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【想う】
彼が佇んでいる。
身動き1つしない、誇らしげで儚げで、自信に満ち溢れているような、悲しそうな。
彼の立ち姿に、僕はいろいろな思いを投影してしまう。
彼は語らない、そしてカタッテイル。
存在のすべてで…
彼の前には道はないのだろう、そして彼の後ろにも道はないような気がする。
孤高…
それゆえの孤独…
僕は彼にとってどんな存在なのだろうか。
やはり、彼は語らない、それでもカタッテくれている。
『んー』
突然動き出す彼。
自分のおなかをペシッと叩き、両手を上げて。
『んーんーんー』
と言って森へ入っていく。
猪を引いて戻ってくる彼。
人の思いは見えないものだなぁ…
何を食べるか考えていただけだったなんて。
猪は鍋で煮て食べたよ。
彼が鍋に落ちて全身てかてかになったけどね。




