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つきづき!(仮)  作者: 春雨
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2章⑲

「が、ん、ば、れ…っと。送信!」

「送れた?」

「うん!これでオッケー!」

「ありがとう。これでどうなるか、だな」

「そうだねー。せっかくここまでお膳立てしてあげたんだから頑張れよ将也!」

 ここにはいない親友に向かって激を送る三枝。確かに、あいつには頑張ってほしい。

 俺たち二人は、将也たちがアトラクションの中に入った後場所を変え、少し離れたところにある休憩所で今回のメインミッション達成のための手回しをしていた。

「まあ大丈夫だろ。あの二人、さっきの勝負で結構仲良くなってたみたいだし。将也はやるときはやるやつだからな」

「まあねー。将也と美月ちゃんってきっかけさえあればすぐ仲良くなれると思うんだよね」

 特に心配してなさそうな調子で言う三枝。

「そうなのか?」

「うん。滝本君はそう思わない?」

「うーん。あいつとはまだ半年の付き合いだし、その半年の様子を見てるとな」

 これまでの将也は、避けてるんじゃないかと思うくらい女の子への耐性がない様子だった。まあ、思春期を迎えた男子ならそういうやつもいるんじゃないかとは思うが、それにしたって行き過ぎてるんじゃないかと思うことがままあった。

「えーなになに?どんな様子だったの?」

「あいつの尊厳のために黙秘させていただきます」

 三枝に話すと半年はからかわれそうだからな。流石に本人の了承なしには話さない方がいいよな。

 しかし、こうなると気になるのは将也と三枝の関係だ。女の子に耐性がない将也の三枝への接し方はかなり特殊なように感じる。あいつは三枝のことを家族のようなもんだと言っていたが…

「そういえば、三枝と将也は中学校からの付き合いなんだっけ?」

「え?うん、そうだよ。小学校は別で、中学から同じになったんだよね」

「中学時代のあいつはどうだった?そのころも女の子が苦手だった?」

「うーん…あんまりそう感じたことはなかったけどなー。この前聞かされてびっくりしたくらいだし」

 過去の記憶をたどろうとしているのか、腕を組みうなる三枝。

「あ、でも確かに将也が私以外の女の子と話したり遊んだりしてるところ、あんまり見たことないかも」

「なるほど…三枝以外の女の子とは交流がなかったのか…?」

 そうなるとやはり三枝との関係は不思議だよな。

「三枝と将也はどうやって仲良くなったんだ?」

「え?…うーんどうだろう…」

 またもうんうんとうなり考え込む三枝。まあどうやって友達になったとか、よっぽど衝撃的でもない限りは覚えてないよな。

「だめだー思い出せない…あたしが将也を引っ張りまわしてる記憶しか出てこない」

「…なるほどね」

 思わず笑ってしまう。恐らく三枝の強引さ…ゴホンッ明るさで心の壁を突破したのかもしれないな。それが将也にとって良かったのかは…今の関係を見れば明らかだろう。

「ちょっとー。なんで笑うのー?」

「ごめんごめん。いや、いい関係だなと思ってさ。気の置けない関係というか」

「そう?」

「そうそう。ちなみに、将也と付き合ったり…みたいな話になったことはないのか?」

「お?いきなり恋バナとは攻め込んできますねー滝本君」

「まあね、こういう機会でもないと聞けそうもないし」

 最初二人の関係性を見たときは、これで付き合ってないのはおかしいんじゃないかと思ったもんだ。過去に一度もそういう話がなかったのか?

「将也とかー。正直なところあたし自身あんまり恋愛に興味がないというか、今までそういうことを考えたことがないんだよね。今は他にやりたいこともあるし!」

「へー、他にやりたいことって?」

「音楽をもっともっと楽しみたいし、色んなことにもチャレンジしてみたい!バンジージャンプとか!」

「バンジージャンプとはまたすごいね…」

「だから将也と付き合うとか考えたことなかったなー」

 と、屈託のない笑顔で言う三枝。将也が言っていたように、二人は良くも悪くも家族みたいな関係性になっているのかもな。

「そうか。ちぇー、あいつの春はまだ先かな」

「あはは!何それ、滝本君なに目線?」

「そりゃあ親目線ですよ。将也の今後が心配で心配で」

「あははは!じゃああたしたち二人で見守ってあげますか!」

「そうだな。…ちなみにあの二人はどうだと思う?」

「え?」

「将也と成瀬。三枝もこうやってお膳立てして仲良くさせようとしてるわけだし、上手くいけばそういう関係になるかもしれないだろ?」

 三枝自身も将也と成瀬はすぐ仲良くなれそうと言っていたし、二人が付き合う可能性も低くはないんじゃないだろうか。

「…そっか。将也と美月ちゃんが…」

 俺の言ったことに面食らったのか、急に思案顔になる三枝。二人が付き合うまでいくことは考えていなかったんだろうか。それにしてもこの反応は…

「…まあ、それはそれでいいんじゃないかな!二人をからかえるし!」

 そう言いこちらを向いた笑顔からは、真意を読み取ることはできなかった。

「よし!せっかく遊園地に来てるのにアトラクションに乗らないのはもったいないし、そろそろ行こっか!滝本君!付き合ってもらうよ!」

「了解。…なかなか大変なことになりそうだな。将也、頑張れよ」

 仕切り直すように言い休憩所を出ていく彼女の後姿を見ながら、俺はこれからの親友の奮闘にそっとエールを送るのであった。


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