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幻獣少女えるふ&幻獣になった僕 長編用  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第一章 カプリコーンと魔術師(マジシャン)の卵
1/88

プロローグ

「見たね?」


彼女が自分の綺麗な黒髪を掴むと、髪の毛が赤くなり始め、耳の形が変わっていく。


凛とした表情に、人間を小馬鹿にしたような傲慢な態度。


これって、昔話に出て来る幻獣のエルフの特徴とそっくりだ。


オレが彼女に認めていると、ぷるんとしたピンクの唇が動き出した。


「私の秘密を知った以上、あなたを自由にさせる事は出来ないわ。

ブタ箱に行くか、私と付き合って監視されるか選びなさい!」


赤く光る野生の瞳が、オレを怪しく挑発していた。


事件の経緯と彼女の正体をこれから明かしていこう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


オレの名前は轟木霊とどろきこだま


幻住高校に入学する普通の高校一年生だ。


変わっているところはどこかと言われれば、マジックができる事だろうか。


その技術のおかげでこの学校に入学できたようなものだ。


オレの通う高校はちょっと変わっていて、組を分けるのに幻獣の名前を使っている。


建物自体も西洋風のお城のような感じなので、別に違和感は感じない。


白い壁に、赤い屋根や青い屋根、黄色い屋根の校舎がある。


所々に幻獣の彫刻像が配置されている。


理事長が相当の幻獣好きなのだろう。


オレの両親もこの学校の卒業生で、オレが誕生した事にも関係がある。


オレの両親はC組(カプリコーン組)で数十年前にこの学校の同じ組だったことから知り合ったそうだ。


その入学式の日に隣の席になり、徐々に付き合い始めたらしい。


仲の良い夫婦には良くあるノロケ話だ。


お互いを見つめ合いながら、エピソードを嬉しそう語る姿は、彼女のいないオレには拷問に近い時間と言えるだろう。


それでも少なからず影響を受けており、オレも学校に通う前から隣の席の女の子が気になる。


今日は高校生活初日の入学式で、クラスメイトさえ分かってはいない。


母親に早く学校に行くように勧められ、三十分ほど早く高校に着いた。


まだ学校にいる生徒は少なく、中学の頃からの知り合いも見当たらない。


オレが通う高校は、普通の高校と違い、特殊技能を持つ生徒が多い。


その為、知り合いも少ないのだが、それでも二人くらいはいるはずだ。


さすがに早く着き過ぎたと思い、母親の顔を思い浮かべる。


(全く、母さんは根が真面目過ぎて困るよ。

人の気も知らないで、遅刻するより早く着いた方が良いとよく言うよな。

この暇な時間をどうするんだよ……。


普通の生徒は、スマホで読書もできるが、オレの持つガラパゴス携帯ではマトモなゲームもできないんだぞ!

それにクラス分けの紙さえも張り出されていないんだぞ! 

休憩さえもできる場所が見当たらない)


そう思いながらも周りを見渡すと、数人ほどの生徒は早めに学校に来て、校舎付近に集まっている。


中学が同じ仲間同士なのだろうが、オレの中学出身は見当たらない。


オレと同じ境遇なのか、一人の女子高生は本を読んでくつろいでいる。


木の木陰に座り、iPadの読書アプリを読んでいる姿に思わず見入ってしまう。


(まあ、母さんみたいに根が真面目そうな女子高生もいるモノだな。

遅刻しないようにと朝早く家を出て、空いたその無駄な時間を利用して読書をしている。

母さんみたいに髪が長いけど、髪の色は黒で清楚系のような感じだ。


ロングヘアーだからどこか大人びて見えるけど、同い年だろうな……。

しかし、木陰で読書している姿が凄い似合うよ。

iPadじゃないほうが、幻想的では萌えるんだろうな)


一心に本を読んで頭良さそうだと感じたが、読んでいる本(iPadを本代わりにしているけど)を確認して見る。


彼女に近づき、何を読んでいるのか見つめていると、彼女がオレの存在に気付いて顔を上げた。


誰もいない事を前提に読んでいたのだろう。


足音など人が近づく気配に物凄く敏感だった。


古本屋では立ち読みできないタイプの女の子のようだ。


人の目が気になるのは、オレも同じだ。


「何を読んでいるの?」


「えっと、幻獣の図鑑とか、都市伝説などです。

時間がある時は、ミステリー小説などを読みます。


そんなに有名な小説は読んでないので、オススメする事はできません。

ごめんなさい……」


「いや、こちらこそ、突然呼び止めてごめん。

この学校には、幻獣の彫刻像などが立っているから調べていたのかな?

