2章⑪
順番が回ってきてそれぞれのチームに分かれて乗り込んだ俺たち。そこまでは何の問題もなかったのに…まさかこんなトラップが仕掛けられているとは思わなかった。想像力の足りないちょっと前の俺を罵ってやりたいぜ…
「土田君、まずスタートは敵が右から流れてくるわ。まあ最初は敵の出現数が少ないから大丈夫だと思うけど」
「う、うん」
成瀬さんは俺が焦っていることなど気づくこともなく攻略法について語っている。この緊急事態、気づいているのは俺だけなのか?
「中盤は敵の出現数が増えてくるけど、落ち着いて処理してね。焦って照準がズレて得点出来ないのが一番もったいないから」
「な、成程」
的確なアドバイスをしてくれているが、正直俺の頭の中はその問題のことでいっぱいで、内容が全く入ってこない。
…くっ!落ち着け俺!クールに!あくまでも冷静に!動揺したら負けだ!落ち着いて対策を練るんだ!
さっきから何が俺を悩ませているのかというと…
「終盤はもう見てから反応していても全ては倒しきれないから、倒せるものを確実に倒していくのよ。…聞いてるの土田君?」
「う、うん」
怪訝そうに問うてくる成瀬さんの方を向くと…
ほんのすぐ近くに、綺麗なお顔が!
近すぎるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
なにこれヤバイ!めちゃくちゃ近い!というか肩とか密着してるし!なんかすごいいい匂いがするし!やわらかいし!まったく集中出来ないし!こんなんあかんやつやん!
内心はかなり動揺し関西弁になりながらも、にやけ顔が出てこないように必死で太ももをつねる。
当の本人はというと、アトラクションに集中しているのか全く気にしている様子がない。良かった。これで「…え?ちょっと近いんだけど…やっぱり降りる」とか言われてたら俺の人生が終了してた。
「集中しなさい土田君。もうすぐ始まるわよ」
「りょ、了解…!」
落ち着け俺。たかが密着しているくらいで何をそんなに動揺することがある。今はそんなことよりも大事なことがあるだろ!成瀬さんがこんなにも本気になっているのに、俺のせいで負けたら目も当てられないぞ!集中しろ!為せば成る!為さねば成らぬ何事も!どうした俺!大丈夫か!
《待ちくたびれたぞ見習いトレジャーハンターたち!それじゃあ、ロマンを求めてしゅっぱぁーつ!!》
勝負の開始を告げるセリフが流れる。
「いくよ…!成瀬さん!」
「ええ!」
この状況を力に変えるんだ土田将也!いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
☆ ☆ ☆
《ありがとう!君たちのおかげで洞窟の奥深くに眠る宝を手に入れることが出来たよ!君たちは立派なトレジャーハンターだ!》
1P(仁美) 8652
2P(光希) 5911
3P(成瀬) 8655
4P(俺) 5620
うん!負けちゃいました!テヘペロッ☆
「うそぉ!?私負けたの!?」
「おお、成瀬さんすごいな」
結果を見て驚愕する仁美。光希もかなり驚いているようだった。
「…わ、私の勝ちね」
疲弊しながらも満足げに言う成瀬さん。ドヤ顔可愛いです。
「お、ランキングに出てる。成瀬さん歴代2位だ!」
すごいな成瀬。この大記録を見てさすがに光希のテンションも上がっている。
「くやしいぃぃぃ!友達に負けたことなかったのに!…そ、そうか。あなたが私の終生の好敵手…!」
何を言うとるんだ仁美。
「それは、ちょっとよく分からないけど…」
若干仁美のノリについていけていない成瀬さん。仁美のノリについていけるのは小学校低学年くらいだから大丈夫だよ。
「2回目でいきなり歴代2位ってすごいね!いやぁいい勝負だった!じゃあ腹も減ったし昼ご飯でもt「待って」
この成瀬さんすごいムードを利用して颯爽と出口に向かおうとした俺の肩をガシッとつかむ仁美。
「ん?どうした仁美?」
努めて明るい声色で尋ねる俺。
「いやー良かった良かった」
「なにが?」
「勝負がチーム戦で」
「言ってる意味がよく分からないなー?」
頑張れ俺。多分まだいける…!
「滝本君」
「ん?」
「発表して!」
「了解。三枝さん、俺チーム14563点。成瀬さん、将也チーム14275点で俺たちの勝ちだね」
「将也、美月ちゃん罰ゲーム決定ー!!」
やっぱりダメかー。




