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幻獣少女えるふ&幻獣になった僕 長編用  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第一章 カプリコーンと魔術師(マジシャン)の卵
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第一話 事件発生と最初のメール

 オレはとりあえず勇気を持って話しかける事にする。新しい携帯電話スマートフォンを買ってもらうには、女の子のメールアドレスが必須条件だ。別に男の子でも友達ができれば買ってくれるだろうが、彼女ができたという時のお母さんの反応は全然違う。


 機種本体だけでなく、オプション(カッコいいカバーとか、パワーバンク等)まで付けてくれるだろう。いずれは家に連れて来る約束もするだろうから、とりあえず気軽に声をかけられるくらいの女の子が望ましい。今、隣の席の女子の遠野えるふちゃんは、反応が微妙な感じだ。


 クラスのメンバーが集まって来ているにもかかわらず、まるで存在しないかのように近付く事も、クラスの誰かから話しかけられる事も無い。ずっと一心に、マニアックなミステリーの本を読み続けているのだ。まあ、美少女というのは、近付きにくい存在だから一人でいてもおかしくはない。


 男子は声をかける勇気が持てず、女子は自分と比べられるのを恐れて近付こうとしない。確かに、美少女でも、傲慢なタイプだと友達になりたくはない。せめて、オレの質問に受け答えしてくれるくらいの女の子でなければ、家に呼ぶ事は出来ないだろう。


 果たして、隣でずっと本を読んでいる遠野えるふの反応はどうだろうか? 普通に考えて、声をかけてもその様子だと、彼女はオレに興味さえもないだろう。同性の女子でさえ、一言二言しか話が続かないようだ。何か、話すきっかけが欲しいと思って、彼女を見る。


 オレと彼女の接点は、隣に座っている事と最新の携帯電話iPhoneに興味があるという事だけだ。彼女が時間を確認する時に、携帯電話を取り出すのを見ていた。まさか、オレの欲しい最新スマホのiPhoneを持っているとは思わなかった。これで、何とか話しかけるネタはできた。


 話しかけるならやはり、あの話題しかないか……。オレは話しかける勇気を奮い起した。彼女がスマホを取り出した瞬間、オレは話しかける。


「それ、最新の携帯電話iPhoneだよね。使い易さとか、持ち運び易さとか、調子はどうかな? オレもそういうのが良いんだけど、まだこの携帯電話(ガラパゴス携帯)を使っているんだよ。新しく買い替えたいから、みんなに訊いているんだけど……」


 こう言えば、みんな何かしらの反応はしてくれる。さて、最新の携帯電話iPhoneの調子はどうかな? 絶対使い易いに決まっているけど……。


「あ、最新だったんだ……。私、お姉さんから譲ってもらっただけだから、全然分かんないんだけど……。文字の見易さは良いかな。操作機能とかはあんまり使ってないんだけど。だから、そんなに感想も言えないよ……」


「え? それ、昨日出たばっかりの最新式でしょ? お姉さんはそういう仕事をしているの? 携帯電話関連の仕事でもしているの?」


「うん、なんかバイトで携帯電話の不具合とかをチェックしているみたい。この携帯電話もすでに一ヶ月くらいは使われている物なんだよ。私は機械に疎いから、電話機能やメールが読めれば、それで良いんだけど……」


 何という好都合。お姉さんと知り合いたいという理由ができた。携帯電話の使い易さや欠点を教えてくれるアドバイザーは、貴重な存在だろう。クレイマーのような感じは嫌われるが、顧客として親切に教えてくれるのは喜ばれるのだ。特定の顧客が付くというだけでも、この業界にはプラスになるのだ。


「じゃあ、オレ、キミのお姉さんに会いたいんだけど……。駄目かな? いろいろ最新の携帯電話の事とか聞きたいんだけど……」


「え? 今、通話の出来ない所にいるらしいから無理だよ。お母さんなら会えるけど……。ただ、機械の事には疎いよ。怒ると、携帯電話をすぐにフリーズ(凍らせる)させちゃうし……」


