【私はだれですか?】
彼と一緒にヒトを拾ってから数日たったけど、まだ、起きる様子はない。
毎日は変わりなく、いや、あの日以来彼を見ていない。
家の前の広間でいつも通りお日様を浴びながら体を動かしていると後ろから音がした。
振り返るととなりの家から不安そうな顔をしたヒトがゆっくりと僕に近づいてくる。
僕の目を見て、
「私はだれですか?」
「さあ」
だって僕には判らない、僕が誰なのかも解らないのだから。
「ごめんね。僕も自分がだれか解らないから、君がだれなのか判らない。分かるとすれば彼だけだね」
「その方はどこにいるのですか」
僕は視線を落として、
「そこだよ」って教えてあげた。
「ん~」彼はご紹介されました彼ですって感じで声をあげ。
「きゃ」この子は足元からの急な声に驚き、慌てて僕の後ろまで走ってきて隠れた。
ぽつんとひとり佇む彼は、いつも通りだった。
「大丈夫、だよ。彼はいつも僕を助けてくれるいい人だよ。それに君が森に倒れているのを教えてくれたんだ」
僕の背中に隠れているこの子に教えてあげた。
そっと、顔を出して。
「ありがとう、ございました」
「ん~」
彼は、軽く両手を上げて返事をした。
「ん、ん、ん、ん~、んんんん~」
何やら楽し気に踊りだす彼をみて、僕も彼のマネをしながら踊ってみせた。
「ふふっ」
僕らを見て不安そうだった子は楽しそうに微笑んだ。 よかったね。




