【彼との出会い…】
僕はいつからここにいたのかわからない、けれど彼との出会いは良く覚えている。
あれは森の奥に進みすぎた日のこと…
僕は殺されそうになっていた。獣の群れに囲まれて。
『もう、だめかな…』
鋭い牙を隠しもせずに唸り声は徐々に近づいてくる。恐怖で目を瞑る瞬間、「126」の数字が見えた気がした。
『キャン』
僕の耳に届いた泣き声…いつまでたっても襲い掛かってくる気配はない。
恐る恐る目を開けるとそこに…動かなくなった獣達と。
僕の顔を真っ直ぐ見上げる彼の小さな姿があった。
『助けてくれたの…』
彼は何も言わずに背中を向け、真っ直ぐに歩き出した。
『待って、待ってよ』
小さな彼は結構な速さでこちらを振り返らずに進んでいく。
無我夢中で「126」の数字を追いかける。
視界が開ける、そこは僕の住んでいる家だった…
彼はこちらを向き口を突き出すと地面に潜っていった。
これが彼との出会い…
その日を境に僕の前に姿を現すようになった、ある時は僕を助け、またある時は一緒に食事をして、またある時は何もせずにただ佇んでいて。
口はあるけど言葉や声は聞いたことがない、それでも徐々になんとなく言いたいことがわかるような気がする…気がするだけだけど。
彼…ひょっとしたら彼女かもしれない…
『126号、君は僕と同じ男なのかい』
んーと口を突き出す。
『本当は女なのかな』
んーと口を突き出す。
僕はそれを聞くのをやめようと思った、だって違いがわからないから。