オレには、どれがどれかも分からないけど……」


「あ、その辺は一応全て調べてあります。

有名な幻獣なので、一般人にも知っている人は多いですよ。


私としては、最近妖怪にハマっていますね。

西洋の幻獣とは違い、規模は大きくないですが、恐怖を誘うような内容が多いです。

日本人は、人間型の幻獣が好きなようです」


「そうなんだ。

地域によっても幻獣に違いがあるんだね。

僕は、この学校にある幻獣とかも知らないから、教えてくれたら嬉しいけど……」


「はい、分かりました。

あちらにある幻獣の彫刻像は、ギリシャ神話に登場する怪物『ミノタウルス』です。


人間の体に牡牛の頭を持っていますが、実は本当に人間と牡牛の子供なのです。

凶暴で暴れる怪物だった為、迷路ラビリンスに閉じ込められていました。

幻獣といえば、この怪物というくらい有名な怪物です!」


彼女は、自分の記憶を頼りに分かりやすく説明してくれた。


最新のiPadを使っている所を見ると、相当のお嬢様のようだ。


オレの携帯電話(ガラパゴス携帯電話)と交換して欲しいくらいだよ。


そう思って見ていると、次第に教師達が集まって来た。


彼女は、教師の姿を見かけると、すぐにクラスを確認しに行く。


オレから逃げるように、簡単な挨拶をして別れた。


折角仲良くなれそうだったのに、電話番号やメールアドレスなども聞いていない。


オレは仕方なくクラス割を確認して、自分のクラスに移動した。


まずは、隣の席の女の子を確認して、うまくいけば携帯番号を教えてもらおうと考えていた。


もしも彼女ができたら、オレもお父さんに頼んで最新型の携帯スマートフォンを買ってもらう予定だ。


お父さんは真面目で厳粛な父だが、お母さんには甘い。


お母さんを通して頼み込めば、大抵の事は聞いてくれるのだ。


まあ、彼女ができなかったら、母さんも興味を持ってくれないのだけど……。


母さんは、オレが高校に入学する年齢になると、女の子らしい彼女を作りなさいと勧めてくる。


オレも普通に可愛い彼女が欲しい。


オレの両親は高校時代に仲良くなって、そのまま結婚したから、オレもそういう感じの彼女が作りたいと思う。


そう、高校生活を楽しくするのに、彼女は必要なのだ。


そして、一番近づき易い隣の席の子は美少女である事が望ましいのだ。


クラス表が張り出され、オレはドキドキしながら組を確認する。


オレの組も両親と同じC組(カプリコーン組)だった。


そして、隣の席の名前もついでに確認する。


普通の男子なら隣の席の女子も気になるだろう。


彼女の名前を見ると、遠野えるふ(とおのえるふ)。


この名字なら、隣の席になるのも無理は無いなと納得する。


名前もえるふで、いかにも幻獣好きそうな名だ。


まさか、オレと同じように幻獣の名前を持っているとは驚きだった。


これは、なんとなく期待を抱いてしまう。


クラスに一番乗りと思って教室に入ると、すでに先客がいた。


しかも、オレの隣の席に座っている女の子だ。


オレが期待していた隣の席の美少女は、さっきのiPadを持っていた幻獣とファンタジーを愛する少女だった。


美少女なのは良いが、変な奴じゃない事を願っていた。


まあ、さっきそれなりに仲良くなっていたから、問題はないだろう。


オレの好みのタイプかどうかはともかく、名前だけは一瞬で覚えた。


遠野えるふちゃんか……。


付き合いやすい子なら良いけどな。


カラオケとか、食事に誘っても頑なに来ない子もいるからね。


そう思って、彼女の横顔をしばし見ていた。


彼女はずっとiPadで、マニアックなミステリーの本を読み続けている。


今度は、オレが隣に座っても気にしていないようだった。

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