舞園梓――応援するから、壁をぶち破って。
乗り越えられないほどに高く聳えた、とても巨大な壁。
首が痛むほどでっかくて、どんなに足掻きながら登ろうとしても、結局頂上までは辿り着けなさそう……。
生きていれば誰だって、一度は見たことがあると思うんだ。乗り越えたいけど、乗り越えられそうにない、未来への壁を……。
だけどさ、そんな壁は、乗り越えなくていいんだよ?
乗り越えられないなら、ぶち破ればいいんだ。
正面からぶつかって、
倒されたってまた立ち上がって、
何度も本気で体当たりしていけば、
きっと閉ざされた道は開けると思うんだ。
不器用な私が考えた……いや、教わった、大きな苦難への対処法だよ。
ただ、それに必要なのは、実は力じゃないと思うんだ。
力だけで壁を破壊できると思ったら、大きな勘違いだ。
ストレートばっかり投げてた私だって、実際にそう感じたしさ……。
壁にぶつかる原動力とは何か?
きっとそれはね、誰かの支えなんだと、私は個人的に思ってる。
後ろで応援してくれる人がいるから、人は不思議とボロボロな足で立って、もうズタズタな身体でもアタックしていけるから。
……え? 壁が分厚いからムリ?
結局跳ね返され続けるから、絶対に不可能?
……フフ。
笑ったりしてゴメン。もちろん悪気はない。
でもさ、それはおかしいよ。
君の言ってること。
だってさ、
――真正面にある壁の厚みなんて、わかるわけないじゃん。
スカイツリーみたいに巨大だけど、奥行きなんて見えないんだからさ。
確かに、壁は分厚いかもしれない。
けれど、“かもしれない”の予想でしかないんだから、分厚いと決めつけてはいけないよ。
きっとそれは、君の不安が放つ幻影だって。
怖いよね、大きな壁に向かっていくのは……。
でも、大丈夫。
私が後ろから、君の支えになるから。
凛々しい君の背中に、エールを送り続けるから。
倒れそうになったら、すぐに抱えにいくから。
ずっと応援してるよ、君が壁をぶち破る瞬間まで。
あとは君が、未来への覚悟を決めるだけさ。
――ピッチャー 舞園梓。背番号11