2章③
ーーこうしていつものメンバー+成瀬さんというチームで遊びに行くことになったんだよな。
え?デートじゃないだろって?
一つ言っておこう。男が女の子と一緒に出かけたら、それはもうデートと称して差し支えないはずだと!!
え?一対一じゃないだろって?
みんなは知っているはずだ……ダブルデートなる言葉があることを…!
…まあカップルが1組もいないのは誤差だよね、誤差!
…と、とにかく!成瀬さんと遊園地に遊びに行くということだけは確かなんだ!それだけで俺はもう万全な体制でもってことにあたらなければならないのは自明の理!集合場所にも誰よりも早く来るのが当然ってもんさ!
まだかな…みんな…
約束の時間まではまだまだ余裕があったーーー
☆ ☆ ☆
「おーい!まーくん!お待たせー!」
それからしばらく1人でドキドキしながら待っていると聞き慣れた声が聞こえてきた。声のする方を向くと、仁美が元気よく駆け寄って来るのが目に入った。今日もポニーテールがキマッてますねぇ…いいですねぇ…
「おーす、仁美。はやいな」
時刻は集合時間の10分前。こういうところはちゃんとしてるんだよな仁美って。
「いや、まーくんのがはやいでしよ!いつ来たの?」
「えーっと、1時間くらい前かな」
「はや!なんでそんなにはやいの!?」
「…こういうときは誰よりもはやくいたいからな!みんなを悠然と待ち構えるって言うのがかっこいいんだよ」
本当は緊張して起きるのがはやすぎたからなんて言えない…
「どうせ美月ちゃんと遊ぶってんで、ちゃんと寝れなかっただけじゃないの?」
「お前はエスパーか!?」
こいつに嘘はつけないのか…?恐いよこの子!
「当たった?そんなに気負わなくてもいいと思うけど、ただ一緒に遊びに行くだけなんだから」
「まあ、分かってはいるんだけどな…」
頭では理解していてもどうにもならないことってあるよね…
「今日は別に一対一って訳じゃないし、私もちゃんとフォローするから、まーくんは何にも気にせずに美月ちゃんと仲良くなりなさい!」
「ひ、仁美…」
こいつはなんていいやつなんだ…!
「仁美さんかっけぇ!よ!姉御!」
「えっへん!」
ドヤッ!と胸を張ってふんぞり返る仁美。あんまり、迫力が、ありません…やっぱりむn
「まーくん…?」
「ヒューヒュー!ヒトミサンマジアコガレマス!」
危ない危ない…こいつと話すときは気をつけないとな…
「というか仁美」
「ん?」
「成瀬さんの前でまーくんって呼ぶなよ?」
「あー…あははっ!気をつけまーす!」
ったく…なんで頑なにまーくん呼びをしたがるのか…
「んーそろそろ集合時間だけど、滝本君と美月ちゃんはそろそろ来るかな?」
時計を確認するとちょうど時間になりそうだった。
「あ!美月ちゃん来た!おーい!」
「…!」
その言葉に一気に身構えてしまう俺。つ、ついに成瀬さんが!
仁美が呼びかけている方を向くとそこにはーー天使がいた。
「三枝さん、土田君。おはよう、はやいわね」
「……」
「おはよう美月ちゃん!待ち合わせ時間ピッタリだね!」
「ええ、そうみたいね。良かったわ間に合って。待たせてしまったかしら?」
「……」
「全然待ってないよー!私もついさっき来たばっかだし。あ、でも将也はーーって将也?」
「……」
「将也ー?」
「……」
「将也!」
「ファッ!?ど、どうした仁美?」
「こっちが聞きたいよ!いきなりぼーっとしてどうしたの?」
あ、あれ、俺ぼーっとしてた?
「あ、あーごめんごめん。おはよう成瀬、さん」
「ええ、おはよう」
「もー、寝ぼけてるんじゃないの?聞いてよ美月ちゃん、将也ってば今日ーー」
俺のことは気にせず成瀬さんと話始める仁美。いや、でもぼーっとしてしまうのは仕方ないと言いたい。それほど私服姿の成瀬さんは素晴らしかった。
淡い色のワンピースで清楚さを演出させつつ下にパンツを組み合わせてスタイリッシュさを醸し出している。美しいという単語が似合う成瀬さんにピッタリのファッションだ!いつもの制服姿もいいけど私服も最高だね!
ちなみに仁美は明るめの色を中心として、下はホットパンツに近い短めのパンツ。仁美の元気よさがよく現れているファッションだ。素晴らしい!っていうか俺語彙力無さスギィ!
とにかく!成瀬さんの格好が美しすぎる!
「土田君」
「…あ!ど、どうしたの成瀬さん?」
やばいやばい1人の世界に入り込んでしまってた…
「今日集合時間の1時間も前に来てたの?」
「うぇ!?」
「三枝さんがそう言ってたんだけど…」
仁美お前なんでそれを言っちゃうんだよ!
バッと仁美の方を見ると我関せずと言った面持ちで目を逸らしている。くそっ…後で覚えてろよ…
「そ、そうだね、なんか目が覚めちゃってさー。家にいても仕方ないしはやめに来ちゃったんだよね」
「そうなの。そんなに楽しみだったのかしら、遊園地」
「いやー、まあ、そう、だね…」
「ふふっ、子供みたいね」
「あはは…」
クスクスと笑う成瀬。俺は苦笑いを返すことしか出来ない。間違ってもあなたとお出かけするから緊張してるんですとは言えない…
「おはよう、なんか楽しそうだなみんな」
「あ、滝本君おはよ!」
と、やっと最後の1人の光希がやって来たようだ。
「遅いぞ光希!」
「おはよう滝本君」
「すまんすまん、ちょっと家出る前にごたごたしちまって」
「じゃあ遅れて来た罰として後で全員にジュース奢りな!」
「マジかよ…遅れて来たのは悪かったけど、5分くらいは見逃してくれよ」
ダメ。今俺は虫の居所が悪いからな。
「まあまあそういうのは向こうに行ってからにしよ!じゃあ出発ー!」
元気良く歩き出す仁美について行く俺たち3人。こうして仁美考案の成瀬さんと仲良くなろう作戦が開始されたのであった。




