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「今井さんってさ、霊感あるんだよね」
放課後、帰り支度をしている最中だった。背後から声をかけられ、咲子はびくりと肩を揺らす。
夕日に染まったオレンジ色の教室で、肩まで伸びた茶色の髪を揺らしながら、優斗が立っていた。
甘く整った顔。真剣な目。咲子をまっすぐ見ている。
「……何かしら、急に」
どぎまぎする胸を押さえ、咲子はできるだけ落ち着いた声を作って問い返した。
「噂で聞いてさ。今井さん、本物の霊感があるって。昔、霊感で大きな事件を解決したこともあるんだろ?」
優斗は話しながら、少しずつ咲子の席に近づいてくる。
「……それがどうかしたの」
距離が詰まるたび、咲子の胸が激しく高鳴った。
「実は相談に乗ってほしいことがある。誰も信じてくれないような話なんだけど、今井さんなら馬鹿にせず聞いてくれると思って。……ダメかな」
長身をわずかに屈め、覗き込むように優斗は言った。
「話だけなら聞いてあげてもいいけど」
「ありがとう。助かるよ」
にっこり笑う顔に見とれて、咲子はごくりと唾を飲み込む。
高校に入学してからずっと憧れていた優斗が、今、こんな近くにいる。嬉しさと恥ずかしさで、咲子は世界がふらつくのを感じた。




