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ストーカー=企画長

アメリカから来た留学生タンバに気に入られてしまい、以後付きまとわれてしまっている舜。そんなにっくきタンバが出した案が文化祭で使われることになり、企画長に任命されたタンバは一体どのような模擬店を開くのか?

河原高校は公立高校とは思えない程の設備が整えられているなかなか珍しい学校として知られている。

この大きな中庭もそのひとつであり、まるで大学のキャンパスにいるように思わせる作りで、多くの木

が緑の葉を茂らせ、花壇には沢山の花が咲き、中央にある桜の木は満開を過ぎ、花びらが散り始めている。 手入れがとても大変な庭で、桜が咲くこの季節はいっそう用務員の仕事が増える。そんな中庭はもちろん生徒からも人気があり、多くの生徒が昼休みに訪れ、庭内に置かれたベンチや芝生の上で昼食や昼寝を楽しんでいる。

「楽園だな、ここは」

 祐二は木の木陰の芝生の上で寝ころびながら言う。

「学校にいることを忘れさせるからな」

 上原も同様大の字で寝ている。ここでこのように過ごすことは1年時からの日課だ。

「しかし、舜チャンは遅せーなぁ」

 いつも昼休みを共にする3人組の一人、舜はまだ姿を現していない。普段なら彼女が一番にここに来るはずなのである。

「トイレでも言ってんじゃないの」

 上原は特に気にはしていないようだ。

「だな。・・・・・・お、来たぞ」

 祐二が体を起こすと舜が走ってくるのが見えた。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 陸上部所属である彼女は珍しく息を切らしていた。まるで何かから逃げきたようだった。

「どうしたよ。お前が昼のランニングなんてらしくないな」

「いや、まぁちょっとね」

 「ふー」といって倒れこむ舜。まだ冬服の更衣期間のためかなり汗をかいている。

「タオルあるけど、拭くか?」

 首にかけていたタオルを祐二は差し出す。

「あ、ありがと」

 タオルをもらって汗を拭く舜。やけに周りを気にしている。

「なぁ、ほんとにどうしたんだ?」

 改めて聞く祐二。ストーカー被害にあっているのかもしれないと少し心配になる。

「え? まぁなんてことないよ・・・・・・ あっ、やばい」

 と言ったかと思うと、舜は素早く木の陰に隠れた。その視線の先には、

「ん?あれって入学式のときの留学生じゃね?」

 身長190cmはあろうかという大男がいる。キョロキョロ辺りを見回し何かを探しているようだ。

「同じクラスなんだよ、アイツ」

「で、付きまとわれていると」

「正解」

 「はーっ」とため息をつく舜。そしてその留学生は舜を発見したらしくこちらへ向かってくる。

「オーウ、ソコニイマシタカー」 

 汗だくでやってくる留学生。舜の隣へドスンと座る。

「こっち見ないでよ。気色悪い」

「オホホーウ」

 舜の罵声も気にせずタンバは舜の背中をつつく。

「んっ・・・・・ だから止めろって言ってんじゃん!」

「オオーウ。デモホントウハシテホシイノディスネ?」

「なわけない! あっ・・・・・・」

 今度はふさふさとした羽毛のようなものに覆われたキーホルダーで首筋をくすぐる。

「なんだ、舜チャンは首筋を責められるのに弱いのか?」

「ばかっ!違うから!」

 こうは言っているものの、明らかに普通の反応ではない。

「ヤッテミマスカ?」

「どれどれ」

 さらさら・・・・・・

 と、祐二もふさふさの部分で撫でるようにしてキーホルダーでくすぐってみる。

「やっ・・・・・・もう、止めろってば!」

 我慢できなくなり寝返りを打って逃れる舜。

「はは、面白いな。・・・・・・どうしたお前」

 横を見るとひょっとこのような顔をして目を見開いている外人が1名いる。

「ドウシテディスカ? キミニシテモラッタトキノホウガ、ウレシソウディス」

「そうなの?」

 唸るタンバに祐二は聞く。

「ワタシガスルトキハイツモコワイカオシテマス。デモイマハウレシソウデシタ」

「祐二にしてもらう方が気持ちいいんじゃないか?」

「この!上原!」

「いてててて」

 思いきり舜は上原の耳を引っ張る。

「ったく調子に乗るなっての。で、次の授業は何?」

 このように、だいたいは上原が余計なことを言って話が終わる。加えて昼休みも終わり頃になる。

「数学の後文化祭の打ち合わせだったかな」

「オオー、ブンカサイタノシミディス」

 毎年6月中旬頃、この河原高校では文化祭が行われる。内容は1年生がモニュメント作成、2・3年生は

2学年の売上対抗形式の模擬店を開くのが恒例である。他にもバンド演奏をはじめ、パソコン部の制作

したプログラム発表といったものもあり毎年かなりの盛り上がりを見せる。今日のロングホームルーム

では、その打ち合わせが行われのだ。

「そーなんだ。じゃぁ眠れないじゃん」

 しかし彼らは特に楽しみにしているわけではなく、普段通り寝ることだけを考えていた。


「では、開きたい模擬店を挙げていってください」

 服装は整い、背も高く、性格もなかなか良いが見た目で少々苦労している委員長はクラスを見回す。

「ハーイ」

「ん、タンバ君」

 まっ先に手を挙げたのは新加入の外国人留学生ことタンバである。

「スシ、スシガイイディス。ニホンノスシハ、クルクルマワルトキキマシタ」

「なるほど、回転寿司ですね。しかし生ものの販売は許可されていないので却下です」

 と、あっさりと切り捨てる委員長。「他には」と続ける。

クレープ、焼きそば、たこ焼き、お好み焼き。などと定番の料理が挙げられていく。多数決で最終決定

をしようとする委員長を担任原田が止める。

「でも、これじゃぁ定番すぎて客が入らないと思うなぁ。勝ちたいなら別のものにした方がいいぞ」

 確かにこの料理は定番すぎてあまり面白みがない。皆納得したようで、新しい案を出すことになる。

「・・・・・・」

 しかしなかなか次の案は出てこない。生ものを封じられたりと制限のために使える料理は少なくなってしまう。「これでもいいんだけどね」と原田も新しい案をあきらめる。

「ゼンブウッタラドウディスカ?」

 つぶやくタンバをクラスの全員が見る。

「それだよそれ」

「なんでそんな単純なことに気付かなかったんだ」

 

 結局、タンバの意見が採用されることになった。この模擬店の売りは「食べたいものがみんな売って

いる店」と決まり。店の外観、役割分担等も、かなりの腕のある委員長によってスムーズに決めらた。

責任者の委員長を中心に、発案者タンバは企画長、大柄な上原は組み立て班、作業嫌いな舜は資材調達係、料理が得意なミキは料理長になった。

「よし、今日の放課後から準備期間に入るから、運動部もできるだけ参加するように。機材の申請も忘れずに行うこと」

「売り上げトップを目指しましょう!」

「おーっ」

 こうして、「河原ファミリーレストラン(仮)」と名付けられたプロジェクトは始動した。

 


どうも、大変遅くなってしまいました。お久しぶりです、作者甘党でございます。前回の投稿が今月2日、20日くらい間が空いてしまいました。理由はと言いますと、とにかく忙しかったことです。途中で少し体調も崩し、なかなか執筆に集中と行く訳にもいきませんでして・・・・・・ といっても、最近はひと段落ついたので、少なくともこれほどに間が開くことはないと思います。 では、今後ともよろしくお願いします!


追記

クラスにいないはずの祐二君が何故か登場していたので、修正しました。また、文化祭日程も修正。5→6

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