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【何に祈るのか】
毎朝の日課は祈ると言う行為らしい。
それでも僕にはしっくり来ない。
僕は彼と平和に暮らしているし、お日様が昇れば暗いところはないくらい明るいし。
僕は彼と過ごす日々を幸せだと感じている…ん、彼はどうだろう。
もし、彼が幸せでないのなら「皆が幸せでありますように」の部分は今は違うと言うことになってしまう。
聞いて解るだろうか…
いや、聞いてみなければ…
鳥の皮を香ばしく焼く、しっとり蒸し焼きも好きな彼だが、この香ばしい皮を音を立てずに食べるのも好きな様子。
平らな石を熱しながら軽く皮目を焼き、ひっくり返して肉を焼く…
いい感じだ。
更に皮目を下に、その上に焼いた平らな石を乗せて焼き石で鳥肉を挟む。
じゅーっとした音とともに香りと煙がほわっと広がる…
彼はいつものようにいつの間にか僕の横にいて、音に合わせて両手を1回上げて下ろした。
『ねえ、幸せかい?』
彼は鳥から僕の方にゆっくり向きを変えて。
『んー』と口を突き出すと素早く鳥のほうに向きを変えた。
僕は明日からも祈り続けると思う、幸せな彼も祈り続けているから。




