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霊少女  作者: 蓮田 れん
2/11

「最初に気づいたのは足音だった」

ドアを閉め切った教室で、二人は一つの机を挟んで向かい合った。優斗が話し始める。

「通学の時も、帰り道も、朝も夜も関係なく……とにかく一人になった時、俺の足音に重なるように、ヒタヒタって足音が聞こえるんだ。足を止めると音はしない。振り返っても誰もいない。最初はマジでストーカーかと思った」

優斗は、少女漫画から抜け出たような美貌とスタイルで、校内ではちょっとした有名人だ。メンズ雑誌の読者モデルもしている。つけ回す人間がいても不思議ではない。

「でも、そのうち他の人といる時でも足音がするようになってさ。さりげなく一緒にいる奴らに聞いても、誰も『足音なんてしない』って言う」

咲子は、憂いを含んだ優斗の切れ長の瞳を見つめた。長い睫毛の影が落ちる頬。整った唇から流れ出る声。

「俺、頭おかしくなったのかな。病院行った方がいいのかなって思ってた矢先――」

優斗は傍に置いた鞄を引き寄せ、無造作にティッシュに包まれた何かを取り出した。

それを机の上にそっと広げる。

「……髪が」

黒髪が一房、はらりと落ちた。胸まで伸びる、艶のある長い髪。咲子の髪と同じくらいの長さだ。

「ある日またヒタヒタって足音につけられてさ。家に着いたら、いつの間にか右手が何かを強く握ってた。意識してなかったから、なんだろうと思って手を開いたら――これ」

咲子と優斗はしばらく無言で、机の上の髪を見つめた。

優斗は細い眉をひそめ、苛立たしげに指で机をトントン叩く。

咲子は考える。これは、いったいどのパターンだろう、と。

「なあ」

かすれた声で優斗が咲子を呼んだ。

「今井さんなら何かわかるんだろ。っていうか、もう何か見えてるんじゃないの? 幽霊とかさ。霊能力あるって本当なんだろ?」

普段は咲子など視界にも入れない瞳が、今は縋るような光を帯びている。

派手な女子に囲まれていることの多い手が、咲子の肩に置かれた。

耳元で囁かれ、咲子はぴくりと肩を揺らす。焦りを必死に押し込み、ひどくゆっくり口角を上げた。

「……そうね」

偽りの時間が始まった。

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