結構危険クレイジーなお母さんだな……。まあ、いいや。キミの携帯電話の番号を教えてよ。連絡取れるようになった方が、宿題とか連絡網とか便利でしょ? 実は、まだそんなに友達がいないんだよ。男友達とかは、宿題とか連絡とかに疎いし……。女子の友達が欲しかったんだ!」


「ええ? 私、連絡するのが苦手なんだけど……。あんまりメールは得意じゃないけど……。誤字とかすぐに打っちゃうし。返事が遅い時とかもあるから、他の子にした方が良いんじゃないかな……。友達付き合いも苦手だし……」


(危ない、危ない! なんか警戒されているぞ!確かに、何割かはいかがわしい動機も含まれているけど、オレは純粋にキミと知り合いたいんだ。頼む、電話番号を交換してくれ!)


 オレは、願うように彼女の興味を引く事を探した。


「後、キミの名前が気に入ったからだよ。ほら、えるふって幻獣の名前でしょ? オレの名前も幻獣の名前だし……。幻住高校で、幻獣の名前を持った生徒の番号を知っておきたいのは、当然の事だよ。キミも欲しくない?」


 彼女は、一瞬本気でオレの名前を確認する。オレは、他の幻獣の名前とかは疎いけど、自分の名前くらいは紹介出来るように、木霊という幻獣の名前を知っていた。彼女は初めてオレに関心を持ったようで、じっとオレの顔と名前を見比べる。顔と名前を覚えようとしているのだろうか?


「木霊君か。うん、欲しい!でも、あんまり連絡はできないよ。ごめんね……」


「良いよ。一言返信でも……」


 遠野えるふと電話番号を交換した。最初は乗り気じゃなかった彼女もオレの名前で交換する事を決めたようだ。良かった、これで最新式の携帯電話iPhoneを手に入れる事ができる。遠野さんも割と話易い子で良かったよ。そう思ってしばらく遠野さんを見ていたが、自分から積極的に話かけに行くタイプではなかった。


 まあ、初日だし、緊張しているのかもしれない。オレは、さすがに女の子の携帯番号だけではまずいので、男友達の番号を数件登録した。よし、今日は早く帰って、携帯電話を買いに行くぞ!オレは学校が終わると、走って帰る事にした。


 細心のiPhoneが手に入ったら、今日は興奮して眠れないぜ! オレは今日の出来事を母親に話し、父親とうまく交渉して、ついに最新携帯電話iPhoneを手に入れる事が約束された。女の子の携帯番号を手に入れた事を知ったお母さんの興奮度もやばいくらいだった。


「きゃあああ! ついに彼女ができたのね!水霊みずちちゃんはいるけど、あんまり女の子って感じはしなかったし、ついに念願の娘候補ができるのね!」


 オレには、兄と妹がいる。兄は彼女等作らない奇術バカだし、妹はとても女とは思えない機械バカだ。オレも父親の影響で魔法マジックバカだが、二人ほど飛び抜けたものではない。多少羨ましくも感じ、多少蔑んでもいた。彼女ができたことで、母親が喜んでいるから嬉しかった。


 まあ、本当に付き合うかどうかは知らないけど……。最新携帯電話iPhoneを手に入れる条件として、父親の職場から魔法道具マジックアイテムを持って帰って来ることが条件だった。オレの家は、お母さんの知り合いの家を借りている。かなり大きいお屋敷で、庭は歩いて五分ほどかかる。


 庭の一部を父親のアトリエにしているため、魔法道具マジックアイテムを掃除する時などは回収する必要があるのだ。それはほとんどオレの仕事だった。


(ふっ、最新携帯電話iPhoneを手に入れるためなら易い条件だ)


 オレは夕食を終えてから、父親の仕事場を一、二回ほど往復する。歩いて五分ほどの距離だが、全然疲れを感じない。荷物を運び終えて、オレは走って屋敷を飛び出していった。家から道を出ようと確認した時、回収し忘れた魔法道具マジックアイテムを見付ける。


「まあ、このくらいならポケットに入れておけば良いか。さあ、ついに最新携帯電話iPhoneとのご対面だ!」


 オレは走って携帯電話ショップへと向かう。もうすぐ携帯電話ショップが閉まってしまう時間帯に近づいていた。その為、全力疾走で目的の場所まで向かう。


 あまりにも急いでいたので、高校の制服のままだ。まあ、学生割引があるからこのままの方がいいだろう。最寄りの携帯ショップに行き、最新機種を手に入れる事ができた。


(ふっ、まずは友達のいない遠野さんに感謝の連絡でもしてやるか!)


