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【一冊の書物】
分厚い本だ。
しかも、それが何冊もある。
ある日、地下室の壁が崩れた。
その奥に小さな部屋があった。
そこにあったのが同じような表紙の分厚い本。
なぜか強く興味を引かれる…
一冊手にとって上に上がる、部屋の真ん中には彼が真っ直ぐに僕を見ていた。
そう真っ直ぐに僕を見ている。
珍しいことだと思う。僕を真っ直ぐ見る彼。
彼に見つめられることに若干の違和感を感じながら本を読む…
難しい。
解るような解らないような不思議な感覚。
気がついたらふらふら眠気が襲ってくる…
朦朧とする意識の中で彼が本を持って地下室へ向かうのを見たような気がする。
布団で目が覚めた僕は真っ先に地下室に向かってみる…
壁は崩れていない。
夢でも見ていたのかな…
彼はいつもより激しく広場で動いている、地面が穴だらけだよ。




