一時間目
8時50分、一時間目の授業は現代文である。
猪狩「この句はここでは二文目の意味と同じになっており…」
現代文担当は猪狩先生だ。ちなみに三流大卒である。偏差値29。
猪狩「じゃー、ここの文章、今日2日だから石河読んで」
石河「はい。するとネッシーが言った…」
窓側で後ろの席に座る石河は常にクラスの全体像を把握することが出来る。一文を読み終えた後、それは目に入った。
石河(久保、まさかあいつ…)
山形さんの隣の席、すなわち山形さんが死んだ今、最も教卓に近い席に座る久保が弁当を食べていた。一時間目から白米を頬張っているのだ。その大胆さに石河は息を呑む。何より「ノーデッドアングル(死角なし)」の異名を持つ猪狩先生に気付かれていないのが凄い。
石河(灯台もと暗しってやつね)
猪狩「次、前行って白井」
白井「はい。ツチノコは…」
猪狩「声が小さい!」
猪狩先生は黒板消しを白井に投げつけ、怯んだ隙にふところに入り日本刀で白井の首をはねた。白井は死んだ。白井の声は生まれつき小さかったのだ。後ろの席である石河でやっと届く程度の音量だった。そしてさらに猪狩先生が動いたことで灯台もと暗しの状況が打破された。鶏肉の唐揚げに手を伸ばしていた久保が見つかったのだ。
猪狩「久保貴様!」
猪狩先生は久保に斬りかかる。だが久保は甘くはなかった。いや、糖分多めとかそういう意味ではなく。真剣白羽取りで猪狩先生の攻撃を防いだ。
久保「遅いね」
久保は金歯を輝かせる。久保は金歯が四本ある。
猪狩「お前がな」
猪狩先生は背中から新たな日本刀を取り出し、ついに久保の首をはねた。
猪狩「俺は二刀流だ」
ちなみにこれまでの猪狩先生の俊敏な動きによる風圧で実に三人もの生徒が巻き添えを喰らっていた。加藤さん、加藤、加藤が死んだ。このクラスの加藤は全滅した。こうして一時間目は終了した。
残り 30人