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第一話 水着を穿けない理由

 オレと遠野さん、水霊みずちは、一時頃に集まり、近くの水着ショップへ向かう幻住高校の水着規定とか知らないけど、どんな水着を選べば良いのだろうか? 

オレはとりあえず訊いてみた。

キモいと思われても、ここは乗り越えなければならない質問だ。

女子の水着の規定を知らなくては、良いアドバイスもお勧めを選ぶ事も出来ない。

遠野さんはこう語る。


「そうですね。比較的運動神経の良いA組やB組はスクール水着を選ぶのですが、運動神経の無いC組やD組は、ビキニやワンピースなどの水着を選ぶ人が多いです。

もちろん、教師側から見てのクラス分けなので、犬神今日子さんや犬山公子さんなどの運動神経が良いC組の生徒もいます。

そういう人は、授業内容によって水着を変えているそうです。

私は運動神経が良くない方なので、ビキニやワンピースの水着を買いたいのですが……」


オレはそれを聞き、遠野さんに意見する。

確かに、遠野さんは鏡野真梨の様な運動神経は無いが、決して他の女子に運動神経が劣っているわけではない。

むしろ、化け物どもを除けば、運動神経は良い方に感じる。


オレが知っている中で、致命的に運動神経がないのはメアリーだけだ。

何とか運動神経がない事を誤魔化しているようだが、中学の三年間全く運動していない事は体力的にも付いて行くのがやっとの様だ。

それでいて、身体的なハンディを背負っている。

ちょくちょくさぼっているように見えるが、本当は身体が限界なんだ。

悪態を吐くから分かりにくいけど……。


メアリーと鏡野は、来週の土曜日オレと遠野さんのデートの時に、サメと一緒に泳ぐ体験をするという。

いろいろな意味で大丈夫だろうか? 

彼らを守る檻は用意されていないそうだ。特別な仕掛けにより、サメの動きを封じる対策がされているらしいが……。

オレがそんな心配をしていると、遠野さんと水霊みずちが水着を選別していた。


男はこういう時、滅茶苦茶暇である。

する事も無いし、携帯電話で遊んでいようかと思っていると、水着を持って欲しいと言われる。

女子から見ると、いろいろ手伝って欲しいみたいだ。


みんなも水着を買うデートの時は、水着を持ったり、試着室を確保したり、いろいろ積極的に動いてあげよう。

あまり積極的に動き過ぎるとキモいと言われるけど、全く動かなくても好感度は下がっていくものだ。


買い物かごを持ったり、女子が選んだ水着を持つなどの配慮程度なら、キモがられず、好感度を上げる事ができるぞ!

 遠野さんと水霊みずちは、ある程度の水着を確保すると、試着室に入って行った。

この時、男はすることないからと下手に離れるのは危険だ。


次の水着を取ってと命令されたり、この水着はどう? と訊いて来るからだ。

ここでいなくなると、大声で呼ばれる危険さえもある。

水着ショップで男性がいる事は、何となく恥ずかしい事なのに、容赦なく大声で呼ばれる為、更に肩身を狭くする。


出て行きたくても、出ていけない状況になるのだ。

女子には分からない感覚かもしれないが、店内にいる女子が、一瞬でもオレの方を見るのは、何となく気不味い。

十五歳の男子には、店員の視線でさえも痛く感じる物だ。


だから、絶対に試着室の前で待っていなければならないのだ。

何の助けも出来なくても……。

オレがそういう事を悟っていると、案の定水霊みずちがオレを呼ぶ。

小声でいるうちに対応したから良いが、それでも数人の女性がオレの方を見ていた。


 水霊みずちはスクール水着ではなく、遊びで着る水着を試着していた。

黒色ビキニなどのちょっと大人びた水着。

はっきり言って十四歳の妹が着るような水着じゃない。

そういうのを着るには、最低バスト80を超えていなければ厳しいだろう。

妹は、バスト75。後、二年は必要だ。オレはそう思いアドバイスする。


「まだそういう水着は早くないか? ワンピースタイプの方が似合うと思うぞ。

または、フリル付きのビキニ。それなら、中々似合うと思うが……」


「う、うるさいわね! 私もそう思っていたのよ! 

でも、ちょっと付けてみたくなるじゃない……。

えっと、白と水色のフリルか、ピンクと白のフリル、どっちが良いと思う?」


妹はツンデレになりながらも、萌え要素をアピールしてくれる。

正直、どっちでも良かったが、オレは妹が好みそうな色を選択する。

相手の好みが分かっていれば対処できる。


「お前は白と水色が好きだろ? 

なら、白と水色が良いよ。

似合っていると思うし、可愛いよ……。

ピンクと白も捨てがたいけど、お前にはちょっと合わないかな……」


「キモ! 可愛いとか言わないでよ!」


水霊みずちは照れながらも悪態を吐く。

遠野さんがいなければ、萌え要素など全く無く、『キモい、こっち見るな、死ね!』と本気で言って来る。

今の水霊みずちなら、将来は結婚できるだろうと安心感を覚えた。


昔の水霊みずちなら、このまま不良にならないかなと、本気で心配していたが、女の子らしい女の子と一緒にいると、ガサツな女の子でも女の子らしくなることが証明された。

このままツンデレ化し、オレを萌えさせてくれと密かに願っていた。

オレがそんな儚い願いを想像していると、遠野さんがオレを呼ぶ。

遠野さんはどんな水着を着ているのだろうか? 


