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【1つ上から見える景色】
樽の上に彼がいる。
僕と目が合う…踊りだす。
あっ、落ちた。
踊りながら外へ繰り出す。
違う日。
庭にあるぬるい白亜の洗面器の淵に彼がいる。
僕と目が合う…踊りだす。
あっ、落ちた。
水中で踊っている。
夜に雨が降った日。
葉っぱに残った雨粒が朝日を受けて輝いている隣に彼がいる。
僕と目が合う…踊りだす。
朝日が照らす、彼のステップは最高だ。
少し高く飛び、着地と同時に葉っぱの雨粒は空気中に舞う…
あっ、落ちた。
彼はベチャとぬかるんだ地面に半分埋まる…
僕はなんだか悲しい気分になった…
彼は泥まみれのまま起き上がる。
そして楽しそうに踊りだした。
泥まみれの彼が僕には朝日よりも眩しく見えた。




