2章④
「着いたー!」
最寄り駅から電車で20分。今日の目的地は割と近くにあった。
鈴馬ハイランド。地元民にとっては言わずと知れた遊園地だ。何故かって?それは…
「いや〜ここに来るの久しぶりだね!」
「そうだな〜中ニのときに遊びに来たっけ?」
「そうそう!確かそうだった!」
「俺は小学校以来だな」
「あ、光希の学校でも行った?」
「そうそう、このへんの小学校は大体遠足で行くよな」
「だよな〜」
「行った行った!」
つまりはそういうことだ。この遊園地、この周辺の小学校なら大体遠足の目的地になる。しかも、駅降りてすぐだから遊びにも行きやすい。地域に親しまれた遊園地って感じだな。アトラクションもどこの遊園地にでもありそうなものがほとんどである。そういったこともあってお客は家族連れが多いって印象かな。
「…そういえば、あの子とも遊びに行ったんだったよな…」
「ん?将也どうしたの?」
「え?…ああいや、何でもない」
「そう?」
そう、みっちゃんと遊びに来たことがある。あの夢を見た後から、こうしてふと思い出すことがあるんだよな…
「…今日の目的地ってここだったのね…」
俺が物思いにふけっていると成瀬さんがそう呟いたのが聞こえた。え?
「成瀬さん、ここのこと知ってるの?」
「え?ええ、知っているけど、どうして?」
俺の唐突な質問に戸惑った様子だ。…今の呟き、来たことがあるような感じが…
「いや…だ、誰と来たのかなーって」
成瀬さんは高校入学のときにこの町に引っ越して来たはずだから、遊びに来たとしたら高校生のときってことになる。こんな言い方もなんだけど、高校生で家族と来るような遊園地でもないし…も、もしかして…
「そ、それは…」
「あ、もしかして美月ちゃん彼氏と遊びに来たとか!?」
仁美がぶっ込んだ!仁美さんはいつも真っ向勝負です。いや、俺も気になるけどすげぇな仁美さん!
「え!?か、彼氏なんていないわ!」
こちらをチラっと見ながら焦ったように否定する成瀬さん。焦った姿初めて見たわ。マジパネェっす仁美さん。
「え〜?美月ちゃん彼氏いないの?そんなに可愛いのに〜」
「それとこれとは話が別でしょ。か、彼氏なんかいるわけないじゃない」
少し顔を赤くしながらプイッとそっぽを向く。かわえぇ…
「じゃあ誰と来たの?」
「…こ、ここってサーキットが有名でしょ?だから、名前を聞いたことがあったのよ」
「あ〜成る程ね〜」
確かにここは一部の人には全国レベルの知名度を誇る。といってもここ、鈴馬ハイランドではなくその隣にある鈴馬サーキットがだ。俺はよく知らないが車とかレースが好きな人なら絶対知ってるんじゃないかな。むしろサーキットがメインで遊園地がおまけと言っても過言ではないレベル。成る程ね…
「…だってさ。良かったな将也」
「う、うるせ!」
ここぞとばかりに茶々を入れてくる光希。こいつ…遅刻した罰、覚えてろよ…
「よし!美月ちゃんに彼氏がいないことも分かったし、今日は楽しもー!」
よく分からない宣言をしつつ駆け出す仁美。そのときチラッと俺にアイコンタクトをとってきた。分かってますぜ仁美さん…
「ち、ちょっと三枝さん!」
駆け出した仁美を追いかけて行く成瀬さん。
「元気だな〜2人とも。俺たちも行くか」
「そうだな…」
「頑張れよ、将也」
「おう!」
光希に背中を押され決意を新たにする。よし!いっちょやったりますか!
俺は遊園地に向かう電車内て仁美に課せられたミッションを思い返したーーー