オレは期待に胸を膨らませ、試着室の扉を開ける。

そこには、ツインテールを三つ編みにした紫色の髪の人魚マーメイドがいた。

ブラはしているが、パンツは穿いていない。

その人魚マーメイドは、座りながらオレに話しかけて来た。


「木霊君、私は髪型をツインテールの三つ編みにすると、人魚マーメイドになってしまうの。まだ慣れなくて美味く泳げないけど、訓練すれば美味く泳げるようになると思う。

ただ、この姿だと問題があって、パンツが穿けないの。

たとえ人間モードの時に穿いたとしても、姿が変わると自然に破れちゃうんだ。

だから、今はノーパンだよ。


相談というのは、このマーメイドモードに合う水着があるかどうかなんだけど……。

ワンピースタイプは、自分で試してアウトだったから、自然とビキニしかないんだけど……。

どうしたら良いかな?」


(とりあえず髪を解いて! 

ちゃんとノーパンかどうか確認しないと、対処のしようもないから……)


オレはそう言って、遠野さんの下半身を確認しようと考えるが、水霊みずちが後ろから見ていたので止める。

まあ、妹が見てなくても、勇気が無くて言えないんだけどね。

しかし、これは困った問題だ。


泳ぎがうまくなるマーメイドモードなのだろうが、陸上ではアザラシ程度の機動力しかない。

かといって、髪を解いて人間モードになるとノーパンになる。

プールやビーチ中の野郎の視線が一点に集まるのだ。


オレと二人切りの時なら全然問題ないけど、盛りの付いた男共の前に、自分の彼女をそんなあられもない姿で晒したくはない。オレは本気で考える。

何とか、マーメイドモードから人間モードに変化してもノーパンにならない水着があるかどうかを……。


マーメイドモードを諦めるという方法はあるが、それでは遠野さんの水泳能力が向上する事は無い。

人魚マーメイドにも優しい水着を捜す必要があるのだ。

しかし、オレには水着の知識など無い。


「うーん、このフリルのビキニは、上のブラは普通だけど、下のパンツは二重構造になっている。

パンツ部分は穿けないけど、フリルだけなら人魚マーメイド姿でも着用できると思うけど……」


これがオレの言える精一杯のアドバイスだった。

腰巻の様な部分だけなら、人魚マーメイドモードでも破れずに穿けて、人間モードでも上と横は守られる。

下から見たら一発でノーパンだとばれるが、これが苦渋の選択だった。


「やっぱり、そのスタイルの水着しか穿けないよね……。

下から見えちゃうけど、仕方ないよね……」


遠野さんは、白と紫のフリル付きビキニを選択チョイスする。

パンツは着用しないが、腰に巻くタイプで下半身を何とか守る事にした。

人間モードなら可愛いと感じるが、人魚マーメイドモードだと違和感がある。


しかし、これが最善の選択だった。

他に良い物も見当たらない。

仕方なくそれを買い、オレ達は市民プールへ向かう。

せめて、男性客が少なければ良いのだがと思いつつ、市民プールに辿り着いた。


 六月の中旬はまだそんなに暑くないので、幸運な事に男性客は少ない。

数人はいるが、場所を離れれば、たとえノーパンでも気付かれない。

遠野さんは早速買って来た水着を穿き、人魚マーメイドモードになる。

完全に変身してから、オレと合流して泳ぐ事にした。


遠野さんはノーパンだが、人魚姿ならオレでも直視できる。

魚の尾ヒレ部分は、意外と大きく、イルカと同じ大きさと形だった。

ちょっと動くだけでも水圧で弾かれそうになる。

これが全力で泳ぎに使われた場合、相当な速度をほこる事になるだろう。

オレは少し不安になった。


遠野さんは以前に、ハーピーモードになって空を飛んだ事がある。

しかし、その後は疲労で動けなくなり、オレのマッサージが必要になった。

今回はそんな危険は無いのだろうか? 

さすがに、二、三時間のマッサージは辛いから覚悟が必要だ。


「イルカのヒレで泳ぐのは疲れないかな?

また足のマッサージが必要かな?」


「ごめん。やっぱり少しは疲労すると思う。

普段使っている部分だからそれほど辛くは無いけど、マッサージはして欲しい。

一時間くらいなら良いかな?」


遠野さんはそう言って、上目遣いで訊く。この状況で嫌とは言えなかった。


「分かったよ。オレの家で、一時間くらいマッサージするよ。何なら泊まっていく?」


「うん、ありがとう!」


遠野さんがそう言って笑顔で答えると、水霊みずちが怒り口調で言う。


「ちょっと、私もマッサージしてよね!」


妹がツンデレになっていた。

オレの望み通りの展開だ。

おそらく普段はどうでも良い兄貴だと思っていたが、他の女の子と仲良くしているとイライラするのだろう。

妹の表情が可愛いので、ちょっとくらい苦しくても、二人ともマッサージしてやろうという気になる。

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