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第四話 メアリーの決断!

 オレと遠野さん、水霊みずちとプールに行ってから数日間が過ぎた。

遠野さん専用の水着『オートパック水着』の調整も終わり、ついにオレと遠野さんのデートする土曜日になる。


遠野さんは、デート用のコスチュームでオレの家に来た。

藍色の上着に、水色のスカートを穿いている。何とも夏らしい格好だ。

見ているオレまで涼しさを感じる。


「どうかな? 夏のプールをイメージしてみたんだけど……」


「ああ、オレも涼しさを感じるよ。じゃあ、イルカに会いに行こうか?」


「うん!」


オレ達は水族館を目指して、バスに乗り込んだ。

バスの中は騒がしかった。どこかで知っているような声がする。


「サメ! ホオジロザメ! ああ、あの勇ましい雄姿を早く見たい! 

そして、僕のインスピレーション(創造力)を刺激し、金を融資してくれ!」


「あんまはしゃぐな、暴れるな! それと、ウチにも分け前をくれ!」


「へっ、嫌だよ!」


メアリーは不敵な笑みを浮かべていた。


「何やと! お前がサメに食われても助けてやらへんで!」


「へへ―ん。もはや、今までの可憐で可愛いメアリーちゃんではない! 

動物の能力を研究し、新しい発明道具を作ったのだ! 

