プロローグ:おとぎ話
「お母さん、お話して」
4歳になったばかりの娘を寝かそうとしたら、こうせがまれた。
「いいわよ。何のお話がいいの?」
「妖精の女の子のお話。」
「また?彩音は本当にあのお話好きだね。」
「だって、お菓子おいしそうなんだもん。」
「そう。じゃあ彩音も一緒にお菓子をたべるお話にしようね。」
ある日、かわいい妖精の女の子が森にやってきました。
でも初めての場所。住む場所もありません。
「困ったな、どうしよう。」
道で出会ったオジさん妖精が女の子を言いました。
「ウチに来ませんか?温かくてフカフカのベッドがありますよ。」
女の子はオジさんに言いました。
「私、オジさんなんて嫌。若いカッコいい妖精がいいわ。」
でもオジさんは言いました。
「私が魔法で悲しいことを忘れさせてあげますよ。」
悲しいことばかりたくさん抱えていた女の子は
オジさんの魔法で楽しい思い出ばかりになって大喜び。
二人は仲良く暮らし始めました。
オジさんはとても優しかったので、女の子は
だんだんオジさんのことが好きになっていきました。
ある日、オジさんは悪いモンスターに襲われた女の子を
命がけで助けてくれました。
そしてとっても甘いお菓子を女の子に作ってくれました。
女の子はオジさん家でずっと暮らそうと心に決めました。
でもその日以来、オジさんはあまりお菓子を作ってくれません。
女の子が何度、お願いししても、オジさんは小さくて
あまり美味しくないお菓子しか作ってくれませんでした。
とうとう女の子はオジさんとケンカして家を
飛び出してしました。
女の子が泣きながら歩いているとハンサムな
男の子の妖精がやってきました。
「僕ならお菓子を作ってあげるよ。」
そう言ってたくさん作ってくれました。
女の子は大喜びで食べました。
「一人で食べるなんてズルいよ。僕にも作ってよ。」
女の子がマネして作ると男の子は大喜びで食べました。
二人はお腹一杯、お菓子を作って食べました。
「オジさんもこうしてくれたらよかったのに」
女の子はオジさんに腹を立てました。
お腹が一杯になった二人は眠くなりました。
「向かい合ってお互いに腕枕して寝よう。」
男の子に言われた女の子はとても驚きました。
「オジさんはいつも背中から抱っこしてくれたわ。」
女の子が言うと今度は男の子は驚きました。
「そんなことしたら腕も首も痛くなってしまう。
お菓子をこねることもできなくなってしまうよ。」
「オジさんはそんなことも知らなかったのかしら」
女の子はますますオジさんに腹を立てました。
でも女の子は気が付きました。
「いつも抱っこしてとお願いしていたのは私だわ。
腕枕してあげようなんて考えたことなかった。
きっと腕が痛くてお菓子を作れなかったんだわ。」
寂しくなりました。
もうオジさんが腕枕してもらえないと思ったら
悲しくなりました。
オジさんのお菓子をもう一度食べたくなって
とうとう泣き出してしまいました。
男の子は女の子のことが大好きだったので、
ずっと一緒にいたいと思っていました。
でも男の子には女の子の悲しいことを
忘れさせる魔法は使えませんでした。
仕方なく女の子をオジさんの家に帰すことにしました。
女の子は家に戻るとオジさんにこう言いました。
「向かい合ってお互いに腕枕して寝ましょう。
オジさんの腕が痛くなったら私が腕枕してあげます。」
腕が痛くなくなったオジさんは甘いお菓子を
たくさん作ってくれるようになりました。
女の子もたくさんのお菓子をオジさんに作ってあげました。
それからは毎日、二人で甘いお菓子を
お腹いっぱい食べて、ゆっくり寝て、
楽しく仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
「彩音ちゃんも一緒にお腹いっぱい甘いお菓子を食べて、
みんなで仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。」
私がそこまで話をするころには、彩音はスースー寝息を立てていた。