GM:観測者は後悔する
とても短い。だって幕間だもの。
揺らめく蝋燭の灯りを、じっと睨んでいた。
暗闇の中を照らすのは、ただそれだけだ。
いつからだっただろうか。全てを諦めてしまったのは。
風に揺蕩う灯火は、とても儚いものに思えた。思わず手を伸ばして消してしまいそうになるのを、指先が触れる寸前で止めた。
そう――――まるで、自分のようだったから。
潰してしまいたいと。思ったのに。これは、消しちゃいけない。
口を開いた。
破滅の言葉を、今日も紡ぐ。
「〝現世に現れ、その全てを鼓動に焼き付けよ。今、汝を招来する――――――序列49番の伯爵、双頭の悪魔〟」
現世、はこの世界。現れ、は存在せよ、を意味する。
それは、異形の存在を歓迎する呪文だった。
もう、戻れない。やってしまった。何もかも、隠さないと。
目の前にあった陣の変化はないが、やがて、何かが現れる。
その姿を見る前に部屋から出て、そこで目を瞑った。
「どうして――――」
響いた声は、自分のものだと知っていながら、別の誰かの声に聞こえた。
もう、戻れない。
始まってしまった。
でもきっと、彼女なら分かるだろう。自分を見つけてしまうだろう。
だからその時は素直に――――殺してほしいと、言おう。
脳裏に自分の親友を思い浮かべながら、意識は遠のいていった。
ああ、
もう
戻れない。
とある独白。これからこのような幕間は、一人称だったり三人称だったりします