これにより、怪物・鏡野真梨にも互角に戦う事ができる!」


「ほーう、やってもらおうやないか! 死んでも死らへんで!」


鏡野は、メアリーに軽いジャブを喰らわす。


「ごふっ……」


ジャブを喰らい、メアリーは倒れ込んだ。いくらジャブとはいえ、鏡野の攻撃だ。

バスの乗客の立つ場所に倒れ込み、軽く痙攣していた。学校で何度も見た光景だ。

最初こそ心配していたが、今では当たり前の光景になっている。


他のお客さんの迷惑だから、早く回復して欲しい。

一分ほどすると、メアリーは立ち上がって来た。

足をふらつかせているが、何とか大丈夫のようだ。


「おえ、ケーキが出る……。

ソフトタッチで触らないと、メアリーちゃんの故障の原因になるんだよ!」


「悪い、悪い。ついイラッとして……」


鏡野が本気を出せば、故障程度では済まない。完全にスクラップと化すのだ。

メアリーもボケるなら、時と相手と場所を選ばなきゃダメだ。

まあ、全力の攻撃を喰らっても、ギャグ補正で何とかなるのだろうが……。


ちなみに、メアリーの格好は、いつもの白衣姿のままだ。

おそらくそれしか用意している私服がないのだろう。

季節に合わせて服装を変える遠野さんとは、段違いの差だ。


鏡野真梨は、薄緑と白のストライプのTシャツだ。黒色を下地に選んでいる。

蹴りでパンツを見せる事も出来るように、ジーパン素材のスカートを着用している。

戦闘する女の子をイメージした衣装だ。なかなか私服は似合っていた。


まあ、戦闘をしてパンツをちらつかせないといけないから、このぐらいの装備は必須と言える。


オレ達四人は、まず水族館の中を散策し、それからイルカやサメの居るプールに集合する。

時間が指定されているため、まずは普通に水族館を楽しむ事にした。

知っている魚もいるけど、新しく入荷した魚なんかもいる。


いつ来ても楽しい場所だと思って、ついつい時間を忘れてしまう。

ペンギンやアザラシもいて、本当に楽しい。


オレ的には、イルカと泳ぐよりもペンギンに触りたかった。

でも、奴らのくちばしの攻撃力は分からないし、衛生面でも綺麗か分からない。

クーラーの効いた部屋にいるから、そのまま一緒に遊べるとも思えない。

フンボルトペンギンなら、温かいプールでも大丈夫だと思うのだが……。


イルカは知能も高いし、人間に危害を加える事も無い。

そういう事で許可されているのだろう。

ホオジロザメはなぜ一緒に泳げるのかも不明だが……。

人間でも殺されかねない勢いなのだ。

まあ、泳ぐのはオレ達じゃないので、深く考えないようにする。


 オレ達が水族館を散策していると、メアリーの知り合いらしきお祖父さんと会う。

メアリーと遠野さんが仲良く話している所を見ると、メアリーがいつも話しているお祖父さんかと推測する。

偉大な医師であり、科学者でもある超大物だ。

雰囲気はどことなくメアリーに似ているが、威圧感は格が違う。


優しそうな笑顔とは裏腹に、何を考えているのか全く分からない。

心の中では世界征服を企んでいてもおかしくないほどの技術と知識を持っているのだ。

海外旅行が趣味で、最近モロッコという国に旅行していたという。

何となく近付きがたい雰囲気を醸し出していた。


「おお、ジジイも来たのか! ラミアと弟子の麻紀まきもはりきって準備していたぞ。まあ、ラミアはおまけだけど……」


「わしは、二人の努力を全て知っておるよ。

どちらも頑張っていた。

優劣を付けるつもりはない。

結果は残酷だがな……」


「まあ、ラミアが発明品をほったらかしにして、次の発明に興味を持ったのが原因だからな。

麻紀も発明家として創作意欲を掻きたてられ、似たような物を作った。

そして、しっかり管理している麻紀だけが評価を受ける。

発明家として当然の成り行きだよ。

もっとしっかり部屋を掃除したり、管理能力を磨かないとな!」


「お前も人ごとではないだろう。

ラミアの部屋とお前の部屋だけ汚れたまんまなんだぞ!

いずれは、お前も作品が管理できず、誰かに成功を持って行かれるかもしれないんだぞ!」


「ご心配なく! そのために、遠野えるふの家に引っ越すのだ。

明日には、木霊にでも荷物を整理させて、えるふを家政婦としてこき使い、僕の新しい研究所ラボができるはずだ! 

自分にない能力は、他人を使って補わないとな!」


「まあ、それも一つの手だが、自分で掃除できるようにならないと、将来は危ういぞ」


「まあ、今はえるふを家政婦としてこき使って、ゆくゆくはケーキ作りと掃除や管理能力のある相手と結婚するよ。

まあ、遠野えるふはその候補者だな! 

もっと良い奴がいたら、そいつに乗り換えるけど……」


「そうか……。遠野君には世話をかける事になるな。まあ、しっかり頑張れよ!」


「おう、ジジイも健康に気を付けてな!」


メアリーの祖父は、メアリーと遠野さんに挨拶をして去って行った。

突然引っ越しの話になったけど、オレは何も聞いていない。

遠野さんの家にメアリーが来ると言うのは本当だろうか? 


まあ、大きい家だから、一人や二人増えた所で問題ないのだろうが、明日というのは急過ぎる。

手伝ってやっても良いが、事前に知らせてくれないと困る。

そう思って、とりあえず遠野さんにそう話してみた。


「遠野さん、明日メアリーが遠野さんの家に引っ越して来るんだね。

手伝っても良いけど、もう少し前に教えてもらわないと困るよ。

まあ、オレの手伝いがいるほどじゃないと思っていたんだろうけど……」


遠野さんは、オレの意見に機械的に応える。

何か、表情が硬くて怖い感じがする。


「いえ、私も初めて聞きました。

家の部屋や予定は空いていますけど、そんな話は全く聞いていません」


メアリーは、オレ達の会話を聞いていたようで、悪気なく答える。


「うん。だって今思い付いたんだもん。でも、良いだろ。

どうせ、部屋は余っているし、予定も無いだろうからな!」


「うん、良いけど……。そう言う大事な話は、もう少し準備してから教えて欲しかったよ」


「別に良いじゃん。

予定は空いているんだし、えるふの家の方が綺麗だし……。

これで三食ケーキ付きの食事と、毎日掃除してくれる家政婦が手に入ったんだ。

僕も趣味に没頭する事ができるよ!」


メアリーは、遠野さんの事も、オレの事も全く考えていない。

メアリーにとって、遠野さんは美味いケーキを作ってくれる家政婦としか見ていないのだ。オレの事は、その付き人くらいにしか思っていない。

あまり近寄りたくない考え方の人種だった。


人種差別はいけないと言われているが、せめて人から好かれる人格を身に付ける努力をして欲しい。

とにかく、明日の予定は、強制的にメアリーの引っ越しの手伝いをする事に決まった。

断った場合は、自分の彼女がボロぞうきんの様に働かされるのだ。

オレに選択の余地は無かった。

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