【三角のかぶと】
このところ雨降りが多い、酷く降る時も、小雨の時も僕はあの子と外を見ている。
「彼はどうしたのかな?」
あの子は僕に聞いてくる。でも、僕もわからない。こんなことを考えていると家の前に現れていない。
「急に、ふっと気が付くと居たりするんだけど、今はいないみたいだね」
「そうなんだ、明日は雨が止むといいね」
「そうだね」
そして、次の日。久々に青空。空を見上げる僕の足元から聞こえる、彼の声。気合いが入っているような気が。
「どうしたの、その頭の三角、かわいい」
となりの家から顔を出したあの子の声に合せるように下を見る。
彼は頭に三角の布を巻き、腰にも布を巻いている。あれは確かエプリオンとかいう名前だったきがする。
あの子も近くに来て彼を見る。
「ん~ん~~ん~んんんん」
彼は両手を上げ、その手にはいつの間にか棒に布が付いたものを持っていた。
僕たちを見ているような、見ていないような、いや、やっぱり見ている。
「彼は、僕たちに何か言おうとしている」
「そうなの?」
彼は手の棒を僕に向け、そして僕の家をびしっと差し示した。
あの子にも同じようにあの子の家を刺し示した。
僕たちは促されるように自分たちの家を見る。そして視線を戻すと。
いつの間にか僕らの前には小さな土の家が出来ていた。彼は、手に持った棒でその家をペシペシしている。
「…掃除をしたらどうかってことか?」
「天気がいいからかもね、やろうよ」
結局、僕が一番時間がかかってあの子が手伝ってくれたんだ。
え、彼はって。
あの棒で汚れているところをペシペシ教えてくれてたよ。
まるで将軍みたいに、あの三角は僕には兜にしか見えなかったんだ。
でも、きれいになるのは気持ちがいいね。




