5話 初めてのバザー開設
窓の外を見ると空が茜色に染まっていた。階段から誰かの足音が聞こえ登ってきているのがわかった、多分弟の天だろう。何故か足音でだいたい誰かわかってしまうのだ…家族限定だけどね?足音は私の部屋の前で止まり部屋をノックされ声が聞こえた。
「姉ちゃんご飯できたから呼びに来たよ、それじゃ下で待ってるから」
私が返事をする間もなく下に降りて行ってしまった。
ベッドから立ち上がり部屋にある鏡で変なところはないか確認してから部屋を出た。部屋から出ると下からとてもいい香りがしてクゥっと小さくお腹が鳴った。周りには誰もいなくてもちょっと恥ずかしい。
一階につき台所に向かった。
「天とママお帰りなさい、今日はお手伝いできなくてごめんね」
扉を開けるとママが夕食の準備をしていた、見た感じほとんど完成しているみたいだった。
「別にいいのよ、今日はママがすごいおいしく作ったから楽しみにしててね」
「やったぁ、天は帰って来てから何してたの?」
ソファに寝転んでいる弟に告げると。
「帰ってきたら手洗いうがいして、それから姉ちゃんのリンゴジュースを少しクスねてから帰って来たことを姉ちゃんに伝えるために部屋ノックしたけど返事なかったからそのまま自分の部屋行っちゃった」
「なるほど…手洗いうがいはいい事だけど別にリンゴジュースは普通に飲んでも平気っていつも言ってるじゃない」
私が弟の前まで行って話を続けると、ため息交じりに言われてしまった。
「だってすべて飲んじゃうと怒るじゃん?姉ちゃん怒るとめっちゃ怖いし」
「だってあれは替えがないのに全部飲んじゃうんだもん!しかもあれは期間限定だった奴だよ!」
あの時の悲しみは忘れてないから、あの後もう一度買いに行けたからよかったけどね。
「はいはい、話はそこまでにしてご飯食べましょ?冷めちゃったらママ悲しくて泣いちゃうから」
シクシクと泣いたふりをしている、まぁいつもの事ではあるんだけどね。
「はぁい、そう言えば姉ちゃんゲーム始めたんだって?」
「あれ、なんで知ってるの?」
茶碗にご飯を盛りながら天が聞いて来たがなぜ知っているのか疑問に思った。だって知っているのは皐月くらいで…まさか…!
「皐月さんからメッセージ来て知ったんだよ、まさかMAOをするとは思わなかったけどね」
「やっぱり皐月か…まぁ知られても別にいいけどさ、天もやってたりするの?」
「まぁ、やってはいるけど姉ちゃんとは何となくだけどやりたくはないかも…いただきます」
「それってお姉ちゃんと一緒じゃ恥ずかしいって事?あ、いただきます」
ご飯を口に運ぶ天を見るとなぜか少し嬉しそうに微笑んでいるのがわかった。
「ふふ、二人とも仲良しねぇ、ママも話に入れたらいいんだけどね」
頬に手を置きながら困ったポーズはとてもかわいい。ママとパパの仕事は何をしているのか全く分からない。学校の親の職場を見る宿題とか出されたけど出来なかったんだよね。先生も親に話を聞いたらしいけど何故かその後その話題が消えたのを今でも覚えている。
「お母さんもしてみればいいじゃん!難しいけど楽しいよ?」
「ママは遠慮しておくわ、たぶん忙しくて出来ないと思うし」
「そっかぁ、出来たらよかったのになぁ」
「それなら私とすればいいじゃん」
「えー…だって姉ちゃんとゲームするといつもわけわかんない事しだすもん!前にFPSに初めて誘ったらグレネード投げないでピン抜いて走って行って自爆するんだもん!あの後友達になんて言われたかわかる?笑顔で自爆する怖いお姉ちゃんだねって言われたんだから」
…うーんFPSが何だったか忘れたけど確かにキャラクターが笑顔で自爆してくるのは怖いね。もしかしてあれかな?銃が出るゲームかな?全然当たらなくて落ちていた緑の球を持って投げたりしたのは微かに覚えてるような?あの時は…天がどうしても人数が足りないからって事で初めてしたゲームだっけ?結局あれ何する遊びだったんだろ?
