【なぜだろう…】
最近家にある紙に書いてあることが解るようになってきた。
今までは紙の中の絵を見るぐらいしか出来なかったけれど、大きな字の物は読めるようになった。
僕と同じような身体の人がいろいろな格好をしている絵を良く見ていた。
外に出て絵の格好を真似してみる。
何の為にこの格好をするのか…次に手を上げるとか足を前に出すとか書かれている通りに動いては読んで、動いては読む。
暫らくして次を読もうとすると、そこには彼がいた。
ぺしぺしぺしぺしぺしぺし…
『めくるの?』
彼は僕の一言を聞くとぺしぺしを止めて紙を見ている。
僕は紙を最初から一枚一枚めくって見せる。十枚くらいの紙をめくり終わると、彼はいつも地面に模様を書くところまでてくてく歩いていくと僕の方に振り返った。
短い手が持ち上げられる、少しふらふらと体を揺らす彼。
踊っているように短い手と足を切れ良く動かしている…あっ、一連の動きを3回ほど繰り返した彼を見てやっと気づく。
紙に書いてある動きを連続で行っていることに…
そうか、僕はひとつひとつの格好をしていただけだけど途切れないように続けるって意味だったのか。
彼の動きと紙の絵を見比べながら暫らくすると彼は横になって動かなくなった、寝ちゃったのかな。
えっ、紙の束の最初になんて書いてあるかって。
「酔拳」だよ。




