表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/34

Vol.025【因果律の通じない世界】

ツインライトプロダクション本社

2017年4月2日 朝


漓久「どこまでならわかる?」


空央「ソフトですか?ある程度なら分かります」


漓久「うちはあまり高級なソフトは使ってないから、桜沢がある程度のソフト使えても、うちは販促ツールもあるから一貫してこのソフトを覚えてもらう」


空央「わかりました!そちらも得意ですから」


漓久「そうか。じゃ早速このデータを日付順にまとめて、名前を付けながらMPEG保存しといてくれ」


空央「わかりました!」


俺から見た桜沢は、とても優秀そうに見えた。


誰もがこの道を選んで、それなりの学校を出て専門学科を選び、一通りの学習をしていく。


だが桜沢には、それとは違う感覚があった。


なにか一つのものに執着したような感覚……


もしくは、この仕事は単なる通過点ではないのか?と思えるほどの機械的な感覚……


すべてが、新入社員とは思えない。


何かを極めた人間の手つき……


そんな印象を受けていた。


そして時折見せる、怪しげな笑み。


今まで感じたことのない何かを

俺は桜沢から感じ始めていた。


ただ、ぶっきらぼうに俺に微笑んでいるのか。


それとも


魔性の何かを秘めているのか。


想像すら出来ない未来のレールに

乗ってはいけない。


そんな叫びを、誰かが発しているようにも思えた。


だとしたら……


誰が?


誰がこんなにも

俺の体を桜沢から遠ざける?


そんな、とてつもなく大胆な発想を


彼女は一瞬にして

俺に与えてしまった。


そして俺は

知らず知らずのうちに……



空央「出来ました!南さん!」


……え?


早すぎる。


仕事のレベルが違う。


本来なら、慣れていても一日はかかる仕事。


それをわずか半日。


しかも

桜沢は昨日入社したばかり!


漓久「なぁ、桜沢?」


空央「はい!なにか?」


漓久「ちゃんと確認したか?」


空央「もちろんです!間違いはないかと……」


漓久「一応、桜沢は新入社員だから俺がもう一度目を通すよ」


空央「はい!お願いします。」


最初が肝心だ。

仕事は最初が肝心なんだ。


入社したての新入社員が

こんなにも簡単に


ましてや


完璧に仕事をこなせるはずがない。

そう思いたかった。


しかし……


桜沢の仕事は


完全に


俺の思考を上回っていた。



漓久「お前、これを自分で?」


空央「はい!この手法、名前の付け方、保存形式の方が確実だと思いました」


漓久「勝手な真似を!」


空央「確実だという立証が出来ます!」


漓久「な……」


完全にリードされている……


確かに俺は専門校ではなく、実戦というスキルをここに来てから養ってきたはずだ。

それなのに、現時点での俺のスキルが彼女より下回っているというのか……


自分が情けなくなる……


桜沢に一つ教えるたびに、二つ教えられるような気がした。


この、どうしようもない綺麗な化け物は、これから俺をどんなふうに助けてくれるのか……


もしくは、どんなふうに壊していくのか……


摩天楼だらけのこんな大都会の中で、苛立ちだけが先走り、俺のネガティブな妄想をより一層増幅させる。


現実社会というリアルな結果が目の前に立ちはだかり、計り知れない不安が今日も俺を蝕み、非現実社会を求めさせる。


桜沢空央。


この東京の中には腐るほどの映像会社がある。


当社のような小規模な会社ではなく、もっと羽ばたけるところがあったはずだ……


なのに、どうして……


当社を選んだんだ?


俺の疑問が心の中で叫んでいる。


桜沢に対して、なんとも言えない疑問……


SoRaが消えた3ヶ月の間に、俺はどんなものにも不信感を抱くようになっていたのかもしれない。


見えない世界と見える世界。


そのどちらの世界に俺がいたとしても、感じる痛みや疑いは同じもの。


本来なら喜ぶべき人材なのに、今の俺には疑問ばかりが湧いてくる。


だれ?


どうして?


なぜ?


そんな思いに耽ったまま、

長い長い一日が終わった。


ここ二日間は現実世界に疲れ果て、

知らず知らずのうちに眠ってしまった。


そしてふと目が覚め、

俺は二日ぶりにネバーランドに飛び込む……


え!?

SoRa!!!


SoRaがこんなにも早く申請をOK!?


まじかよ……


にわかには信じられなかった。


どれだけの時間を費やしてここまで辿り着いたか…

そう思うと、その結果はあまりにも容易すぎた。


そんな諦めに似た思想よりも、

俺の睡魔の方が勝っていた訳だ。


でも


SoRa……


これでやっとこの世界で会えるんだな!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