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土の126号  作者: はぐれSS
33/61

【上昇中】

花の季節が終わると、徐々に空気が暑くなる。


今までは太陽が出ている間は彼と森で過ごす事が多かった。




今年は…




彼について今は家の裏にある下に下に続く道の隣の上へ上へ続く道を上っている。


僕の手には軽いけど硬いつるはし、彼が地面から引っ張りだしてくれた物を担いでいる。



彼と2人、どんどん、どんどん進んでいく。




小さな泉がぽこぽこと5つある所へ到着。


冷たい湧き水が集まって森の奥のほうに集まり流れていく、最終的には森の奥の洞窟から流れる小川に合流する。


僕の興奮は最高潮だ。


おそらく彼もそうだと思う。




それは僕らの中庭に冷たい湧き水場ができるからだ。



始めは彼がボコボコになった中庭を平らにしている時だった、中庭の端に僕がすっぽり入るくらいの穴が出来た。


全てはそこから始まった…


『ここに冷たい水があったら森の果実が冷やせるね』


彼の口元が僅かに緩んで見えた。


ぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺし…………


ぺしぺし音が2晩続き中庭には白亜のでっかい洗面器みたいなのができていた。




その傍らに立つ彼からはなんとも言えないオーラが立ち上っていた。彼は家の裏手へ回る。


すでにそこには小さな水路がジャンプ台のように空へ向かっていた。


地面から取り出したつるはしを僕に渡す。





そして、今ここにいる。


彼が作り出したものがつまらないわけが無い。



彼は栓のようになっている石の塊をぺしぺしする。解ったよ、最後の仕上げを僕にやらしてくれるんだね…僕は気合を入れてこの手のつるはしを真っ直ぐに振り下ろす。



一度で駄目なら、二度三度…


水が流れ出す、彼が作った水路を勢い良く流れ落ちる…おお。


ジャンプ台のような部分から空に向けて水は空に曲線を描く…




ここからでは小さく見える白亜の洗面器に吸い込まれるように水が入っているようだ。


成功だ。


彼は水路の淵に立ちその背中には達成感が満ちている。



涼しげに空を舞う水を見ながら、気持ちが高まった僕は…


『やったぁー』

と大きな声を出す…あっ…


僕の声に驚いたのか彼が、水路に…落ちた。


流れる水に身を任せ彼はどんどん流されていく、必死で坂を転びそうになりながら走るけどその姿はどんどん離れていく…


あっ…


彼は水と一緒にジャンプ台から発射される。





かなり遅れて家までたどり着く、洗面器から上がってきた彼は水をぺしぺしして残念そうに「んー」と言った。



僕は水を触ってみる。




ああ、駄目だ。凄くぬるい…あれ、彼がいない…




ジャンプ台は気に入ったらしい。


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