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優斗は入学初日から目立っていた。
類まれな美形。社交的で明るい性格。相手が誰でも物怖じせず話しかける。すぐに人気者になった。
軽音部で活躍し、ギターの腕もかなりらしい。文化祭のライブでは他校の女生徒が詰め寄り、整理券が配られるまでになった。
明るい陽の当たる場所で、咲子とは正反対の目立ち方をする優斗。眩しくて、太陽みたいな存在。
咲子が優斗を好きになったのは、入学式直後だった。
同じクラスになり、くじ引きで隣同士の席になった。
「よろしくっ」
明るく話しかけられた咲子は、いつものように演じた。高校でも霊感少女のイメージを保つと決めていたからだ。
「……私には、あまり関わらない方がいいわ」
本当は、隣に見たこともないほど格好いい男子が座ってきて、緊張で息が詰まりそうだった。
でも咲子は「貴方に興味なんてない」と虚勢を張った。
次の日、派手な女子が「席替わって」と言ってきた時も、内心を押し殺して答えた。
「別に、いいけど」
その結果、咲子は優斗の隣の席から離れた。
――だが、入学式の日。優斗はつれない言葉に、ふっと微笑んで言った。
「髪、綺麗だね」
そして咲子の長い黒髪に、そっと指を絡めた。
その瞬間、咲子はあっけなく恋に落ちた。
席が離れてから、二人に接点はなかった。それなのに今、優斗は咲子を頼っている。
原因はどうせ、人気者ゆえのストレスが生んだ幻覚――そう思う。けれど、それでも。
自分だけが彼を楽にできる。感謝される。見てもらえる。
他の相談者の時とは違う。優斗に「もう大丈夫よ」と言うのは、少し引き延ばそう。その間に霊感少女らしい素振りを見せれば、信頼も深まる。優斗の中で、咲子の存在はもっと大きくなるはずだ。
相談を受けた帰り道。咲子はスキップしそうな勢いで歩いていた。
ふいに、バタバタと騒がしい足音が背後から迫る。咲子が振り返ると、隣のクラスの派手なギャル――あけみが息を切らして立っていた。
「今、優斗くんと教室で何話してたの?」
グロスをたっぷり塗った唇を尖らせ、あけみが言う。
「あなたには関係のないことよ」
突然ギャルに話しかけられた恐怖で内心ひいひい言いながらも、咲子は努めて冷静に返した。
あけみの瞳がすっと細くなる。
「あんたのために言っとくけど。あんまり優斗くんに関わらない方がいいよ」
――こういう女、大嫌い。
ちょっと可愛くて華やかだからって、優斗を自分のものみたいに言う。
今、優斗が頼ってるのは咲子だというのに。
「それも、あなたには関係のないことよ」
まだ何か言いたげなあけみを置き去りにして、咲子は身を翻した。
どうか追ってきませんように、と祈りながら、足早にその場を去る。




