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人間万事諦めが肝心


 ティナがシーラに状況を説明し、当然ながらティナは怒り狂っている。


「誰がお嬢様のドレスを!」


 ラニアのドレス愛が強いのもあるだろうが、そもそも私の許可なく部屋に、衣装室に忍び込むだけで大問題。

 話を聞いたシーラなど、ドレスがなくなった事実があっても半信半疑といった様子だ。

 どちらの反応も無理はない。


「犯人はわかってるし、シュヴァルトを向かわせてるから……私たちも行きましょうか」


 2人に手伝ってもらい、簡単に身支度を整え、グレイスが案内された客室の方へ向かう。


「たかが護衛騎士が、ブラウエル公爵家の人間に逆らうのか!?」

「私の主はリースベットお嬢様ですので」


 コルネリウスとシュヴァルトが客室の前の廊下で言い争っていた。

 客室の扉は半開きになっていて、扉の隙間からグレイスの姿も見える。もちろん、譲ったドレスではなく、衣装室からなくなった黄色いラニアのドレスを着た姿で。


「あらあら、まぁまぁ……」


 わざとらしく声をかければ、すぐにコルネリウスとシュヴァルト、グレイスも私に反応した。


「私の衣装室からドレスが1枚紛失したので、もしやと思いましたが……私のドレスは衣装室を飛び出して、こんなところに逃げて来たのですね」


 グレイスはすぐに扉で体を隠し、そんなグレイスを庇うようにコルネリウスが扉の前に立つ。

 その行動は、まるで私がグレイスを虐めに来たような光景に映らないでもないが、あまりにも馬鹿馬鹿しい。


「言いがかりはよせ!」

「言いがかり?」


 この男は本気で頭におがくずでも詰まっているのかと、心配になるほどにおかしなことを言ってくる。


「私はベネット嬢がドレスを盗った……など、言っておりませんよ? それに、私の衣装室に人を送ったのは貴方でしょう?」

「だったらなんだ! 少しの間、ドレスを借りただけだろうが。それを「紛失した」だの「盗った」だの! 挙げ句には護衛騎士を送りこんで、ドレスを今すぐ返却しなければ、ドレスを破ってでも……とは、お前はどんな命令をしたかわかってるのか!?」

「……残念ながら、私が護衛騎士に命じたのは「公爵閣下に説明して、指示を仰げ」ですが?」


 ハッとした様子のコルネリウスが、私の方を見て……というか、私の少し後ろを見て目を泳がせる。


「ここまで騒ぎを大きくするか」


 私の後ろから、公爵の足音と声がする。


「お父様……」

「説明しろ」


 顔を俯け、一気にシュンとして小さくなるコルネリウスを見ていると、馬鹿馬鹿しさを通り越して無になる。


「……その、祝福祭のことでベネット嬢に手伝ってもらおうと思いまして、屋敷に招待したのですが……突然の雨でドレスが濡れてしまい、ドレスを借りることになったのです」

「そんなことはどうでもいい。リースがドレスを譲ったことは聞いている。聞いているのは、譲ったドレスの話ではなく、譲っていないドレスが衣装室から消え、そこの娘がドレスを着ていることについてだ」

「その、ベネット嬢と衣装室で見たドレスの話をしていて……着てみるだけならいいだろうと……使用人に頼んでドレスを……」


 グレイスがドレスを羨ましげに見ていたことは知っていた。

 けど……その話を聞いて、勝手に人のモノを持ち出して着せるのは、普通に考えてアウトだろう。


「リースに許可は」

「……取っておりません」


 コルネリウスもコルネリウスだが、グレイスもグレイスだ。

 どうせ、コルネリウスは見栄を張って「着てみたらいい」と言って、何も考えずにドレスを持ち出させたんだろう。グレイスは謙虚に断りつつ、結果として……他人のドレスを無断着用。


「コルネリウス、お前は謹慎だ。リースベットに接触することも禁ずる。お前に手を貸した使用人は解雇。紹介状など期待するな」

「……はい」


 公爵は小さくなったコルネリウスから、扉に隠れるグレイスをチラッと見て、それからティナとシーラを見た。


「そこの娘は今すぐドレスを返却しろ。そして、二度とブラウエルの敷居は跨がせん。リースの侍女たちには悪いが、その娘のことは任せた」

「承知致しました」


 ティナとシーラは不満顔を隠しもせずに客室に入って行った。


「お前には失望した」


 公爵の言葉にビクッと肩を震わせたコルネリウスを見ても、なんの感情もわかない。

 いい気味だとも思わない。


「公爵閣下、祝福祭の件でお話がございます」

「そうか。話を聞こう」

「夕食後、ベルンから詳しく話を聞いて、ベルン経由でお伝え致します」

「わかった」


 公爵は執務室に戻って行ってしまい、私もシュヴァルトと部屋に戻るつもりだった。


「……おい」


 力なく呟くようなコルネリウスの呼びかけの声は、聞こえなかったことにする。


「シュヴァルト、行きましょうか」

「はい」


 ゲームがどうこうではなく、この日……私はコルネリウスを完璧に見限った。


 

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