2章①
「……」
ソワソワ…
「……」
ソワソワ…
「……」
ソワs「あああああ緊張するぅぅ!」
あ、皆さんごきげんよう。土田将也です。いきなりみっともない姿をみせてすいません。
現在土曜日の午前9時。俺は最寄り駅の改札前で、周りから見たら不審者と間違われかねないレベルで挙動不審な行動をとっていた。
しかし、俺は今そんなことを気にしている余裕は全くない。なんでかって?
そう、俺はこれから、
成瀬さんとデートするんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃぃぃぃぃいやっほぉぉぉい!!!
そりゃこんな幸せイベントが起こった日には早めに来て、ソワソワしながら待つに決まってるってもんですよ!
「といっても流石に1時間前っていうのは早すぎるか…」
今日の朝は何と5時起き。おじいちゃんか!あまりに早く起き過ぎて、家にいても余計に落ち着かないから出てきたんだけど…
「まあどのみち待つことになるのは変わらないよな」
しかしこのままのテンションでは、成瀬さんには高確率で冷たい目で見られてしまう…
気持ちを落ち着けるために、改めて俺は、こんな幸せイベントが起こるきっかけとなった出来事について振り返ることにしたーーー
☆ ☆ ☆
「ついに作戦開始する時がきたよ将也!」
「……は?」
「は?じゃないよ!なにすっとぼけた顔してんのさ!」
時は昼休み。光希といつものように昼飯を食べていた俺のもとに突然やってきたと思ったら意味不明なことを宣う仁美。正直訳が分からない。
……よし。
「…でさ。駅からちょっと離れたところにあるラーメン屋がマジで美味しいみたいなんだよ。今度行こうぜ」
「いや、ラーメン屋に行くのはいいんだが…いいのか?」
「いいのかってなにが?俺は何も見てないし何も聞いt「なーに無視してん…の!!」
グキィ!!
「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ヤバい!首から鳴っちゃいけない音がした!首が!首もげてない!?大丈夫!?
「っっってぇな仁美!なにするんだよ!」
「ふーんだ。将也が私を無視するのがいけないんですー。私は悪くありませんー」
こいつ…
「…そんなんだから胸も大きくなr
ガシィッ
「何か言った?」
「いえ、なんでもありませぬ」
おのれ…!俺の首を人質にとるとは卑怯な…!
「やっぱ仲良いよなーお前ら」
「これが仲良いように見えるお前は目をよく洗浄してこい」
これが仲良いだと?俺の生殺与奪が握られてんだぞ?
「本当だよ滝本君。将也は私に隷属してるだけなんだからね?」
「おい仁美さん。今お前なんて言った?俺ってお前の奴隷だったの?」
「アハハッ」
「アハハッじゃないよ!怖いよその乾いた笑い!」
こいつとは一度しっかりと話し合っておくべきだな…
「ははっ。まあ夫婦漫才は十分だから「誰が夫婦だ!」。それで?なにかこいつに用だった?」
「はぁ…んで?何の用だったんだ?なんか作戦開始とか聞こえたが」
「ほら、覚えてない?私が将也の女嫌いを治すための作戦を考えてあげるって」
「語弊がありすぎる!俺は女の子が嫌いなんじゃなくて、女の子と上手くコミュニケーションが取れないだけ!」
自分で言ってて悲しくなるな…
「しかも俺、もう既に改善されてきてるからな?」
「え?そうなの?」
真偽を確かめるように光希を見る仁美。
「こいつの話を信じるなら、そうらしいな。なんか水曜日にかなり成瀬と話せたんだと」
ちなみに今は金曜日だ。あの出来事から2日しか経っていないが、昨日今日とまだたどたどしさは残るものの、女子と比較的普通に話せるようになっていた(※当社比)。本当に成瀬さん様々だよ。
「ふーん…まあそんなことはどうでもいいんだよ!」
「いやどうでも良くないだろ!?むしろそれが一番重要だろ!」
「まあまあ。一回作戦内容を聞いてみなって。絶対私にひれ伏すことになるから」
いや、何が起ころうとお前にひれ伏すことはねえよ。
「分かったよ。とりあえず言ってみろ」
とりあえず俺は、仁美の作戦とやらを聞いてみることにした。