「あれって自爆するゲームじゃないの?周りの人とかドカーンって爆発してたでしょ?」
「あれは相手が投げてきたグレネードが爆発したからであって、自爆するだけのゲームなんて…たぶんないと思いたいけどあるかもしれないから否定しきれない!」
「そうなんだね、それより今日のから揚げめっちゃおいしいね!流石ママ♪」
「ふふん、ママが作れば美味しくないものなんて作らないんだから♪」
「確かにお母さんのご飯って失敗してるの見た事ないかも?」
今日のおかずはから揚げとポテトサラダと揚げ豆腐です。どれもとってもおいしくて好き。
「ごちそうさまでした、いっぱい食べちゃった」
「姉ちゃん食べるの好きだもんな、さて歯を磨いたら部屋に戻ろうかな」
「私は食器洗ってから歯磨きして部屋行くね」
「今日くらい食器はママが洗ってもいいのよ?」
「これも将来のためだからね」
「さすがに将来のこと考えるの早くない?でも姉ちゃんもいつかは家から出て行っちゃうのかな…」
私が大人になったらもしかしたらって思うけどちょっと天が心配かな。私の大事な弟だし、彼女連れて来たらどんな子なのかも詳しく聞かないとね!…そんな日が来るか怪しいけど、昔ならよくお姉ちゃんと結婚するとかよく言ってたけど最近は言わなくなったのよね、さすがに恥ずかしいのかな?まぁ言われても結婚は出来ないからね!弟の事は確かに好きだけどあくまで家族としての好きであって恋愛感情としてでは絶対にない!!
この時期の食器洗いは少しだけ楽、冬が一番つらいんだよね、水がとても冷たくて…お湯になるのを待てばいいんだけどね…。そんな事を思いながら食器を全て洗い終わった。パパは今日何時に帰って来るかな?9時かそれとも10時か…。
「ママ今日ってパパどれくらいで帰って来るか知ってる?」
「そうねぇ…パパなら今日は八時くらいで帰ってこれるんじゃないかしら?」
「そうなの?随分と速いんだね」
「今日はたまたまだと思うけどね」
ママとの話が終わり私も歯を磨きに洗面所に行くと弟がスマホを見ながら歯を磨いていた。
「あ、ねえひゃん」
「私も歯磨きだよ、それより何見てるの?」
「ん…」
スマホの画面をこちらに見せると、ゲームの掲示板を見ているようだった。見ても全然わかんないけどね。
「これ何のゲームの?」
「ここみたらわかるよ…」
「あ、MAOの掲示板なんだね、色々書いてあるけどナニコレ?」
口をゆすぎ終わった弟がこっちを見てこう言ってきた。
「もしかしたら姉ちゃんが何かして書かれてないか見てただけ」
「私を何だと思っているのよ全く…」
「異世界ファンタジーや魔法小説が大好きな少し頭のねじが外れているかもしれない僕の姉ちゃんですね」
「私ってそこまでおかしいの?」
「うん、まぁMAOでそこまでおかしなことは起きないか、小説とゲームは全然違ったでしょ?」
「確かに全然違った…」
「皐月さんに笑われた事も知ってるから」
はぁ…皐月どこまで話してあるのよ…まぁ私が失敗しただけだから何でもいいんだけどね。
「姉ちゃんを一人でゲームさせとくと本当に何起こすかわからないから僕も手伝ってあげるよ」
「えっホント?」
「うん、と言っても今はフレンドとクエスト進めてるから出来ないけど終われば出来るから…」
「そっかそっか、一緒に出来たらお姉ちゃんが助けてあげる」
「いやいや、助けるのは僕の方だからね?姉ちゃんって魔法と錬金術選んだんでしょ?ちゃんと使いこなせるか心配だよ」
「大丈夫!ログアウトする前に錬金釜でアイテム作ったらなんか爆弾出来ちゃったけど大丈夫!」
「はぁっ!?一体何をどうしたら爆弾ができるって言うんだよぉ、マジで姉ちゃん訳わかんない…」
うん…私もなんで爆弾ができたのか訳わかりません…弟にわかんないことはお姉ちゃんにもわかんないんだ…。特にゲームの事はね。
歯を磨き終わり自室に行きスマホで皐月にメッセージを飛ばした。
「皐月私今からログインするけど一緒に出来そう?」
「出来るけどちょうどお風呂入ってるから30分くらい待ってて、ログインはしててもいいからさ」
「りょうかーい」
今の時間が6時40分か…7時ちょいにインするよね?
「あ、弟のキャラ名聞き忘れてたけど…今じゃなくてもいいよね」
トイレは平気だしお腹も満たされてる、問題なし!ヘッドギアを被りベッドに寝転んだ。
「ダイブ開始…」
すると視界が暗くなり明るくなると宿屋の自分がログアウトした場所だった。小説とかで出てくるダイブ開始って言葉でもログイン出来るんだ…。これからはそう言っていこうかな?ログインって言うのもいいけどなんか違う気がするしね。
「えっと残っている素材で何ができないかな?」
インベントリーの中を見ると宝石系も少し入っていた。どんなのか気になったので取り出して見ることにした。
「赤い宝石って書いてあるけどめっちゃ綺麗…宝石とか集めるの好きで倉庫にしまってあるんだよねぇ、たまにパパがお土産で買ってきてくれるし」
赤い宝石を鑑定眼で見ると〔赤い宝石はレアな鉱石で装飾や錬金術の素材となる〕か、多分ほかの宝石も同じかな?赤青黄緑と4色の宝石達。素材に使いたいけど綺麗だからもったいない気がする。そもそも何に使うかもわからないのに失敗したら嫌だしなぁ…。
「とりあえずチャレンジしてみよう!…そう言えばMPは全回復してるね!ログアウトしてる時は回復するのかな?それとも安全な場所だからかな?」
MPがあるならこの宝石達を一個ずつ入れてみようかな。錬金釜に入れるとカランカランっと底で鳴っている。欠けたりしてないよね?品質と関わらないか心配。あとは何入れようかな?
