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序章 サランドラ島
サランドラは、海によって外界から隔離された、比較的大きな島である。大陸から移住した超能力者の末裔が住む町ラスタが島の北西に、主に人竜が住む町サランドラが島の中央にあり、およそ二千人が暮らしている。島の東には、鬱蒼とした未開の森が広がっている。
人竜は、藍色の髪と瞳が特徴的な、サランドラに先住する人種である。全員が超能力を持っていたと言われているが、真偽は定かではない。近年は混血が進んで藍色の髪の純血は非常にまれとなり、瞳が藍色であれば人竜と呼ばれている。
人竜の名は二百年程前、大陸での差別から逃れこの島に渡った超能力者がつけた、という伝説が残っている。当時超能力者は人狼と呼ばれていたが、島に住む彼らの大いなる能力に驚き、竜(=神)の能力を持つ人の意味で名付けたとされている。
現代でも純血の人竜は能力を受け継いでいるそうだが、その能力を行使することは原則禁じられている。また十数年前に発生したある事件によって、能力について話題にすることもタブー視されるきらいがある。
――『サランドラ島旅行記』より抜粋