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雨の日、ついていない日2

午後の授業が終わった。まだ雨は降り続いている。舜は雨の中部室へと走る。

「今日は雨だし、文化祭の支度もあるから週末のインハイ予選の支度したら各自準備へ行けってさ。着替えはしなくていいよ」

 部室へ行くと先輩がそう言っていた。最後のインターハイに向けて気持ちを高めつつある先輩たちにとっては、雨はいい迷惑だ。

(文化祭の支度か、まだ行ってなかったなぁ)

運動部の生徒のほとんどは基本参加できていない。文武両道といって部活動に力を入れている学校の典型的なパターンだ。試合と重なって当日参加できないという何ともかわいそうな部もある。

(行ってみるか)

普段ならあり得ない選択だが、現在の雨の状況からみてかなり帰宅するのは大変そうだ。ずぶ濡れになるし合羽は臭いしでろくなことがない。と判断した結果、クラスのために力を尽くすことにした。


「あー、舜ちゃんだ」

 教室へ入るとミキがいち早く駆け寄ってきた。何かの色塗りをしていたようで頬のあたりと手の甲に絵の具が付いている。

「やぁ」

「部活は?」

「中止ってとこかな」

「そっかぁ、じゃ、早速色塗りやってくれる?」

「それきた」

 あまり汚れたくはないのだが、こうも無邪気な笑顔で誘われると断れるにも断れなかった。とても魅力的で作業場にはやはり数人の男子が溜まっていているのだが、ミキ自体は舜の方に気がいっていて話させる隙がない。

「ここ一緒に塗ろうよ。広くて大変なんだー」

「うん。じゃぁ筆貸して」

 可愛いやつだなぁ、ちくしょう と思いつつバケツに入っている筆を指さす。

「はいよぉ、ほれぇ」

「あっ、ミキ。この」

 筆を持った手が変な方向に伸びてきたと思ったら、頬のあたりに赤く丸を描かれた。

「へへ、おかめさんみたい」

「はぁ、もう・・・・・・」

(しかしこうも可愛らしく言われるとなぁ)

結局やり返すこともできずただ笑うだけ。そしてミキも笑う。まるでバカップルみたいだ。


塗り続けること数分、

「あ、絵の具切れちゃった」

 案の定絵の具は底を尽きた。新しいものを買い出しに行かなければならない。ミキとじっと見つめあう。

「じゃんけん・・・・・・」

「だね」

 両者の意見は一致しいざ勝負、

「ハッ」


『とりあえず赤と白と黄色勝ってきてね~』

 勝負に負けた舜はミキに頼まれた注文を思い出す。学校近くにあるホームセンターへ行くため「学校坂」と呼ばれるなだらかで長い斜面を下る。坂の入り口にはバス停があり、これを利用する生徒も多い。そんな斜面を彼女は徒歩で下る。

「あー、ついてねー」

 今日は朝から運がない。遅刻もしたし、買出しは行かされるし、歩きだし。自転車で行けば5分もかからないが、歩きでは10分はかかってしまう。おまけに雨も降っている。

「上原にでも行かせればよかった」

 ようやく学校坂を下り、学校前を通る道に出た。ここを渡り左へしばらく進めば目的地だ。その方向を見ると、バスが止まっていた。そして右側を向き、道を渡った。


(そのころの祐二)

「おい、早く援護してくれよ!こっちは近接武器なんだから」

「2体同時クエなんだから無理だって。こっちも大変なんだよ」

 この男たちには文化祭などもはやどうでもよい物だった。廃材でバリケード兼遮蔽物を設置しハンティングゲームを楽しんでいる。新しいクラスの仲間ともすっかり仲良くなり、毎日ゲーム、トランプなどで時間を潰している。それと引き換え彼女と過ごす時間はだいぶ減ってしまったが、文句を言ってこないし、向こうは向こうでうまくやっているようなので、まぁよしとしてしまっている。