「あとは木の枝10本全部入れちゃえ!」
火が消えてたのでファイアで火をつけると中に入っていた素材が液体になり時計回りに少しだけ素早くかき混ぜることにした。何で液体になったのかは謎だけどそこはゲームだからって説明で片付きそう。
「後どれくらい混ぜれば完成かな?出来たら成功しますように…」
私の祈りは虚しく…突如錬金釜の中が光大爆発した…。モクモクと煙が立ち込めていたが段々と薄くなり消えていった。私は突然の爆発で驚き尻もちをついていた。そして称号を手に入れた…。〔始まりの錬金術師〕
入手条件が成功と失敗をする事で手に入るみたい。
「釜の中は…やっぱり空っぽかぁ、さっきの爆発にはダメージとかは無さそう?そういう演出なのかな?魔女とかが釜をかき混ぜる時変な色してるけどあれなにを作ってるんだろう?」
「さぁ何を作ってるんだろうね?」
「きゃぁぁぁっ!!!」
突然背後から声が聞こえて来たので悲鳴を上げて振り返ると皐月…じゃなくてハヅキがログインしていた。
「もっもぅ!驚かさないでよ!怖いのダメって知ってるよね!!」
「驚かした覚えはないんだけどなぁ…それより何で魔女の話してたの?ヘンゼルとグレーテルとか?」
「まぁそんなところ?たぶん…驚いたせいで内容飛んじゃったよ」
「ユキナはこの世界じゃ大変かもね」
「それどういう意味?もしかして驚かせたりする何かがあるの?」
「さぁそれは自分の目で確かめなきゃねー♪」
あ…この感じ私が苦手なものが本当にあるやつだ。
「でも行かなければいいだけだし?それより見てほしいアイテムがあるの」
「どれどれ?」
インベントリーから濃縮された魔水を取り出した。
「…えっとこれなんだけど何かわかる?」
「見た目は魔力水だけど…何か違うね?残念だけど私にはわからないかな、バザーで検索かけてみるね」
へぇバザーなんてあるんだぁって思っていると検索し終えたのか私の方を向き〈このアイテムの名前聞くの忘れてた〉っと言われたので濃縮された魔水って事を教えたら検索してくれた。
「今検索してるけど誰も出品してないね、それってどんな効果あるの?」
「えっと蓋を開ければ爆発する…物?」
「え?…なにそれこわ…」
「いや素で引かないでよ!私だって持っていたくないから…これ外で売れるかな?」
「売れるとは思うけどバザーで売った方が高値がつくかもよ?」
「そうなの?バザーってどうやって売りに出すの?」
「まずメニュー画面を開いてお店のマークあるでしょ?そこ押して」
「うん、押したらご利用は初めてですかって出てきたんだけどこれってYESでいいの?」
「一応その画面にしたがって操作すれば出来るから、わからないところは私が教えるからさ」
まずはバザーを開くのに1000Gかかるみたいだけどあるから1000G消費してバザーを開いて…次がバザーの名前?
「ハヅキ、バザーの名前って何がいいかな?」
「そうだねぇユキナが気に入った名前にしたらいいと思うよ?だけど変な名前は辞めるんだよ?後で後悔するから」
「うん…何がいいかなぁ」
色々思いつくけど…やっぱり自分の名前も入れたいし…うーん…。よしっ!決めた!
「バザーの名前は魔女ユキナの錬金屋!これが一番しっくりきた!」
「あー…うん、ユキナらしい名前だね?とってもいいと思いよ…うん…」
なんで目をそらすの!私のセンスってもしかして…無い!?
「それで良かったら決定を押してバザー開設だよ」
「…よし!できたぁ!これって今この場で売れるの?」
「出来るけど値段どうする?私も知らないアイテムだからとりあえず1万Gで出品してみる?もしかしたら興味本位で購入してくれる人がいるかもだし」
「確かに?それじゃ…」
売り方はハヅキの言われた通りにしたのでスムーズに出来た。いつ売れるかはわからないのでしばらくは放置かな。売れればメールで購入者と金額が届く仕組みらしい。他にも出来たアイテムをバザーに出品してみたけど…これ売れるのかな?




