雨の日、ついていない日
新しい友達を作ってみては?という助言をもらい、早速実行する舜。強い印象を与えようと力が入るあまりぎこちない行動をとってしまう。そんな彼女を見たミキはというと・・・・・・
その日は雨だった。梅雨の季節が近づき天気が悪い日が続いていて、そのせいか学校全体が重々しい
雰囲気に包まれていた。そんな中でも来る文化祭に向け着々と準備が進められていた。
その日の朝。
「・・・・・・だから、そういうことになることは予想できたはずなんだから、早めに家を出るなりしなければいかんな。公共の交通機関を使うわけだから・・・・・・」
「はい・・・・・はい・・・・・・そですね」
今日は朝から説教だった。雨の影響で道が混雑し、バスの出発が5分、到着も5分近く遅れ舜は学校に
遅刻した。雨合羽を着ることを極端に嫌う彼女は事情がない限り雨の日はバスを利用する。普段なら早めに家を出るが、10あるうちの9のだるさを感じていたため結局普段と同じ時間に出発したため遅刻という結果になってしまった。
「はふー」
「朝から災難だな」
「・・・・・・」
ふらふらと歩いてきた舜は上原を無視して椅子に座る。
「おい、よっぽど機嫌が悪いみたいだな」
「まぁね」
「まぁ、今日は授業が最悪だからな」
移動教室が多く、午後の一発目には体育がある。
「ああーっ!」
バンバンと叩く舜。
「おいどうした」
「なんか、もう、悔しくなってきた」
「は、はぁ」
「ま、午前の授業は全部寝るわ」
「まじか」
雨はますますひどくなっていた。大きな雨音が聞こえてくる。4限目の授業は舜を含めてほとんどの
生徒が居眠りをするという何とも学校らしくない風景となった。やがて終業のチャイムが鳴る。
(昼飯か・・・・・・)
昨晩のジジイの言葉を思い出す。
(新しい友達・・・・・・)
「ミキ・・・・・・」
「なぁに?」
「や、たまには女子と食べよっかなぁ。みたいな」
新しいクラスに一番よくなじんでいるミキを当てにすることにする。彼女は男女両方から割と人気で
友達が多い。
「うん。いいけど、上原君は?」
おそらく一人残されるであろう男を心配するミキ。流石、できた人間だと思う。
「ああ、いいよ。あんなの。なんとかするよ自分で」
打って変ってなんら気にしないのが舜。しかし仲の良い証でもある。
「はは・・・・・・そうなんだ。じゃ、行こっ」
二人は普段ミキが昼食をとっている教室の右前付近に向かう。その時は既に何人か人が集まっていた
「今日は舜ちゃんも一緒に食べたいんだって。よろしくね」
ミキが切り出す。
「あれ?いつも上原君と食べてる子じゃん」
「彼氏だっけ?」
どうやらこのクラスではそういうことになっているようだ。「ちがうよー」とミキが言う。
(なんか印象に残ること言わなきゃ・・・・・・!)
「今日はどうしたの?」
この問いに対して舜はというと、
「あ、あははー。一緒に食べる友達とか居なくってさー!一人なんだー。はは」
一瞬、場の空気が凍った。
(あれ?間違えた?)
「あ、えっと!このクラスには居ないってことだよね?だからよろしくって!」
「そ、そなんだ・・・・・・」
(ありがとう、ミキ。ナイスフォロー)
とはいえ、売り込みに失敗してしまいあまり会話は弾まず昼休みは終了したのだった。
「あまり気にすることないよ。初めてだったし、そのうち仲良くなれるって」
体育の授業へ向かう。雨のため、体育館での授業になった。
「でも、反応うっすかったなぁ」
これも自らの社交性の無さか、と思う。そこに、
「だはは、やっぱチチはでかい方が・・・・・・」
祐二と階段ですれ違う。気づいていないようだ。彼の周りには数人の男子がおり、一緒にいるという
よりは付きまとっているようにも見える。
「はは、すごいこと言ってたね・・・・・・うん」
ミキは苦笑いをする。
「人気者だよね、あいつ。下ネタばかり言うくせに」
舜は口を尖らせて薄っぺらい自分のものを見る。
「あ、あれは一般論だよ!薄っぺらでもいいところはあるよ!」
「ほんと、いい人だよあんたは」
といってもなかなか豊満な彼女の言葉、説得力に欠ける。
「悔しいなぁ、男友達とばっか仲良くして。ウチなんか友達も作れないのに」
「そんなことないよ」
ミキは舜の両手を握った。
「お」
「私、舜ちゃんのこと大好きだよ?無気力なとことか、男っぽいとこあったりするとことか、時々ボケるとことか、すごく一緒にいて楽しいんだよ?だからさ、自信もってよ」
「な、なんか泣けてきちゃったじゃん。でもありがと」
舜は少しこぼれた涙を拭いた。
「さ、授業遅れちゃうから急ご」
「あいよ」
彼女たちは転ばないように階段を数段飛ばしながら駆け降りた。
みなさま、どうもです。甘党でございます。
今、新しい友達ができたことによって、大事な人との距離が広がってしまっている、という場面を書いていますが・・・・・・
今思えば、自分も学生時代そんなことがあったなぁ、なんて思ったりします。(幾年も前のことですが)しかも恋人なんていう親密な関係でもなくただの遊び仲間でしたけどね。自分も何とか新しい友達を!と奮起していました。
と、思い出話はこんなところで。
それよりこれから暑くなりますね。もうそのことばっかり考えてます。
なんとかしてエコながらも涼しく過ごす方法を考えたいものです。