「あぁ、文化祭っていつだっけ」

「さぁ、今週末じゃね」

 そろそろゲームにも飽きてきた。何か面白いものはないのだろうか。

「おい、野球しようや」

 といってきたのは、いつもつるんでいる仲間の一人だった、即席のバットとボールを持っている。

「おお、いいないいな」

「やるか」

 立ち上がって階段付近の少し広い場所に移動する。

「・・・・・・え?ほんと?」

「見に行こうぜ」

 階段のあたりは少し騒がしくなっていた。上の階からは人が駆け下りてきて、下からは駆け上がってくる。主に男子。

「なんかあったんだかな」

「ただ事じゃなさそうな・・・・・・そんなような」

 そんなことを考えているとこの騒ぎの元凶であろう言葉が耳に入る。

「学校の近くで事故があった」

 たしかにそう聞こえた。

「・・・・・・おい」

「ああ、わかってる」

 そう、考えることはただひとつ、

「現場へ行くぞ!」

 言うなり祐二たちは走り出した。階段を駆け下り靴を変える。すでに何人もの野次馬たちがいた。お目当てのものはおそらく同じだ。

「・・・・・・だってさ」

「・・・・・・うちの?」

 走っているうちに次々と情報が入る。学校坂の入り口には早くも野次馬共でごった返していた。ふと見ると見慣れた後ろ姿があった。

「お、なんだ舜チャンじゃねえか」

 買出しだろうか、いや間違いなくこれはただの野次馬だな、と祐二は悟った。しかし振り向いたのは彼女ではなかった。

「・・・・・・ゆうじくん・・・・・・」

 すごく顔色が悪い。

「どうしよう、ねぇ、どうしたらいいんだろう、ぜんぶわたしのせいだよ、ぜんぶ、ぜんぶ」

「おい、どうしたよ」

「やぁぁぁ!」

 その場にひざから崩れ落ちた。

「おい!なんだ。事故に関わったとか?何があった?」

 ミキは声を上げて泣いているだけだ。意味がわからない。自転車でそこらのおばさんでも轢いてしまったのだろうか。いやまて、

「舜チャンは?一番こういうのが好きそうなやつが・・・・・・」

「ああああああああっ」

 泣き方が激しくなる。ここまでくるともういやな予感しかしない。

(ミキの様子、野次馬女の不在)

「ま、まさかなぁ」

 野次馬の円陣の方を見る。救急隊が担架でけが人を運ぼうとするのが見える。体が勝手に動く。

「どけ、どけっての」

 野次馬共を掻き分け奥へ進む。やはりそこに彼女はいた。騒ぎの中心として。

「おい、舜!おい!なんか言えよ!」

 担架へ突っ込み彼女の肩を揺さぶる。

「落ち着いて!落ち着いて!」

 救急隊員にそれを止められる。思考は完全に停止していた。何がなんだかわからない。ひとつだけわかるのが彼女がそこで血まみれで動かなくなっていること。

「くそ!はなせ!」

 なんとか彼女へ近づこうとするが救急隊員のブロックは堅い。

「その生徒の担任です!どいてください!」

 ぼてぼてと担任の原田が走ってきた。祐二が暴れていることに気づく。

「おいこら、離れろ。後はプロに任せるんだ」

「くっ・・・・・・嫌だ!」

 そうだ、嫌だ。

「俺はこいつの彼氏なんだよ!一緒にいなきゃだめなんだよ」

 そういえば最近ろくに話もしてやれなかった。いまさらになってそれがどういうことだったかということに気づく。

「わかった、じゃぁいけ」

 原田はすんなりと通した。救急車の扉が閉まり、走り出す。ちらっと見えたがミキはうずくまったままで、その横にはタンバと上原がいた気がした。

お久しぶりです。甘党でございます。

いやぁ、暑いですね^^ さてかなり間が空きました。本当は2週間前くらいには投稿できると思ってたんですが・・・・・・

PCが逝ってしまいまして。なんかよくわからないんですが、とにかく起動しなくなってしまいました。もちろん書きかけの原稿もそのなか・・・

結局泣く泣く貯金を崩して新しいのを買いました。そんでいざ投稿!って思ったら静岡で震度5弱、必死で新しいPCをかばいました甘党でした。

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