 そう思って最新携帯iPhoneを弄りながら歩いて帰る。すると、女性とぶつかってしまった。走っていた相手に勢いがあり、二人とも派手に転ぶ。オレは咄嗟に、最新携帯電話iPhoneが無事なのを確認する。さすがに、買ってすぐで壊したくは無い。


 最新携帯電話iPhoneが無事なのを確認すると、女性の無事を確認し謝る。人としては最低かもしれないが、若者は自分の欲求に忠実に従うのだ。


「すいません、よそ見をしていて……。お怪我は無いですか?」


「私の方こそすいません。急いでいたもので……」


 女性は花粉症のせいか、ちょっと変な声だった。見た所、だいたい三十台前後、スーツ姿の似合う女性だった。遠野さんより背が高く、オレと同じくらいの高さだった。全く気が付かなかったが、オレは倒れた拍子に魔法道具マジックアイテムを落としてしまったようだ。カランカランという音が鳴り響いていた。


 その女性が、オレが落とした魔法道具マジックアイテムをすぐに拾ってくれる。見た目は恐ろしい物だったが、持って見て安全を確認したのだろう。怖がる様子も無く、普通に手渡してくれた。


「あの、落としましたよ……」


「ありがとうございます」


 オレは魔法道具マジックアイテムを無造作にポケットに押し込んだ。


「ああ、やっぱり玩具でしたか……」


 オレの落とした物に驚いたようだが、正体を知って拍子抜けした感じだ。まあ、見た目は本物のナイフの様だから仕方ないね。刃先を慎重に扱って拾ってくれたが、重さがないのでホッとした様子だ。そう、これも手品道具の一つ『ギミックナイフ』だ。


 警察が見たら職質されるかもしれないが、触って見れば偽物と気が付く。後ろで何も知らない女子高生が脅えて逃げる声を聞いたが、オレは無視して帰る事にした。演劇の練習でも見たと思って忘れてくれ!オレは足早に家に帰り、最新携帯電話iPhoneを触ってみる事にした。


(うーむ、やはり調子が全然違う!最新の無料ゲームもダウンロードし放題だし、アニメも見放題だ! ガラパゴス携帯しか触った事のないオレだから、他のスマートフォンとどう違うかは分からないけどな)


 そう思っていじっていると、遠野さんの事を思い出す。確かに、人に携帯電話の性能や調子を訊かれても、違いなんて分からない。遠野さんの顔を思い浮かべてメールをしてみた。メールは苦手みたいだけど、返事は来るのかな?


「最新のiPhoneを買えたよ。電話番号はそのままだから、連絡先を変える必要はないよ。また明日よろしく!」


 こう送ってしばらくすると返事が来た。


「うん」


 本当に一言しかメールして来ない。


(まあ、返事が来るだけマシか。妹や兄なんて、完全に無視だからな)


 オレは携帯電話をいじくっていたら、いつの間にか夜中の二時を過ぎていた。若者なら誰でも経験があると思うが、こういう時は一時間が十分くらいに感じられるのだ。時計を見て、さすがに寝ないとやばいと感じ眠りに就く。明日はどんな事があるのだろうか? 


 いずれは、遠野さんを家に呼ばないといけないと思いながら眠りに就いた。あまり笑顔で人に接するタイプの子ではなかった。オレと話している時も愛想笑いで、本当に喜んでいる様子ではなかった。なんとなく人を避けている感じがする。彼女の本当の笑顔が見てみたいなと考えながら眠る。

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