ならどちらがいい?」
「……え?」
どうしてそんなことを聞いてくるのかわからない。
そもそも比較される対象がもしヤーロウか誰かならもちろん後者の誰かを選ぶに変わりはない。
しかし魔族の黒いやつと黄色いやつのどっちが好きか聞かれても困る。
「私は人間なので同じ魔族のうちでどちらが好きか聞かれても恋愛対象とか友人だとかは選べません」
「なら普通に顔で選んでいいよ?」
リンドワースは顔に自身があるらしい。二人とも羽や角があるくらいで人間とあまり変わらないが、私に好みとかはない。
「ただの村娘に好みを選ばせないでください」
狭い村だと人も少ないし大抵は親が決めた相手やなるべく利益のある相手と結婚するものだ。
「でも今は次期魔王なんだ。君に取り入ろうと甘い言葉をささやく男だって沢山現れる」
―――それは貴方もじゃない。そう思ったが、彼は魔王の甥で、すでにそこそこの地位があり今更いつか勇者に倒される仮初めの女に取り入る必要はない。
「私はもう信じません」
恋だの愛はヤーロウでこりた。